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「ユニバーサルデザイン」とは?
SDGsと共通する点や
バリアフリーとの
違いを解説

ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、国籍、障害の有無などに関わらず、誰もが使いやすいようにデザインされた製品やサービスなどのことを指します。ふだん何気なく通りすぎている、自動ドアや音声案内が流れる横断歩道なども、ユニバーサルデザインの一例です。

持続可能な社会や開発を目指すSDGs(持続可能な開発目標)でも、年齢や性別、障害、民族、宗教などによる差別や不平等をなくすことが、目標に掲げられています。

なぜ今、不平等をなくすことが大切なのでしょうか。また、どうしたら不平等をなくせるのでしょうか。ユニバーサルデザインの考え方を通して、考えてみましょう。

ユニバーサルデザイン
とは?SDGs
(持続可能な開発目標)
との関係は?

ユニバーサルデザインとは? SDGs(持続可能な開発目標)との関係は? ユニバーサルデザインとは? SDGs(持続可能な開発目標)との関係は?

■ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、国籍、障害の有無などに関わらず、誰もが使いやすいようにデザインされた建物や製品、サービス、環境などのことです。

英語では、「Universal(=普遍的な、万能の)」と「Design(=設計、デザイン)」となり、この頭文字をとって「UD(ユーディー)」と呼ばれることもあります。

たとえば、ふだん何気なく通り過ぎている自動ドアも、ユニバーサルデザインの代表的な例です。子どもからお年寄り、さらに、車いすやベビーカーを使っている人、荷物を持っていて両手が使えない人まで、多くの人が無理なく使えるデザインになっていますね。

さらに、歩道に設置された黄色い点字ブロック、公共の建物でよく見るスロープ、音で青信号を知らせる歩行者用の信号機なども、ユニバーサルデザインの代表的な例です。それと気づいていなくても、ユニバーサルデザインは、すでに身近で目にするものになっています。

少子高齢化が進む日本でも、小さい子どもから高齢者まで、さらには子育て世代、障害のある人、日本語がわからない人まで、みんなが住みやすい街を目指して、ユニバーサルデザインを取り入れて街づくりを進める自治体が多くあります。

■SDGsの「誰一人取り残さない」精神とユニバーサルデザインの考え方の共通点

SDGs(持続可能な開発目標)では、私たちとその子孫が将来も豊かに暮らし続けられる社会の実現が大きなテーマになっています。その中で強調されているのが、「誰一人取り残さない」ことです。すべての人が安心して暮らしていける社会をつくるために、子どもから大人まで、また性別、障害、人種、経済状況などの違いによって取り残されることがないように、開発を進めていくとされているのです。

一方で、ユニバーサルデザインはそもそも、特定の施設や製品だけでなく、もっと広い視点で考えることが必要だと言われています。たとえば日本では、市役所や美術館などの公共施設に、スロープやエレベーターといったユニバーサルデザインが広く使われています。ですがこうした特定の施設や個々の設備だけでなく、街全体を誰もが暮らしやすくするイメージでトータルデザインできるのが理想だとされているのです。

「誰もが」「安心して暮らせる」という考え方は、SDGsとユニバーサルデザインの共通点であると言えるでしょう。世界では多くの国や企業がSDGs達成のため、ユニバーサルデザインの考え方をもとに製品やサービスを開発する動きが広がっています。

■マスクをつける機会が増えたことで、困っている人がいる

ユニバーサルデザインが広まりつつあるなかで、まだ取り残されている人々がいることも課題になっています。

たとえば、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、マスクをつける機会が増えたことが意外な課題を浮き彫りにしました。ふだんは相手の口の動きを見て会話をしている聴覚障害のある人が、マスクで口もとが見えなくなったために困っているというのです。

テレビのニュースなどで手話通訳をする人が登場することがあります。手話でコミュニケーションをとっている人の間では、口の動きも参考にしていることが多いため、マスクをしてしまうと情報が読み取りにくくなってしまうそうです。また、テレビ会議のシステムが音声読み上げに対応しておらず困っている、という聴覚障害のある人の声もあるそうです。

ひと口に「聴覚障害」と言っても、障害の程度は個々に違いがありニーズも違います。同じように、できる限り多くの人が使いやすいようにデザインされたユニバーサルデザインのものでも、実際に使っていくうちに課題が見えてくることがあります。

もし誰かが使いにくいと感じたとわかったときには、その製品やサービスに何が足りないのか確認し改善していくことも、ユニバーサルデザインに大切なことです。

ユニバーサル
デザインの
7つの原則と
バリアフリーとの
違いについて

ユニバーサルデザインは、1980年代にノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏によって提唱されました。自身も体に障害があり、建築家でもあったメイス氏は、障害者だからと言って特別扱いされることなく、あらゆる人が使いやすいデザインをするという視点を持ってほしいと、ユニバーサルデザインを提唱したと言われています。

ここでは、ユニバーサルデザインの特徴をより詳しく知るために、7つの原則やバリアフリーとの違いなどについてご紹介します。

■ユニバーサルデザインの7つの原則

ユニバーサルデザインには、デザインするうえで大切にするべき「7つの原則」があります。すべての条件を満たす必要はありませんが、誰もが使いやすいデザインにするために重要な要素になります。

⑴誰でも公平に使えること

誰もが使えるように作られていること。子どもでもお年寄りでも、障害があってもなくても、一人ひとりの状況が違っても、誰もが同じように簡単に使えることが求められます。たとえば、階段のほかに、スロープがあれば車いすを使っている人だけでなく、ベビーカーを使っている人や小さな子どもも安全に使うことができます。

⑵使うとき自由度が高いこと

使う人のさまざまな好みや能力に合うように作られていて、多様な利用者や使用環境に対応できる自由度があることが大切です。たとえば、左利きの人も右利きの人も使えるはさみがあれば、別に用意する必要がなくなります。

⑶使い方が簡単でわかりやすいこと

使う人の経験や知識、言語能力などに関係なく、使い方がわかりやすく直感的に使えること。テレビとDVDプレーヤーなどの再生機器をつなぐときのコードは、差込口とプラグの色分けが統一されているので、説明を読まなくてもどこに差し込めばいいのかすぐにわかります。

⑷必要な情報がすぐ理解できること

使用状況や、使う人の聴覚や視覚などの能力に関わらず、読みやすさや伝わりやすさに配慮されていること。文字だけでなくイラストを使ったり、画像や動画、音声を使ったりして、効果的に伝える工夫が必要です。歩行者用の信号は、青信号で歩く人のイラストが光るのでみんなにわかりやすくなっています。さらに青信号を音で知らせる機能があると、視覚に障害のある人はもちろん、他の人にもわかりやすいですね。

⑸うっかりミスが危険につながりにくいこと

うっかり間違ったり、意図しない行動があったりしても、危険につながらないようにデザインすること。たとえば、扉を開けると加熱をストップする電子レンジは、間違って開けっ放しにしてしまっても事故にならないように工夫されているのです。

⑹体に負担が少なく楽に使えること

無理のない姿勢や少ない力で使える、くり返す動作は最小限にするなど、体に負担がかからないことを指しています。水道の蛇口は、ひねるタイプよりもレバーを上下させるタイプのほうが、少ない力で水を出せます。

⑺使いやすい十分なスペースが確保されていること

使う人の体格や姿勢、徒歩か車いすかといった移動手段に関係なく、移動しやすく操作しやすいスペースや大きさを確保しなければいけません。公共の施設でよく見る多機能トイレは、車いすを使っている人や、トイレの介助が必要な人、事故や病気でストーマ(人工肛門)をつけている人、赤ちゃんを連れている人が使えるさまざまな機能が備わっています。そして、車いすでもベビーカーでも、大きな荷物を持っていても入れる、十分な広さが確保できるように設計されています。

■バリアフリーとの違い

バリアフリーとユニバーサルデザインは、並べて使われることもあり、混同しやすい言葉です。バリアフリーとユニバーサルデザインは、どのように違うのでしょうか。

バリアフリーとは、バリア(障害)を取り除くという意味があります。障害のある人を前提に考えて、その人にとってのバリア(障害)を排除しようという考え方です。

一方、ユニバーサルデザインは、はじめからすべての人にとって利用しやすいように作ろうとすることです。さまざまな障害のある人はもちろん、お年寄りや子ども、赤ちゃんを連れている人、外国籍の人にも、みんなが使いやすいものやサービスをデザインしようというのが、ユニバーサルサービスの考え方です。障害のある人を区別するのではなく、障害があってもなくても、みんなが使える街やものを作ろうというのが、バリアフリーとの大きな違いです。

つまり、ユニバーサルデザインの一部にバリアフリーが含まれるとも言えます。

■なぜ、いまユニバーサルデザインが必要とされているのか

特に日本では少子高齢化や国際化が進んで、さまざまな価値観やニーズを持つ人が増えています。

誰でも年齢を重ねれば目が見えづらくなったり、耳が聞こえづらくなったりします。足腰が弱って階段を上るのが苦しくなったり、移動するのに杖や車いすを使ったりすることになるかもしれません。こうした苦労は、これからは高齢化が進めば、他人事ではなくなります。

また妊娠したときには、お腹が大きくなって足元が見えづらくなり、階段の上り下りに苦労することもあります。ベビーカーを使いたいのに、複雑な地下鉄の構内でエレベーターを探すのに苦労したり、おむつを替えられる場所がなかなか見つからなかったりという経験がある人も多いはずです。もっと快適に赤ちゃんとお出かけできるようになれば、少子化の対策になることが期待できます。

多様化が進む日本の社会において、障害のある人もない人も、子どももお年寄りも、外国籍の人も妊婦さんも、すべての人が安心して暮らせる社会づくりが求められています。だからこそ、今、ユニバーサルデザインの考え方が必要とされているのです。

街や家の中など、
身近にある
ユニバーサル
デザインの実例

街や家の中など、身近にあるユニバーサルデザインの実例 街や家の中など、身近にあるユニバーサルデザインの実例

街の中や家の中には、よく見るとユニバーサルデザインがたくさんあります。最後に、身近なユニバーサルデザインの実例を見てみましょう。

■街の中のユニバーサルデザイン

  • 段差のない歩道…歩道はもちろん公園の入り口などでも段差をなくしているところが多くなっています。車いすを使う人はもちろん、自転車でも、小さな子どもやお年寄りも、安全に通ることができます。
  • 点字ブロック…視力がない人や弱い人が安全に歩くために路面に設置された、凹凸のあるブロックのことです。主に、視力の弱い人への配慮として、発光ダイオードが内蔵され光るタイプの点字ブロックもあります。
  • 車いすでも使いやすい自動販売機…商品を選択するボタンが低い位置にもあって、車いすに乗ったままでも買える自動販売機をよく見るようになりました。さらに、コインの投入口が大きく受け皿がついている、商品の取り出し口がかがまなくても届く位置にあるなど、誰にでも使いやすいように工夫がこらされています。
  • センサー式の蛇口…手を差し出しただけで水が出る蛇口は、手に障害のある人や握力が弱い人が楽に使えるだけでなく、手を触れずに洗えるので衛生的に使うことができます。誰もが快適に使えるユニバーサルデザインの一例です。
  • ノンステップバス…床面をできるだけ低くして、乗り降りするときの段差を極力なくしたバスのことです。お年寄りや小さな子どもも安全に乗り降りできるだけでなく、補助スロープを出せば車いすのまま乗り降りすることもできます。
  • ピクトグラムの標識…トイレやエスカレーター、非常口などの標識には、ピクトグラムという記号がよく使われます。「絵文字」「絵単語」などと呼ばれるように、シンプルな図式で表されているので、細かい文字が読めないお年寄りや、日本語がわからない外国籍の人にも、伝えたいイメージがひと目で理解できます。

■家の中のユニバーサルデザイン

  • シャンプーやリンスのボトル…よく見るとシャンプーのボトルには小さな凸凹がついています。リンスにはありません。視力に障害のある人だけでなく、頭を洗っているとき目を閉じていてもシャンプーかリンスかが区別できて便利です。
  • テレビの字幕放送…放送の内容が文字で表示されるので、聴覚に障害のある人や、音が聞こえづらくなったお年寄りも楽しむことができます。
  • 階段や浴室の手すり…お年寄りがいる家庭で、転びやすい階段やお風呂に手すりをつけることが多くなっています。小さな子どもも含めて、家族も安全に移動できるようになります。
  • 文房具…針の部分にシリコンのカバーがついていて、うっかり指を刺すことを防ぎ、抜き差ししやすい画びょう、右利きの人も左利きの人も使えるはさみや定規など、文房具にも誰もが使いやすい工夫がされたものがあります。

■注目されるUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)

日常の中で目にする印刷物や高速道路の看板などに使用されるようになってきて注目されているのがUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)です。従来のフォントでは、誤った字形で覚えてしまったり、ロービジョン(弱視)、ディスクレシア(読み書き障害)の人が読みにくいという問題がありました。それらを解決するUDフォントが各社から開発されており、公共文書をはじめ、様々な場面で活用されることが期待されています。

【ユニバーサルデザイン】注目されるUDフォント(ユニバーサルデザインフォント) 【ユニバーサルデザイン】注目されるUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)

「モリサワ」HPより引用
https://www.morisawa.co.jp/topic/upg201802/

■ユニバーサルデザインに関連するマーク

たくさんの人が利用する建物や駅などで、ユニバーサルデザインに関連するマークを目にすることが多くなってきました。街で見かけるこのようなマークは、誰もが使いやすいように考えて作られたものであることや、障害のある人も使いやすいように作られたものであることを示していたり、施設を利用する人に同士が配慮することを求めていたりします。

  • ユニバーサルデザイン 障害者のための国際シンボルマーク
  • 障害者のための国際シンボルマーク…障害のある人が利用できる建物や施設であることを示す、世界共通のマークです。車いすのイラストになっていますが、すべての障害者が対象になっています。建物や施設を利用する人に、すべての人が安心して使えるよう配慮を求めることも示しています。
  • ユニバーサルデザイン 盲導犬マーク ユニバーサルデザイン うさぎマーク
  • 盲導犬マーク、うさぎマーク…盲導犬マークは視覚の障害に、うさぎマークは聴覚の障害に配慮して作られたおもちゃに表示されるマークです。子どもも大人も、障害のある人もない人も、一緒に遊ぶことができるように考えて作られています。
  • ユニバーサルデザイン ユニバーサルデザインフード
  • ユニバーサルデザインフード…ユニバーサルデザインフードとは、ふだんの食事から介護食まで、食べやすさに配慮して作られた食品のことです。高齢者だけでなく、歯の治療中で固いものが噛めない人や、病気や障害で飲み込む力が弱い人にも食べやすい工夫がされています。ユニバーサルフードと認定されたレトルト食品などに、このマークがついています。

■「心のユニバーサルデザイン」を大切にしよう

ユニバーサルデザインの考え方が、身近なものや設備にも活用されていることがわかりましたね。ユニバーサルデザインが広まることによって、私たちの暮らしはとても便利になっています。しかし、乗り物や道路、建物などの物理的な面を整備するだけでは、十分ではありません。使う人たちがお互いに思いやりを持つことができてこそ、整備した施設が活かせるのです。

すべての人が安心して暮らすことができる社会を実現するためには、障害の有無や、年齢、性別、国籍といったお互いの違いを受け入れて尊重し合い、思いやりを持って支え合う「心のユニバーサルデザイン」が欠かせません。

まずは身近なユニバーサルデザインを探してみましょう。それらのモノからユニバーサルデザインが持つ、思いやりの心が見えてくるはずです。

【この記事に関連する目標】

※他の目標とも関連していますが代表的なものをあげています。

[参照元]

ユニバーサルデザインを知る|郡山市公式ウェブサイト

障害者、コロナで生活変わり不便 マスクで口見えず会話困難:山陽新聞デジタル|さんデジ

身の回りにあるユニバーサルデザイン|郡山市公式ウェブサイト

ユニバーサルデザイン子ども向け学習教材|郡山市公式ウェブサイト

こおりやまユニバーサルデザイン「思いやりのとびら」|郡山市 市民・NPO活動推進課

こころのユニバーサルデザイン|郡山市公式ウェブサイト

三重県|ユニバーサルデザイン:いろいろなマーク

https://www.pref.mie.lg.jp/UD/HP/20728012056.htm

障害者に関係するマークの一例 - 内閣府

https://www8.cao.go.jp/shougai/mark/mark.html

盲導犬マーク・うさぎマーク|タカラトミー

https://www.takaratomy.co.jp/products/kyouyu/marks/

ユニバーサルデザインフードとは|日本介護食品協議会について

https://www.udf.jp/outline/udf.html

わかるユニバーサルデザインフード|日本介護食品協議会

https://www.udf.jp/consumers/

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