11 住み続けられるまちづくりを 11 住み続けられるまちづくりを

目標11

住み続けられる
まちづくりを

包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で
持続可能な都市及び人間居住
を実現する

2020年6月1日

世界の都市の現状と
目標11の内容

現在、世界人口の半分以上に当たる35億人もの人々が都市部に住んでいます。都市の人口比率は今後さらに高まり、2030年には世界人口の6割の人々が都市部に住むようになると言われています。

都市部に住む人が増えると、住居や水道・電気などのインフラが足りなくなる、公共交通機関がスムーズに利用できなくなる、ゴミが大量に出て処理が追いつかなくなる、といった問題が出てきます。また、無秩序に都市部が拡大した結果、家の近くに学校がない、病院がない、スーパーがないという状況が増えてしまう問題も起こっています。

このような問題が集まっているのが「スラム」です。スラムとは、貧しい人々が過密状態で住み、他の地域では受けられる公共サービスが受けられなかったり、治安が悪化していたりする地区のことを指します。現在、世界でスラム街に住む人は 8 億 8,000 万人以上いると言われています。

人々が都市部に求めるのは、快適な暮らしやよりよい仕事です。しかし、計画的に都市を開発することができなかったり、開発するための資金が足りなかったりすることで、貧しい人々の暮らしがより苦しいものになってしまっているのです。

都市のエネルギー消費量の多さと環境汚染も問題になっています。都市の面積は地球の陸地のわずか3%ですが、全体のエネルギー消費量の60~80%、炭素排出量の75%を占めています。2016年の時点で、大気汚染による死者は400万人以上もいます。大気汚染の問題を解決するためには、都市部の省エネルギーを考えていくことも重要な課題です。

さらに、人口密度や立地条件によって、気候変動や自然災害の影響を受けやすい都市が多いことも課題の一つです。

すべての人が快適に暮らすことができる街づくりを進めることは、生産性を高め経済を発展させることにもつながります。「すべての人々に」という意味で、貧困層だけでなく、子どもや女性、障害のある人、高齢者といった社会的に立場の弱い人々の生活にも配慮しなければなりません。

都市は商業から文化まで、さまざまな分野の活動拠点となります。世界の社会的・経済的な発展が都市を中心に生まれてきました。人々が快適に暮らし続けていくことができるよう、都市の豊かさと環境の保護を両立しながら、持続可能な開発を進めていくことが求められています。

住み続けられるまちづくりの
ための世界中での取り組み

すべての人が安全で快適に住み続けられる街をつくるために最低限必要なことは、安全で安価な住居を増やし、電気や上下水道などの基礎的なインフラや、すべての人が手軽に利用できる公共交通機関を整えることです。特に開発途上国では都市が急速に増加していて、都市環境の整備が追いついていないため、海外からの資金面や技術面での支援が続けられています。

また、スマートホームやスマートビルといったエネルギー効率の高い建造物の開発も進んでいます。安い建築資材や金融商品を開発することで安全かつ安価な住宅を増やし、住宅不足の解消に貢献している例もあります。

ほかにも、都市の問題を解決するためさまざまな技術やサービスが開発されています。開発途上国の警察と協力して現地の街中のカメラに顔認証システムを活用して治安の悪化を防いだり、各国の災害統計データを蓄積してデータ解析を行い防災のアドバイスをしたり、開発途上国の幹線道路を立体交差化することで建築に伴う雇用を増やしながら、問題となっていた渋滞を解消したり、といった取り組みが行われています。

豊かさや雇用を生み出しつつ、土地や資源に負担をかけないような取り組みが、世界でも増えてきているのです。

住み続けられるまちづくりの
ための日本での取り組み

エネルギー効率がよい建築物や自動車をはじめとする技術の開発に、日本の企業が世界的に貢献していることは言うまでもありません。

日本国内での課題に目を向けてみると、台風や大雨、猛暑などの被害に対するリスク管理や対策が挙げられます。また、高齢者の一人暮らし世帯が増えたことで、都市部でも食べ物の購入に苦労する人が増え、「食料品アクセス問題」として社会的な課題となっています。

そこで、日本の間でもさまざまな取り組みが行われています。食品の製造や小売に関わる企業の間では、災害発生時に水やカップ麺などの支援物資を被災地に送れるよう備えている企業が増えています。また、店舗の商品をインターネットで注文するとその日のうちに自宅まで届けてくれるサービスも広まってきました。商品の配達と併せて、高齢者の安否確認を行うサービスも実施されています。

すべての人が快適に暮らせるようにと、大規模な都市開発から、新しい技術の開発、一人ひとりの暮らしに役立つサービスまで、あらゆるレベルの取り組みが行われているのです。

参考資料

「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」10のターゲット

[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf

  • 2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
  • 2030年までに、脆弱(ぜいじゃく)な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
  • 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
  • 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
  • 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
  • 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
  • 2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
  • 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
  • 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
  • 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。

このターゲットでは、「まちづくり」にまつわる目標と取り組みが詳しく設定されています。

※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。

※目標11のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。

  • 2030年までに、全ての人が住宅などの基本的サービスを利用できるようにしてスラムを改善する
  • 2030年までに、全ての人々が安全な交通機関を使えるようにする
  • 全ての国々で包摂的で持続可能な都市化を促進する
  • 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する
  • 世界中で災害による死者や被災者数を減らし、災害による経済的損失を減らす
  • 大気汚染や廃棄物による都市の環境上の悪影響を軽減する
  • 安全に利用できる緑地や公共スペースを全ての人々がいつでも使えるようにする
  • 開発計画を強化して、経済、社会、環境面における都市部及び農村部間の良好なつながりを支援する
  • 2020年までに、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う
  • 後発開発途上国において持続可能かつ強靱(きょうじん:レジリエント)な建造物の整備を支援する

[参照元]

「目標11 都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」(国際連合広報センター/2018年12月)

https://www.unic.or.jp/files/Goal_11.pdf

「目標11 住み続けられるまちづくりはなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)

https://www.unic.or.jp/files/11_Rev1.pdf

「11.住み続けられるまちづくりを」(国際開発センター/2018年)

https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL11.pdf