【ESD】で
持続可能性の考え方を
子どもたちにも!
【SDGs
(持続可能な開発目標)】
達成の担い手を育む教育
「ESD」とは、「Education for Sustainable Development(=持続可能な開発のための教育)」を略した言葉です。国連が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」の考え方を子どもたちにも知ってもらい、持続可能な社会づくりの担い手を育てようと、世界の教育の場で取り入れられています。
環境・貧困・人権・平和・開発など、世界にはさまざまな課題があります。これらの課題は遠い国で起きている他人事のように感じる人もいるかもしれません。しかし、世界中の人々がこれからも豊かな暮らしを続けていくことができる社会を実現するためには、世界にはどんな課題があるのかを知り、解決に向けて私たち一人ひとりがどう行動すればよいのかを考えなければなりません。
今回は、「SDGs(持続可能な開発目標)」と「ESD」について、ご紹介します。ESDを通して、SDGsについても理解を深めていきましょう。
「ESD
(持続可能な
開発のための教育)」の
第一歩は、
まず「知る」こと
■ESDとは?
「ESD」とは、「Education for Sustainable Development」を略した言葉で、「持続可能な開発のための教育」という意味です
国連が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」は、将来にわたって世界中の人々が豊かに暮らしていくために、達成するべき17の目標から成ります。「ESD(持続可能な開発のための教育)」は、SDGsが目指す「持続可能な社会」の担い手を育てようとする教育のことを言います。
将来の社会をつくっていくことになる子どもたちにも、現代社会のさまざまな課題と持続可能性の考え方を、今から教えていこうという取り組みの一つがESDなのです。
■社会のさまざまな課題を知ることから、始めよう!
世界には、地球温暖化、資源の枯渇、環境破壊、貧富の差、ジェンダーなどの人権にまつわる問題など、世界中の人が安心して暮らしていくために解決しなければならないさまざまな課題があります。
また、文部科学省がESDにおいて、子どもたちに教えるべき現代社会の課題として挙げている項目には、「環境」「国際理解」「世界遺産や地域の文化財」「気候変動」「生物の多様性」「防災」「エネルギー」などがあります。
これらはすべて、「持続可能な社会」をつくっていくために、知っておいてほしいことです。一つひとつのテーマは以前からあるもので、目新しいテーマではありませんが、「持続可能な社会をつくっていく」という目的を中心に置いて、バラバラではなく、総合的に考えていこうとするのがESDの考え方です。
たとえば、「ごみを分別すれば資源になる」と知らなければ、分別することはできません。集中豪雨で川が増水したときに、自分のいる地域がどのくらい浸水しそうか知らなければ、安全に避難することはできません。また、他の国の文化を知らなければ、互いに理解し合うことが難しくなってしまいます。
「地球温暖化と言われても、自分とどう関わるのかよくわからない」と考えていては、地球温暖化をくい止めるための行動にはつながりません。「ペットボトルを使い捨てるよりは、資源ごみとして分別すると、地球温暖化の防止に役立つようだ」と知ることができれば、「資源としてリサイクルされるように、きちんと分別しよう」と行動が変わります。知ることで価値観が変わり、価値観が変わることで行動につながっていくのです。
まずは、社会にある課題を知ることが最も大切です。ESDでは、広い視野で世界にはどのような問題があるのかを知り、身近な取り組みから始めることで、自らの問題として行動に移すことを目指しています。
こうした学びや活動から、持続可能な社会を実現する担い手を育てていこうというのがESDの大きな目的です。
ESD
(持続可能な開発の
ための教育)の目的
日本におけるESDの目的については、文部科学省が以下のように「目的」や「育みたい力」を上げています。
[ESDの目標]
- 全ての人が質の高い教育の恩恵を享受すること
- 持続可能な開発のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれること
- 環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような価値観と行動の変革をもたらすこと
[育みたい力]
- 持続可能な開発に関する価値観(人間の尊重、多様性の尊重、非排他性、機会均等、環境の尊重等)
- 体系的な思考力(問題や現象の背景の理解、多面的かつ総合的なものの見方)
- 代替案の思考力(批判力)
- データや情報の分析能力
- コミュニケーション能力
- リーダーシップの向上
※引用元:ESD(Education for Sustainable Development):文部科学省
育みたい力としては、まず、人権や多様性を尊重し合う気持ちや、環境保護の視点を持つといった、持続可能な開発に関する価値観を育てることが挙げられています。さらに、体系的に考える力や、「Aがダメなら、Bはどうだろう」と批判的に考える力、データや情報を分析する力、リーダーシップの向上といったことも挙げられます。
少子高齢化やグローバル化が進む現代において、これからの社会を支えていくには、多様な人々がお互いに認め合い、協力し合って、課題を解決していく力が必要とされています。また、データを分析して論理的に考えたり、柔軟に考えたりする力も求められます。
身近な課題に取り組み、世界の課題へと視野を広げて考えることを通して、こうした力を育むこともESDの目的の一つです。
SDGs
(持続可能な開発目標)と
ESD
(持続可能な開発の
ための教育)の関係
■SDGs(持続可能な開発目標)にまつわる教育の問題
2015年に国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」は、持続可能な社会をつくっていくために、世界中のすべての人々が取り組むべき目標やターゲットをまとめたものです。持続可能な社会とは、世界中の人々が豊かに暮らし続けていくことができる社会という意味があります。17ある目標では、地球の環境や資源を守ることと経済の発展を両立し、貧富の差やジェンダーの問題、戦争などの争いをなくすことなどを目指しています。
これらの目標のうち、教育に関わるのは「目標4.質の高い教育をみんなに」です。
世界には、家庭が貧しくて小さいうちから働いていたり、「女の子だから」というだけで、教育を受けられなかったりする子どもが大勢います。この目標では、性別、障害の有無、生まれた地域や国に関わらず、すべての人が質の高い初等教育と中等教育を無償で受けることができ、高等教育を受ける機会を公正に得ることができるようにすることが、主なターゲットになっています。
さらに、すべての人が持続可能な開発の促進に関わることができるように、生活に関すること、人権、男女の平等、戦争と平和、国際文化や多様性について、知識を学び、技能を習得することができるようにする、というESDの基礎となるターゲットも示されています。
このように、SDGsとESDは相互に関係しているのです。
■コロナショックで高まる「オンライン授業」の必要性
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、教育の場にも大きな影響を与えました。
日本でも感染拡大防止のため、2020年3月初めから多くの学校が休校となり、長いところでは6月初旬までの約3か月間、子どもたちが学校に通えない状況になりました。子どもが小学校や中学校に通って勉強するのが当たり前だった日本でも、教育の機会が失われるということが起こったのです。
こうしたなか、注目が高まったのが「オンライン授業」です。世界の国々では、教師が黒板の前で授業をする動画を生徒向けに配信したり、テレビ会議ができるアプリを使って互いの顔を見ながら授業を行ったりという取り組みが行われました。日本でも、一部の学校でオンライン授業を行った事例がありました。
ふだんから、オンライン授業ができる環境と経験が整っていれば、今後も、大きな災害で登校する手段がなくなってしまったときや、感染症の大流行で休校せざるを得ない状況が出てきても、教育の機会を確保することができます。また、オンライン授業は、不登校の子どもや、医療ケアが必要で学校に通えない子ども、長く入院している子どもなど、今まで学校に通うことが難しかった子どもたちも、教育の機会を得ることができるというメリットもあります。
こうしたことから、今後も、インターネット環境やパソコンやタブレットなどの機器から、学校側のノウハウも含めて、オンライン授業のための環境が充実していくことが期待されています。
日本でのESD
(持続可能な開発の
ための教育)の事例
日本でも、小学校、中学校、高校などで、ESDを実践する学校が増えています。最後に実際に行われているESDの事例をご紹介しましょう。
■ユネスコスクールでの事例
ユネスコスクールとは、ユネスコ憲章に示されたユネスコ(UNESCO=国際連合教育科学文化機関)の理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校のことです。日本では文部科学省とユネスコにより、ユネスコスクールがESDの推進拠点として位置づけられています。日本国内では2019年11月現在、小学校、中学校、高校を含む1,120校が、ユネスコスクールのネットワークに参加しています。
ここでは2014年に発表された、ユネスコスクールESD優良実践事例集から、2つの事例をご紹介します。
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岡山市立京山中学校(文部科学大臣賞)
ESDの観点から「ESDカレンダー」を図式化して、身につけたい力を計画的に身につけることに取り組みました。1年生は地域でのフィールドワークの基礎を学び、2年生では広島での研修を中心に、平和、人権や国際理解、環境の学習を進めました。3年生では、熊本県水俣市でのフィールドワークを中心に、環境問題などのテーマを個人で設定し、地域や未来への提言として発信しています。
全校的に取り組んだことで、生徒だけでなく、教員や保護者の意識も変わってきたと報告されています。
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岡崎市立男川小学校(小学校賞)
地域に生息する昆虫を観察することで、自然を生かした理科の探求学習に取り組みました。5~6月には、チョウの孵化(ふか)や羽化の様子を観察しました。6~7月には昆虫標本の製作に取り組み、「ふるさと男川の昆虫標本」を完成させました。その後、専門家のカブトムシについての講演を聞いたり、調べた昆虫の体のつくりを模型で表したりして、学習したことを「ふるさと男川昆虫図鑑」にまとめました。
実物の昆虫の生態に触れることから始まって、自ら考え調べる姿勢、互いの意見を聞き合う態度に成長が見られたということです。
ここに挙げたのは、ほんの一例です。ほかにもさまざまな実践例があり、学校教育の場でESDが広まりを見せていることがわかります。
■企業の間でも広まるESDの取り組み
学校だけでなく、企業の間でもESDをサポートする取り組みが広がっています。
SDGsやESDがテーマにしている「持続可能性」を学べるように、さまざまな企業がそれぞれの得意分野を生かして、環境、科学、食育、ITなどのテーマからSDGsを学べる出張授業やワークショップを行っています。
SDGsは今、日本の中学校や高校の授業でも取り上げられていますが、授業以外でも、世界の課題について生徒達で話し合ったり、部活動としてSDGs部を立ち上げたりといった動きが広がりを見せています。こうした活動を支援するためのプロジェクトに協力している企業もあります。
これらの企業による、活動や支援も、ESD(持続可能な開発のための教育)の一例と言えるでしょう。
日本でのESDは、学校教育の場を中心にこれからますます増えていくと思われます。持続可能な社会をつくる担い手を育てるためには、子どもたちが世界にある課題を「知ること」が第一歩です。家庭でも、今からお子さんと一緒に、SDGsやESDについて知る機会をつくってみましょう。きっとお子さんの学びを深めるきっかけになるはずです。
文部科学省のホームページでも、小学生や中学生向けの教材が公開されています。「何から始めたらよいか、わからない」というときは、ぜひ参考にしてください。
[文部科学省が公開している教材]
ESD QUEST(イーエスディー クエスト)
http://www.esd-jpnatcom.mext.go.jp/pdf/ESDQUESTstorybook.pdf中学生向けの副教材『私たちがつくる持続可能な世界~SDGSをナビにして』(外務省・日本ユニセフ協会作成)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_navi.pdf[参照元]
※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。
ESD(Education for Sustainable Development):文部科学省
https://www.mext.go.jp/unesco/004/1339970.htm実践例から学ぶESD〜持続可能な開発のための教育〜 | シンギュラリティ・ラボ
https://sinlab.future-tech-association.org/column/shinlabo_hensyu_bu/umi_esd_education/ユネスコスクール 公式ウェブサイト
http://www.unesco-school.mext.go.jp/ユネスコスクール:文部科学省
https://www.mext.go.jp/unesco/004/1339976.htmHome | 経団連 | KeidanrenSDGs
https://www.keidanrensdgs.com/home-jp17の目標と食品産業とのつながり:目標4に対する取組:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/goal_04.html#goal_top世界の社会課題に向き合う全国高校生を繋ぐ「SDGsユースプロジェクト」|サステナブルな社会へ from Benesse(よく生きる)
https://www.benesse.co.jp/brand/category/education/20190528_1/