全般的な出題傾向 1[2012年度入試で何が問われたか<社会> 「社会科のアンテナ」を張って力をつける 第4回]
首都圏を中心に国・私立中学校のべ119校の2012年度社会科入試問題を徹底分析。その傾向と対策について文教大学専任講師の早川明夫先生にお話しいただきました。
※以下は、2012年4月に開催された森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーでの早川先生の講演を抄録したものです。
※分析対象は首都圏の主な国・私立中学校と、首都圏以外では、ラ・サール中学校(鹿児島県)、海陽中学校(愛知県)、神戸女学院中学校(兵庫県)など20校です。公立中高一貫校は除き、複数回入試を実施した学校は、それぞれ1校分として計算してあります。
全般的な出題傾向 1
今回からは、各中学校の入試問題を具体的に見ていきます。
(1) 東日本大震災を契機に、これまでの日本や私たちのくらしを見直す
~今後の日本社会のありようを展望し、特に東北地方や沖縄から日本を見直す視点
東北地方は、日本の食糧・エネルギーの供給基地になっており、沖縄には米軍基地が集中しています。「なぜ、東京電力の原子力発電所が福島にあるのか」「なぜ日本の国土のわずか0.6%の沖縄に日本にある米軍基地の約74%が集中しているのか」これらについて私たちは考えなくてはなりません。「日本の国土に対する理解、自然災害に対する再認識」「身近な衣食住(生活)の見直し」「歴史から学ぶ」などの観点から出題されています。
(2) きわめて今日的な問題、私たちのくらしと世界とのつながり
東日本大震災のため、東北にあった自動車の部品工場の生産がストップしてしまいました。これにより日本の自動車メーカーばかりでなく、世界中の自動車工場に影響が出ました。このように、東北が世界につながっていること(=グローバル化)を小学生でも考えられることが求められています。
(3) 時事問題・周年問題が数多く出題
時事問題では、やはり東日本大震災や原子力発電所事故に関連したことが多く出題されました。具体的には、東日本大震災に関しては「東北地方の自然、産業、交通、祭りなど」「地震の起こるしくみ」「日本列島周辺の4枚のプレート」「津波」「関東大震災」「阪神・淡路大震災」などです。原子力発電所事故については「エネルギー政策」「さまざまな発電と発電量の割合」「再生可能エネルギー」「放射線の人体に対する影響」「放射能」「スリーマイル島原発事故」「チェルノブイリ原発事故」などです。
震災については、理科でも同じようによく出題されました。震災以外の時事問題では、世界遺産について多くの学校で出題がありました。
時事問題の出題方法には2種類あります。時事用語などをストレートに問う出題方法と、時事問題を切り口としてそこから問いを広げていく間接的な出題方法です。
以下では、具体的な出題の方法についてご説明します。
<直接的な出題の例> 早稲田大学高等学院中学部 大問6 問1~問5
問1の「シーベルト」を答えさせる問題は、中央大学附属中学校でも出題されました。
<間接的な出題の例> 桜蔭中 大問1 問9
このように、選択肢の文章の中に時事的な内容が盛り込まれているものもあります。答えるのは時事用語ではなく、文章の内容をもとに考えた河川であり、その場所がどこなのかです。
<今年度頻出した震災・原発をテーマにした出題の例> 青山学院中等部 大問1 問1~問4
地震が起こるしくみ、静岡県の浜岡原子力発電所などについて出題しています。この「南海トラフ」は来年度入試でも問われる可能性があります。また、問4は地震の名前を知らなくても地図を見ればわかります。このように知識として知らなくても、きちんと資料を見ているかどうかが問われている問題はよくあります。
周年問題では、「150年前:日独交流」「100年前:平塚らいてうの『青鞜』創刊、関税自主権の回復、辛亥革命」「80年前:柳条湖事件が発端になった満州事変」「70年前:アジア太平洋戦争始まる」「60年前:サンフランシスコ平和条約、日米安全保障条約の調印」などが出題されました。たとえば辛亥革命などは通常はあまり出題されないのですが、ちょうど100年前ということで出題されました。
2013年度は、「沖縄復帰40年」「日中国交回復40年」「国際連合人間環境会議(1972年、ストックホルムで開催から)40年」が要注意です。これらの内容についてはよく勉強しておきましょう。
各中学校の入試問題はこちらでご確認ください | ||
早稲田大学高等学院中学部 早稲田佐賀中学校 3年間入試と研究 平成25年度用中学受験 81 | 桜蔭中学校 10年間入試と研究 平成25年度用中学受験 8 | 青山学院中等部 9年間入試と研究 平成25年度用中学受験 23 |