4 質の高い教育をみんなに 4 質の高い教育をみんなに

目標4

質の高い教育をみんなに

すべての人々への包摂的かつ
公正な質の高い教育を提供し、
生涯学習の機会を促進する

2020年6月1日

世界の教育の現状と
目標4の内容

世界には、小学校に通えない子どもがたくさんいます。約5,900万人の子どもが小学校に通えておらず、通えても課程を最後まで修了できない子どもが後を絶ちません。特にサハラ以南のアフリカ諸国では、初等教育修了率は60%となっています。住んでいる地域に学校がない、先生がいない、また家族が教育をあまり重要視していなくて通わせてもらえなかったり、家計のために働かざるを得なかったりすることなどから、子どもが学校に通えていないという状況が見られます。戦争や紛争により学校そのものが破壊されることもあります。こうした状況が、子どもたちの教育の壁となっているのです。

開発途上国の初等教育の就学率については、2015年までに91%に達していて改善が見られますが、中等・高等教育については就学率が低い状態が続いています。サハラ以南のアフリカ諸国、南アジア諸国、中近東や北アフリカ諸国において、中等教育とそれ以上の教育の就学率は50%未満です。中等教育以上は有償となる国が多く、各家庭や国家の経済格差が教育にも影響しています。また、保育園や幼稚園などの就学前教育についても、同じように格差の影響が見られます。さらに、開発途上地域では、女児が小・中・高等学校に入学しにくいという男女間格差も残っています。

読み書きができないまま大人になる人は、世界で約7億8,000万人にものぼると言われています。とくに開発途上国には、質の高い教育を受けるのが難しいために、文字の読み書きができなかったり、基礎的な計算能力がなかったりする人々が多くいるのです。

そのため、良質な教育を受けることやよい仕事に就くことができず、貧しい状態から抜け出せなくなってしまっています。そして、このような人たちの子ども世代もまた、教育を受けられないという悪循環が生まれているのです。人々が貧しい状態から抜け出し、自立した生活を送るためには、質の高い教育を受ける環境や機会を増やしていくことが必要不可欠なのです。

良質な教育が普及すれば、経済的な格差や性による不平等が是正されることも期待されます。持続可能な社会を作っていくために、質の高い教育が広く提供されることが重要なのです。

教育を広く提供するための
世界中での取り組み

開発途上国の教育を改善するために、これまでも世界では国際的な支援が続けられてきました。小・中学校を建設したり、教材や学校で使う機材を提供したりして、教育の「量」を増やそうというのが支援の一つの形です。また、教育の「質」を高めるために、教育カリキュラムを新たに作ったり、教員の育成に力を入れたりという支援も行われています。学校の環境を整えるだけでなく、子どもが働かなければいけない状況も打開していく必要があるでしょう。

さらに、質の高い教育をすべての人に提供するためには、子どもだけではなく、障害がある人や貧困層、女性などの社会的に立場が弱い人々にも配慮しなければいけません。また、基礎的な読み書きや計算、仕事に必要な知識や技術を、大人になってからも学べるよう、すべての人が一生教育に触れられる機会を提供していくことも重要です。

財政状況の厳しい開発途上国では、教育の普及にかけられる予算が少ないため、国際的な協力も必要です。これからは、国際的な奨学金制度を立ち上げたり、国際的に留学生や研修生を交換したりする取り組みが増えてくると思われます。

世界の企業の間でも、開発途上国の校長先生に学校運営の方法を教える、教師を派遣してパソコンや英語の授業を開設する、研修生を受け入れてICT(情報通信技術)に関する技術研修を行う、といった支援が行われています。

教育を広く提供するための
日本での取り組み

日本国内では「すべての人に質の高い教育を」という目標に含まれる、「持続可能な開発に必要な知識・技能を身につけられるようにする」というテーマに注目した取り組みと、生涯学習やキャリア教育の観点に注目した取り組みが多く行われています。

多くの子どもたちが「自然環境や資源を守りながら、すべての人が豊かに暮らし続けるためには、どのような開発をしていくべきなのか」というSDGsのコンセプトを学べるように、さまざまな企業がそれぞれの得意分野を生かして、環境、科学、食育、ITなどのテーマからSDGsを学べる出張授業やワークショップを行っています。

さらに、企業の従業員が中学校や高校に出向き実際の仕事について研修を行ったり、中高生を職場に受け入れて職場体験をしてもらったりする、キャリア教育の活動も広まっています。

また、生涯学習の観点から、従業員に対してSDGsについて学ぶ研修を行ったり、資格取得のための費用を会社が負担したりするといった取り組みを進める企業も増えています。

SDGsは今、日本の中学校や高校の授業でも取り上げられています。世界の課題について生徒達で話し合ったり、部活動としてSDGs部を立ち上げたりといった活動が、ESD(持続可能な開発のための教育)として各地で行われています。

教育は貧しい暮らしから脱出して自立する手段としてはもちろん、持続可能な開発を実現する手段としても基盤となるものです。子どもも大人も、学びたい時に誰もが学べる環境が、世界中で実現されることが求められています。

参考資料

「すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」10のターゲット

[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)

  • 2030年までに、全ての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
  • 2030年までに、全ての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
  • 2030年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
  • 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
  • 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
  • 2030年までに、全ての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。
  • 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
  • 子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、全ての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
  • 2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼(しょうとうしょ)開発途上国、並びにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
  • 2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる。

このターゲットでは、「教育」にまつわる目標と求められる取り組みが詳しく設定されています。

※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。

※目標4のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。

  • 【学校教育の利用】
  • 全ての子どもが乳幼児の発達・ケアと就学前教育を利用できるようにする
  • 全ての子どもが無償で質の高い初等教育・中等教育を修了できるようにする
  • 全ての人が質の高い技術教育・職業教育・高等教育を平等に受けられるようにする
  • 障害者、先住民などがあらゆるレベルの教育や職業訓練を平等に受けられるようにする
  • 【生涯教育としての教育機会の利用】
  • 雇用や起業に必要な技能を持つ若者と成人の割合を、大幅に増加させる
  • 全ての若者と大多数の成人が読み書き・基本的計算能力を身に付けられる
  • 全ての人が持続可能な開発の促進に必要な知識・技能を習得できる
  • 【目標実現のための方策】
  • 全ての人に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供する
  • 高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる
  • 国際協力などを通じて質の高い教員の数を大幅に増加させる

[参照元]

「目標4 すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」 (国際連合広報センター/2018年12月)

https://www.unic.or.jp/files/Goal_04.pdf

「目標4 質の高い教育の普及はなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)

https://www.unic.or.jp/files/04_Rev1.pdf

「4.質の高い教育をみんなに」(国際開発センター/2018年)

https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL4.pdf