14 海の豊かさを守ろう 14 海の豊かさを守ろう

目標14

海の豊かさを
守ろう

持続可能な開発のために
海洋・海洋資源を保全し、
持続可能な形で利用する

2020年6月1日

世界の海洋の
現状と
目標14の内容

海は魚などの海産物をもたらしてくれるだけでなく、地球の生態系の大部分を占めていて、その水温や海流は気象の変化や汚染物質の浄化とも深い関わりがあります。しかし、現在、海洋汚染や地球温暖化による水温の上昇により、豊かな海洋資源が破壊されつつあることが大きな問題になっています。

適切に処理されていない農業排水や生活排水による水質の富栄養化(水の中の栄養素が増えすぎることによって、植物プランクトンが急速に繁殖すること)が進み、酸素濃度が低く生物が生きられない海域が増えていることは、海洋汚染の代表的な例です。こうした海域は「デッドゾーン」と言われ、その数は世界に500か所近いとも言われています。また、海は二酸化炭素を吸収する性質も持っていますが、世界の二酸化炭素排出量が増えたことにより、二酸化炭素を吸収した海が酸性化していることも問題の一つです。

特にサンゴは水温の上昇や酸性化に弱く、多くのサンゴ礁が失われています。サンゴ礁が減っていることは、海の生態系が破壊されていることの象徴的な事例です。

さらに、海洋ごみも深刻な問題の一つです。適切に処理されずに海に流れ着くごみが年々増えていて、海岸に漂着するごみが景観を悪くしたり、海の生き物に悪影響を与えたり、船舶の航行の障害になったりと、さまざまな問題を引き起こしています。

また、微生物によって分解されないプラスチックが、海洋ごみの6割から8割を占めていることも問題になっています。自然に還ることがないまま海を漂い続け細かく粉砕されたプラスチックが、海の生き物に悪影響を与えている「マイクロプラスチック」も世界が注目している問題の一つです。

さらに、海洋資源を守るために、漁業の適切な管理も大切です。食料として魚をはじめとする水産物の需要が世界的に増えている中、乱獲や違法な漁業が後を絶たず、このままでは水産資源が足りなくなると言われています。ルールを整備して国際的に守る必要があります。

漁業や観光業など、海洋やその沿岸部のさまざまな生物にまつわる仕事で生計を立てている人は、世界に30億人以上います。海の環境や資源を守ることは、こうした人々の雇用と生活を守ることにもつながるのです。

海は人間が地球に住むうえで欠かせない資源や環境を生み出しています。海を適切に管理することは、持続可能な開発を実現するうえで必要不可欠な取り組みです。

海の豊かさを守る
ための
世界中での取り組み

海の豊かさを守るために、プラスチックをはじめとする海洋ごみの削減に取り組んだり、省エネルギーに取り組んで二酸化炭素の排出量を減らしたり、水産物の漁獲量に規制を設けて適切に管理を進めたりと、さまざまな努力が続けられています。

プラスチックごみを減らすために、小売店で買い物をする際のビニール袋をマイバッグに替えたり、有料にしたりする取り組みも、海を守るために行われていることの一つです。同じように、飲食店でプラスチック製のストローを紙ストローに替える取り組みも話題になっています。

また「海のエコラベル」とも言われるMSC認証ラベルも、水産資源を守る取り組みとして注目されています。漁獲量が適切に管理されていること、漁場での生態系への影響が抑えられていることなど、持続可能性に配慮した水産物であることを証明できる仕組みになっているため、このようなラベルのついた水産物を選ぶことは、消費者にとっても、海の環境や資源を守る取り組みの第一歩になります。

世界では二酸化炭素の排出量を削減する取り組みが広く行われていますが、このことは大気汚染や地球温暖化への対策のためだけでなく、海の豊かさを守ることにもつながります。世界の多くの企業が、オフィスや店舗の省エネルギー化や、少ないエネルギーで使える省エネルギー製品の開発、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーなどの開発・導入に取り組んでいます。

ほかにも、海の豊かさを守るために多くの企業がさまざまな取り組みを行っています。たとえば、ビルや橋などの建造物や土地の造成に使われるセメントは、その製造の段階から二酸化炭素の排出量が多いことが問題となっていました。しかし、鉄鋼製品を作る際に出る「鉄鋼スラグ」をセメントに混ぜ込むことで、二酸化炭素の排出量を大幅に減らすことができる低炭素型のセメントが開発されました。

海の豊かさを守る
ための
日本での取り組み

日本でも、国内外から海に流れ着く海洋ごみによる悪影響や、漁獲量が減少している水産物があることなどが問題となっています。

特にプラスチックの問題は、日本企業の間でも注目されています。たとえば、使用済みの自社のプラスチック製品を回収して商品へとリサイクルする仕組みをつくったり、容器や包装のための素材をプラスチックから環境に負荷の少ない素材に替えたりする取り組みが盛んに行われています。

また、漁業や養殖業においても環境保護の意識が広まっています。マグロの養殖事業にIoTやAIを活用することで養殖の効率を上げると同時に、養殖場が周囲の生態系に悪影響を及ぼさないように管理する企業や、自社の水産物に関する取引の中で、水産資源の持続可能性に悪影響が出ていないか調査を行っている企業もあります。

中には、MSC認証を受けたサステナブル・シーフードを社員食堂で提供したり、ふだん食べている魚がどんな場所でどのように取られ、加工され、流通しているのかといった、魚に関する詳しい情報をホームページで紹介したりと、水産物の安全に関する情報を発信している企業もあります。

地球の面積の7割を占める海は、私たちにさまざまな恵みをもたらしてくれますが、世界各地で海の豊かさが失われつつあります。豊かな海を守るためには、どんな問題が起こっていて、どうすれば解決できるのかを考え、できるだけ早く行動に移していくことが求められています。

参考資料

「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」10のターゲット

[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)

  • 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
  • 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(きょうじんせい:レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
  • あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。
  • 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
  • 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
  • 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する。
  • 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
  • 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
  • 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
  • 「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。

このターゲットでは、「海の豊かさを守ろう」にまつわる目標と求められる取り組みが詳しく設定されています。

※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。

※目標14のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。

  • 2025年までに、あらゆる種類の海洋汚染を防止し大幅に削減する
  • 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う
  • 科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化する
  • 2020年までに漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法漁業などを終わらせ、科学的な管理計画を行う
  • 少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する
  • 2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止する
  • 小島嶼(しょうとうしょ)開発途上国などの海洋資源による経済的利益を増大させる
  • 海洋生物の多様性を守るため、開発途上国などへの科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う
  • 小規模・沿岸零細漁業者が、海洋資源や市場へアクセスしやすくなるようにする
  • 国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する

[参照元]

「目標14 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」 (国際連合広報センター/2018年12月)

https://www.unic.or.jp/files/Goal_14.pdf

「目標14 海の豊かさを守ることはなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)

https://www.unic.or.jp/files/14_Rev1.pdf

「14.海の豊かさを守ろう」(国際開発センター/2018年)

https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL14.pdf