私立中学入試の学校種別と付属校・進学校による分析[中学受験]

リーマンショック以前は、受験者数の増減は公立小学校卒業者数の増減で予想ができた。しかし、リーマンショック直後の2009年は、公立小学校卒業者数が増加したにもかかわらず、受験者数は横ばいであった。また、2010年以降は公立小学校卒業者数が横ばいだったが、受験者数の減少が続き、不況で受験者数が減少することが明確になった。受験者数の減少は学校難易度によって異なるが、学校種別や付属校・進学校・半付属校別でどのように影響するか確認してみたい。

図1は学校種別(男子校・女子校・共学校)に分類して、受験者数前年対比の推移を表にまとめたものだ。学校種別で分析すると、女子校は、2010年に激減したあと、前年対比の減少率は緩和しており、2011~2013年では、共学校と同程度になった。女子校が共学校化することから共学校のほうが人気というイメージを持つかもしれないが、それほどの差はないことになる。



2010年では、確かに共学校は女子校よりも人気があることを示しているが、その後は、共学校の人気が高まることはなく、2010年の反動でわずかだが女子校が共学校よりも受験者数の減少が少ない年もあり、全体としてはそのままの人気の差が続いたことになる。

同様に男子校と共学校を比べると、2010~2012年の3年間は男子校のほうが共学校よりも受験者数前年対比は高く、2013年だけが、わずかだが、1.5%だけ共学校のほうが男子校を上回っている。不況下においては大学受験指導で評価の高い男子校が共学校よりも受験者数前年対比は高い傾向があることがわかる。

男子校を受験する生徒は、受験する学校に共学校を混ぜない傾向があり、共学校受験者も同様だ。要因としては、家庭文化による価値観の違いがあると思われる。しかし、不況下においては、将来の不安を払拭(ふっしょく)するために男子校が大学受験に強いという実利をとる傾向が見られる。

図2は付属校・進学校・半付属校別に分類して、受験者数前年対比の推移を表にまとめたものだ。付属校は学費が高いことから、不況の影響を受けると考えられていたが、リーマンショック直後の2010年と2011年は、付属校の安定性を求め、むしろ受験者数前年対比は高かったことがわかる。従来は、教育には経済の影響は少なく、他の費用を切り詰めても、教育費用は惜しまないというご家庭が多かった。



しかし、不況の影響が大きく、学費が高くなりすぎたことや大学入試が易しくなる傾向にあることで、付属校の受験者数前年対比は2012年と2013年の入試で約10%減少している。2年続けて減少していることが注目すべき点で、通常は10%も減少すると翌年は大幅な増加傾向となるはずだ。ところが、翌年も大幅な減少となり、これは付属校の学費が高いことによる不況の影響といえる。2011年、付属校は受験者数が大幅に増加し、全体でも前年対比が100%程度あった。これは少々特異なケースで、2010年に開校した早高院、中大の意外な低倍率の反動と思わる。

志望校選定要素である男子校・女子校・共学校別と付属校・進学校・半付属校別は、受験生・保護者の持つ家庭文化によって決まる傾向が強く、家庭文化は不況の影響は受けないのではないかと思われたが、これまでの説明どおり、どちらも大いに不況の影響を受けていることがわかる。



●表示:受験者数が比較的多い:前年対比(前年対比が100%以上)、※増減率(2013/2009が90%以上)
受験者数が比較的少ない:前年対比(前年対比が90%未満)、※増減率(2013/2009が70%未満)
参考データ(受験者数1,000名未満のため) <斜体で小さく表示>
●半付属校:系列校大学推薦進学が30%~69%
進学校:同30%未満 附属校:同70%以上


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

子育て・教育Q&A