2 飢餓をゼロに 2 飢餓をゼロに

目標2

飢餓をゼロに

飢餓を終わらせ、
食料安全保障及び栄養改善を実現し、
持続可能な農業を促進する

2020年6月1日

世界の飢餓の現状と
目標2の内容

世界で飢餓に苦しむ人は年々増え、現在、約8億人以上いると言われています。世界の人口の約9人に1人が飢えに苦しんでいるのです。飢餓の状況がより深刻なのは開発途上国、特にサハラ以南のアフリカや南アジアです。食べ物が足りないために子どもも大人も栄養不良に陥っている人が多くいます。世界の5歳未満で亡くなる子どものうち、約半数が栄養不良が原因であるとも言われています。

特に農村部の貧困世帯は、平均所得が低く日々食べるものを十分に用意できません。栄養不良から仕事の効率が上がりにくく稼ぎを増やすことができない、病気にかかりやすいなど、さらに生産性が下がる悪循環が起こっています。また、近年の気候変動による干ばつや洪水などの災害の影響を受けやすく、簡単に極度の貧困や飢餓に陥りやすいことも問題の一つです。十分な所得を得られないことや、災害で農地に被害を受けたことから、都市への移住を余儀なくされる人も多くいます。

飢餓に苦しむ人が大勢いる一方で、まだ食べられるものが大量に捨てられている「フードロス」の状況があることも、私たちが考えていかなければいけない課題の一つです。日本では年間約612万トンのフードロスが発生しています。これは、国民一人あたりで考えると毎日お茶碗一杯分を捨て続けていることになります。

現在、飢餓状態にある約8億以上の人々に加え、2050年までに世界の人口は20億人以上増加すると見込まれています。これだけの人数に十分な食料を確保するには、食料や農業の生産性の向上が欠かせません。そのためには、自然環境を破壊しないように配慮しながら、農業に必要な用地、エネルギー、水、肥料などの資源を、農業に従事する人が十分に使えるよう整えること、開発途上国の農業発展のための投資を続けることなどを通して、持続可能な食料生産システムを作っていく必要があるのです。

飢餓をゼロにすることは、世界の経済・健康・教育などの平等を促進し、持続可能な社会開発を進めることにつながっていくでしょう。

飢餓をなくすための
世界中での取り組み

飢餓の問題への取り組みとして、実際に飢えに苦しんでいる人々に食料を配ったり、医療を提供したり、乳幼児の栄養状況の改善に取り組んだりという、直接的な支援も多く行われています。

また、持続的に食料を生産できるシステムを作るためには、自然環境に配慮しながら、農地と市場をつなぐ流通網や作物を育てるための水道や電気といったインフラを整備したり、機械や技術を導入したりして、農業の生産性を上げる開発を進めなければいけません。こうした技術を指導するほか、農業開発への投資という形でも支援が行われています。

さらに、途上国や貧困層、小規模生産者などの社会的に弱い立場にある人たちを中心とした対象に、医療をはじめとする社会保障や教育制度を充実させることも、持続可能な食料生産システムを作ることに必要な取り組みです。

飢餓に苦しむ人々に、支援団体を通して寄付や募金をする活動も世界中で行われています。また、安易な食料の廃棄に疑問を持ち、フードロスの問題を考えることも、持続可能な食料生産への取り組みにつながるでしょう。

飢餓をなくすための
日本での取り組み

日本でも、持続可能な農業を目指すために、国内外の生産者と協力して取り組みを進める企業が増えています。地域によって違う生産地の環境に合わせた農業機械を提供したり、安定した仕入れ価格を維持できるように生乳調達価格の長期契約を結んだり、インターネットやAIの技術を活用して圃場(ほじょう:農産物を育てる場所)のモニタリングを行って生産性の向上を目指したりなど、各企業がそれぞれの強みを活かした取り組みを行っています。また、食品の廃棄を減らすことも、多くの企業が取り組む課題となっています。

さらに、栄養バランスのよいメニューを積極的に提案したり、小中学生の生産地での体験授業などによる食育を行ったりして、食への意識を高める活動に取り組んでいる企業もあります。

持続可能な食料や農業の開発のためにどんなことができるのか考えるだけでなく、地元農家や市場の野菜を買って地産地消に貢献する、食料を計画的に消費して無駄な廃棄をなくすなど、私たちの身近な活動も飢餓の撲滅につながります。飢餓人口が増えている現在、「飢餓をゼロに」という目標は、大人から子どもまで世界中が協力して解決しなければならない課題と言えるでしょう。

参考資料

「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」8つのターゲット

[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)

  • 2030年までに、飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱(ぜいじゃく)な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。
  • 5歳未満の子供の発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
  • 2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。
  • 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(きょうじん:レジリエント)な農業を実践する。
  • 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
  • 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
  • ドーハ開発ラウンドのマンデートに従い、全ての農産物輸出補助金及び同等の効果を持つ全ての輸出措置の同時撤廃などを通じて、世界の市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
  • 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。

このターゲットでは、「飢餓」にまつわる目標と求められる取り組みが詳しく設定されています。

※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。

※目標2のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。

  • 2030年までに、全ての人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようする
  • 貧困層、子ども、若い女性や妊婦、高齢者など、あらゆるレベルの栄養不良を解消する
  • 小規模な食料生産者の生産性及び所得を倍増させる
  • 持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する
  • 種子・植物・畜産動物などの遺伝的多様性を保護・活用する
  • 開発途上国の農業生産能力向上のため、農村インフラや農業研究への投資を拡大する
  • 農産物などの貿易制限や歪みを是正・防止する
  • 食料価格の極端な変動を止めるために、市場情報を共有しやすくする

[参照元]

「目標2 飢餓をゼロに」 (国際連合広報センター/2018年12月)

https://www.unic.or.jp/files/Goal_02.pdf

「目標2 飢餓をゼロにすることはなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)

https://www.unic.or.jp/files/02_Rev1.pdf

「2.飢餓をゼロに」(国際開発センター/2018年)

https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL2.pdf