私立と公立、どう違う? (「ピア効果」による違い)[中学受験]

地域によって、私立と公立の学校の見方はずいぶん異なる。全体として埼玉・千葉では公立学校が優位で、東京と神奈川(特に横浜市)では対等、もしくは私立優位という見方が強いようだ。東大合格者数で考えれば、東京も都立高校が大学合格実績で復権を果たしてきたが、それでもまだ私立のほうが優位という感はある。
しかし、千葉・埼玉では県立高校の大学合格実績は私立高校よりも高い。そのため、千葉・埼玉の公立学校は、私立に比べ人気があるのだろう。つまり、保護者の私立と公立の学校に対する見方は、地域による違いが大きい。

しかし、首都圏の東京以外の公立中高一貫校では、卒業生がまだ出ていない。そのため、神奈川・千葉・埼玉で公立中高一貫校の大学合格実績が出始めれば、評価は変わってくるかもしれない。しかし、2012年の大学合格実績で比較した結果では、東京の私立と公立の中高一貫校は、私立は難関私立大学、公立は難関国立大学の合格実績でそれぞれ勝(まさ)っていた。
しかし、東京の私立と公立の中高一貫校を授業時間数で比較すると、特に主要5教科で私立のほうが公立よりも、多いことが顕著である。公立中高一貫校は、学習指導要領に沿わざるを得ないため、どうしても十分な授業時間数を確保できない事情もある。それは、土曜授業の影響ではないかと思うかもしれないが、「公立」では毎週と隔週を含めると土曜授業がない学校のほうが少ない。

公立中高一貫校は、こうした不利な状況でも国立大学の合格実績が高い。そのため、公立中高一貫校は「ピア効果」が私立よりも高いのではないか、という結論になる。
「ピア効果」は、学校に集う生徒や教員の質が高いことで発生する。教員の質の能力や意識・意欲を測定することは難しいので除外するとして、生徒の「ピア効果」で考えてみれば、公立中高一貫校は中学入試の実質倍率が高いことから、学力と意識・意欲で質の高い生徒が入学することになる。しかも、公立中高一貫校は入試日が同じになるため1校しか受験できない。また、私学の入試問題と異なる学校が多く併願しにくくなっているため、公立中高一貫校に入学する生徒は、第一志望で入学した生徒が多くなる。第一志望に入学する生徒ばかりの学校は、意識・意欲の高い生徒が多く、「ピア効果」が期待できる。
逆に、公立中高一貫校と同じくらいの偏差値の私立中高一貫校では、第一志望校には合格できず併願校として進学した生徒も多いはずで、第一志望ではないことから意識・意欲の面ではいまひとつという可能性があり、その分、私立中高一貫校は「ピア効果」が公立よりも低いことも考えられる。

意識・意欲という面で「ピア効果」を期待するならば、公立中高一貫校を志望校に選定する価値があるが、公立中高一貫校がすべて同じように意識・意欲の面で「ピア効果」が高いかどうかは疑問である。
 「ピア効果」についても、やはり、私立・公立ということではなく、学校単位の調査が必要となるだろう。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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