10 人や国の不平等をなくそう 10 人や国の不平等をなくそう

目標10

人や国の不平等をなくそう

各国内及び各国間の不平等を是正する

2020年6月1日

世界の不平等の現状と
目標10の内容

貧困の問題をはじめとする経済的な格差や、ジェンダーの問題をはじめとする不平等は、各国の国内で、そして国と国の間でも、根強く残っている問題です。

たとえば、世界で最も豊かな2,153人の総資産は、なんと世界人口の6割超にあたる約46億人の持つ財産よりも多いというデータが発表されています。所得の格差には男女間の不平等もあります。女性は男性に対し、平均所得の50%未満で暮らす可能性が高いと言われています。また、下位20%の最貧層世帯の子どもは、上位20%の最富裕層の子どもに比べて5歳になる前に亡くなる可能性が3倍も高いのです。

すべての人が豊かに暮らしていくためには、一部の富裕層に富が集中したり、所得の差が健康に暮らす権利を阻害したりしている状況は、是正されなければなりません。また、障害を持つ人が安定した仕事につきにくいことも、問題の一つです。さらに海外に移住した移民と呼ばれる人々が、仕事に就くときに不平等が起こりやすいことも問題視されています。

所得の差、年齢や性別、障害の有無、出身地、人種や民族、性的指向、宗教などを理由とした差別は、教育や医療を受ける機会や仕事に就く機会の不平等を生み、暴力や社会不安につながることもあり、経済的・社会的な発展の妨げにつながります。

差別や不平等をなくすために、国際機関や各国の政府が、条約や政策を作って取り組みを進めています。

不平等をなくすための
世界中での取り組み

世界の不平等をなくすための一つの方法として、貧しさに苦しむ人が多い開発途上国に、生活を安定させるための支援が続けられています。また、経済的な成長を促すために、開発途上国への投資額を増やしたり、輸出品にかかる関税を優遇したりする、国単位の取り組みも進められています。

さらに、開発途上地域の人々に焦点を当てた取り組みも行われています。その代表的な取り組みが「フェアトレード」です。フェアトレードとは、立場の弱い開発途上国の生産者が商品を不当に安く買われたり、安い賃金で働かされたりして貧しさから脱却できない、という悪循環をなくすためのものです。農産物などを取り引きするときに公正な価格を設定し、消費者がその価格が反映された商品を買うことで、生産者の所得と生活を守り、生産性の向上に役立てることができます。コーヒー豆やチョコレートのパッケージで「フェアトレード」の文字を見たことがあるかたもいるのではないでしょうか。

また、世界全体で、社会的に立場の弱い人に配慮しながら、すべての人に平等に教育や保健サービス、就労の機会を確保する取り組みも進められています。国単位では、政府が差別的な法律や政策を撤廃して不平等をなくすために必要な制度を整える取り組みが広がっています。

年齢や性別、国籍を超えた多様な人材が働ける「ダイバーシティー経営」を掲げたり、社内で従業員に差別や不平等に関する研修を行ったりする企業も増えています。このように、企業の間でも、年齢や性別、障害の有無、出身地、人種、性的指向などによって不平等が起こらないよう、社内で意識を徹底する取り組みがすでに一般的になっています。

不平等をなくすための
日本での取り組み

日本にも、性別や年齢、障害の有無や人種など、さまざまな差別や不平等が根強く残っています。最近では、いじめや虐待による子どもの人権問題やインターネットを使った誹謗(ひぼう)中傷などの人権侵害、障害への差別や偏見などが、特に問題視されています。

日本の企業でも、男女の雇用機会を均等にするさまざまな取り組みが広がっているほか、人権と労働に関して自社の理念や取り組みを公表する企業も増えました。不平等に関する社会問題について考える社員の勉強会を行ったり、障害者雇用を積極的に進めたりという取り組みを行う企業も増えています。

差別や不平等は、社会的に立場の弱い人や、少数派であるマイノリティーと呼ばれる人が対象になることが多く、一見して見えにくいものでもあります。自分の身の回りにはどんな不平等があり、どんなことで苦しんでいる人がいるのか。そんなことから考えてみるのも、世界から不平等をなくすための一歩になるのではないでしょうか。

参考資料

「各国内及び各国間の不平等を是正する」10のターゲット

[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf

  • 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
  • 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
  • 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
  • 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
  • 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
  • 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
  • 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
  • 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
  • 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼(しょうとうしょ)開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
  • 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。

このターゲットでは、「人や国の不平等」にまつわる目標と取り組みが詳しく設定されています。

※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。

※目標10のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。

  • 2030年までに、各国の所得下位40%の人々の所得の成長率を国内平均以上にする
  • すべての人々が能力強化、社会的、経済的、政治的な活動に関わることを促進する
  • 適切な政策や行動を促して機会均等を確保し、不平等を是正する
  • 税制、賃金などに関する政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する
  • 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善する
  • 国際的な経済・金融面の意思決定における開発途上国の発言力を拡大させる
  • 秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する
  • 国際的な貿易協定に従い、開発途上国に対する特別な待遇を行う
  • ニーズが最も大きい国々への支援や投資などの資金の流入を促進する
  • 移住労働者による送金コストを3%未満にする

[参照元]

「目標10 国内および国家間の不平等を是正する」(国際連合広報センター/2018年12月)

https://www.unic.or.jp/files/Goal_10.pdf

「目標10 人や国の不平等をなくすことはなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)

https://www.unic.or.jp/files/10_Rev1.pdf

「10.人や国の不平等をなくそう」(国際開発センター/2018年)

https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL10.pdf

中学生向けの副教材『私たちがつくる持続可能な世界~SDGsをナビにして~』(外務省・日本ユニセフ協会作成)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_navi.pdf

関連記事

2023年01月19日

全対象

子どもの「幸せ」につながる読書って?

教育動向

2022年04月01日

小学生/中学生/高校生

2022年4月から必履修の「歴史総合」、どんな科目?

教育