15 陸の豊かさも守ろう 15 陸の豊かさも守ろう

目標15

陸の豊かさも
守ろう

陸域生態系の保護、回復、
持続可能な利用の推進、
持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、
ならびに土地の劣化の阻止・回復及び
生物多様性の損失を阻止する

2020年6月1日

世界の陸の豊かさの
現状と
目標15の内容

地球の表面積の3割を占める陸地には、森林、草原やジャングル、河川などの水辺も含む多様な地形があり、動物や昆虫、微生物などの生物が多様な生態系を形成しています。こうした陸の豊かさは、人々の住みかとなり、食料や飲み水をもたらし、農業や林業など仕事の場ともなって、私たちにさまざまな恩恵を与えてくれます。

地球環境において森林の果たす役割は、特に重要です。森林は光合成によって二酸化炭素を吸収して酸素を生み出し、雨水を集めてろ過し川に流しています。植物の根や落ち葉は栄養に富んだ土壌を保つ役割も持っています。また、森林には地表の熱をコントロールする働きもあるため、気象の変化にも深く関わっているとされています。

しかし今、世界で毎年約1,300万ヘクタール、東京都の約60個分にもなる森林が失われています。木材やパルプ材にするため、あるいは放牧地や畑として使うために森林を伐採しすぎることが大きな要因の一つになっています。

森林が破壊されると水を保つ働きが失われて、洪水が起きやすくなったり、表土が浸食されて土壌を保てなくなったりということが起きます。植物、動物、昆虫などの生き物が住みかを失い多様な生態系も破壊されてしまいます。

砂漠化や土壌の劣化も深刻です。人の活動に伴う森林破壊、異常気象による干ばつの多発などによって砂漠化が進み、毎年、約1,200万ヘクタールの土地が失われていると言われています。これだけの土地があれば、1年間で約2,000万トンの穀物を作ることができる面積です。また、同じ土地で耕作を続けることで土壌の栄養分が極端に減ってしまったり、農薬を使いすぎて土壌や水が汚染されてしまったり、家畜が牧草地の植物を食べつくしてしまったりすることで起こる土壌の劣化も、砂漠化を進行させやすくしています。

現在、世界の人口の約25%にあたる約16億人の人々が、木材、食料、燃料、飼料などの森林にまつわる資源に頼って生活しています。急速な森林破壊によって、貧しい人々を中心に仕事を失い生活に困る人が増えています。

陸の生物の多様性がもたらす遺伝資源は、人間にとって農作物や家畜の育種に欠かせないものです。また、世界で使われている薬の4分の3は植物に由来する成分を含んでいます。生物の多様性が失われることは、医薬品の開発やバイオテクノロジーにも影響します。

さらに、地球上で確認されている動物のうち、8,300種のうち、8%は絶滅し、22%が絶滅の危機に瀕しています。地球温暖化による環境の変化や、森林破壊により住みかが失われたことなどが主な原因です。生物の多様性を守るためには、密猟や乱獲、外来生物への対策も重要です。

森林をはじめとする陸の多様な生態系を守るために、植林をしたり、自然保護区をつくったりする対策と同時に、地球温暖化への対策も進められています。国際機関や各国の政府から個人まで、省エネルギーに積極的に取り組み、リサイクルなど資源を使いすぎない工夫をして、森林や動植物を保護する取り組みを続けていかなければいけません。

陸の豊かさを守る
ための
世界中での取り組み

森林破壊が特に深刻なのは、開発途上国の熱帯雨林や温帯林です。主に海外に輸出するための農作物を生産する農園で、大規模な森林の伐採、環境負荷の高い焼き畑農法や毒性の高い農薬の使用などがたびたび問題視されています。こうした状況を改善するため、生態系の保護に配慮しながら生産性を高める農法への転換や、そのための資金を支援する取り組みが続けられています。

森林破壊をくい止めるためには、消費者である私たちも、原産地の環境や社会問題に関心を持って商品を選ぶ姿勢が求められます。持続可能な森林管理がされた木材であることを証明する「FSC認証」、持続可能なパーム油生産であることを証明する「PSPO認証」、持続可能な農法で栽培されたコーヒー・カカオ・茶であることを証明する「グッドインサイドマーク」など、さまざまな認証ロゴやマークのついた製品があります。生活に必要なものを買うとき、それがどこでどのように作られたのか考えてみることも大切です。

世界の企業でも、さまざまな取り組みが行われています。森林を保護しながら生産性も向上できるよう、コーヒーの原産国で生産管理や流通の技術指導を行っている企業や、スリランカの紅茶農園で、社会、環境、経済のすべての面で持続可能であることを証明する認証を取得するための支援を続けている企業もあります。

また、段ボールのリサイクルシステムを強化したり、飲料の紙容器の原料で国内の間伐材や端材の使用率を上げたりと、森林を保護するためにパルプ材の利用に配慮する企業も増えています。

また、生物多様性の保護に関して、国際自然保護連合(IUCN)の「絶滅のおそれがある生物種のレッドリスト」の作成を支援するため、希少種が生息する地域での調査や保全活動に取り組んでいる企業もあります。

陸の豊かさを守る
ための
日本での取り組み

日本は国土のおよそ3分の2が森林である森林国ですが、林業による雇用や経済の活性化は伸び悩んでおり、その森林資源をうまく活用しきれていません。また、外来生物や気候変動の影響により、生態系の多様性は減少傾向にあります。

こうした課題を解決するため、日本の企業もさまざまな取り組みを行っています。たとえば、自社の林業において持続可能な森林経営を続けるとともに、自治体や森林組合に森林管理や森林再生のノウハウを共有する企業があります。また、自然災害によって崩落した斜面に、その地域に自生する植物の種を植えて、地域本来の自然を再生する試みを続けている企業もあります。

生態系の多様性を守るために、地域にもともとあった自然環境を再現した公園をつくったり、都会の中に緑地を整備したりする取り組みも、日本各地で行われています。

ほかにも、陸の豊かさを守るために、リサイクルを進める、地産地消の食生活を実現する、消費するものを必要な量に限る、空調システムの効率を上げエネルギー消費を抑えるなどの方法があります。こうした取り組みは地球温暖化をくい止めることにも役立つため、これからも積極的に続けていかなければなりません。

参考資料

「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」12のターゲット

[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)

  • 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
  • 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
  • 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。
  • 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。
  • 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。
  • 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。
  • 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。
  • 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。
  • 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。
  • 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。
  • 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。
  • 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。

このターゲットでは、「陸の豊かさ」にまつわる目標と求められる取り組みが詳しく設定されています。

※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。

※目標15のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。

  • 2020年までに、陸域生態系と内陸淡水生態系の保全・回復などを行う
  • 森林減少を阻止し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる
  • 2030年までに砂漠化に対処し、干ばつや洪水の影響で劣化した土地と土壌を回復する
  • 2030年までに生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う
  • 絶滅危惧種を保護し、また絶滅を防止するための対策を講じる
  • 遺伝資源への適切なアクセスを推進する
  • 保護対象の動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じる
  • 2020年までに外来種の侵入を防止し、陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させる
  • 2020年までに生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定などの戦略・会計に組み込む
  • 生物多様性と生態系の保全のために、あらゆる資金源からの資金を動員する
  • 持続可能な森林経営の推進と開発途上国への支援のための資金を資金を調達する
  • 保護種の密猟と違法な取引への対処のため、世界的な支援を強化する

[参照元]

「目標15 森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」 (国際連合広報センター/2018年12月)

https://www.unic.or.jp/files/Goal_15.pdf

「目標15 陸の豊かさを守ることはなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)

https://www.unic.or.jp/files/15_Rev1.pdf

「15.陸の豊かさも守ろう」(国際開発センター/2018年)

https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL15.pdf