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目標1

貧困をなくそう

あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

2020年6月1日

世界の貧困の現状と
目標1の内容

世界には今なお1日1ドル90セントという国際貧困ライン(※)未満で暮らす人々が8億人近くいます。特にサハラ以南のアフリカと南アジアに貧困層が集中していますが、先進国でもおよそ3,000万人の子どもが貧困の中に暮らしているとされており、貧困は途上国だけでなく先進国でも深刻な問題のひとつになっています。

特に貧しい地域では、食べ物を手に入れられずに栄養失調になり命を落とす子どもや、お金がないために学校に通えない子ども、幼いうちから働かなければいけない子どもがたくさんいます。安全な飲み水や清潔なトイレがないために体調を崩しても、病院に行けないケースも多くあります。教育を受けられないため貧困の連鎖から抜け出すことが難しいことも問題になっています。

このように貧困とは、ただ単に収入が少ないことだけを指すものではありません。教育や医療などの社会的なサービスを受けられないこと、水をはじめとするインフラなどの基礎サービスを受けられないこと、社会的な差別を受けやすいこと、社会的な意思決定に参加できないことなど、貧困はさまざまな問題とつながり悪循環を生みます。

また、貧困の中にある人々は、紛争や災害、気候変動の影響によって、さらに困窮した状況に陥りやすいことも問題の一つです。

(※)国際貧困ラインとは、世界の貧困率をはかるために設定された数値。
(※)国際貧困ラインはSDGs採択時は1日1.25ドルでしたが、2015年10月に1日1.90ドルに改定されています

貧困をなくすための
世界中での取り組み

貧困をなくすためには、交通網、通信網、電気・水道、ダムなど河川の治水施設といったインフラを整備し、経済を発展させて貧困層にも利益のある雇用を生み出す必要があります。さらに、国の制度を整え、医療や保障、教育といったサービスも充実させなければなりません。

すでに世界中で貧困をなくすための取り組みが活発に行われています。栄養不良に陥っている人のために食料を配ったり、病気になっても病院へ行けない人のために医師や看護師を派遣したりする活動や、支援のための寄付や募金など、直接的な支援を目にした人も多いでしょう。

さらに、農業やインフラ整備の技術を指導する、子どもたちが安心して教育を受けられる環境を整備するといった形での支援も行われています。発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に購入することによって、生産者の生活を支えるフェアトレードに取り組む企業も世界的に増えています。

貧困をなくすための
日本での取り組み

実は日本国内でも、さまざまな企業・団体がフェアトレードの取り組みを加速させたり、一人親世帯の子どもを主な対象とする子ども食堂を運営したりといった形で、貧困や食料問題に取り組んでいます。

また、所得格差によって、子どもたちの教育を受ける機会にも差が出ていることが日本でも問題になっていて、学習支援の輪が広がっています。

貧しい地域への直接的な支援から日本国内の貧困の問題まで、さまざまな立場の貧困をなくすことはすぐに解決できる課題ではないため、継続的な取り組みが求められています。

参考資料

「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」という目標には、その内容をより細かく示したターゲットが7項目設定されています。

  • 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
  • 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる。
  • 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱(ぜいじゃく)層に対し十分な保護を達成する。
  • 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、全ての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
  • 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靭性(きょうじんせい、レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
  • あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
  • 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。

[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)

このターゲットでは、具体的な数値を挙げて「貧困」を定義し目標が設定されています。

  • 2030年までに1日1ドル25セント未満で暮らす、極度の貧困をなくす
  • 子どもや女性、災害によって困窮する人の割合を半減させる

目標を達成するためには、以下のような取り組みが必要とされています。

  • 適切な社会保障を整えて、貧困層を十分に保護する
  • 貧困層に基礎的なサービスへのアクセス権や、所有権などの権利を確保する
  • 紛争や災害時に貧困層を中心に的確な支援をする
  • 開発途上国への開発協力を強化する
  • 国際レベルで政策的な仕組みづくりを支援する

[参照元]

「目標1 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」 (国際連合広報センター/2018年12月)

https://www.unic.or.jp/files/Goal_01.pdf

「目標1 貧困をなくすことはなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)

https://www.unic.or.jp/files/01_Rev1.pdf

「1.貧困をなくそう」(国際開発センター)

https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL1.pdf

中学生向けの副教材『私たちがつくる持続可能な世界~SDGsをナビにして~』(外務省・日本ユニセフ協会作成)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_navi.pdf