お子さまのやる気に火をつけたいと学習やスポーツにおいて「目標」を立てさせている保護者のかたも多いと思います。ただ、目標設定に失敗してしまうと、子どもの意欲をかえって低下させてしまうこともあるそうです。今回は、子どもの動機づけに関する研究をされている筑波大学大学院准教授の外山美樹先生に、子どもに自信をつけさせる目標設定のコツを伺いました。
目標達成できたとき、子どものやる気が高まる!
学習やスポーツなどの活動において、お子さまに目標を立てさせるのは、モチベーションを高めるためにとても有効な方法です。ただ、目標を立てたからといって、それ自体がお子さまのモチベーションを高めるわけではありません。自分が立てた目標が達成できたとき初めて、「自分はがんばればできるんだ」という自己有能感が高まり、活動へのモチベーションとなるのです。反対に、目標設定に失敗し、目標を達成することができなければ、自己有能感が喪失し、モチベーションを高めるどころか、かえってお子さまの意欲を低下させる可能性もあります。
お子さまのやる気を高めたいのでしたら、お子さまが達成できそうな目標を立てることが大切です。小さなお子さまは、自分の能力を正しく把握していませんから、自分の能力に見合わない大きな目標を掲げてしまうこともあると思います。その場合は、達成できそうな目標を具体的に提案してあげるようにしましょう。たとえば「プロ野球選手になる」ことが目標なら、「素振りを毎日50回する」「週3回ランニングする」などそのお子さまにとってちょっとがんばればできそうな目標を提案してあげるのです。小さな目標を達成して自信をたくさんつけさせることが、大きな目標を達成させるための第一歩になります。
目標設定のポイント |
お子さまの達成できそうな目標を立てる以外にも目標設定のポイントをいくつかご紹介します。
・具体的な数字や期間を入れた目標を立てる 「できるだけたくさん勉強する」「部活をがんばる」というあいまいな目標よりも、「毎日1時間勉強する」「サッカーのリフティングを20回以上できるようになる」といった具体的で明確な目標のほうが望ましいです。具体的な数字や期限を明確化した目標設定のほうが、お子さまにもどうがんばればいいかわかりやすく、目標を達成できたかどうか検証しやすいです。
・自分の能力によって達成できる目標を立てる 目標を立てるときに「テストでいい順位をとる」「相手チームに勝利する」といった目標を掲げるお子さまもいると思いますが、いくら自分(あるいは自分たち)が努力してがんばったとしても、相手がそれを上回っていれば、目標を達成できなくなってしまいます。そのため、「連立方程式が解けるようになる」や「逆上がりができるようになる」といったように、周囲の人の能力に関係なく、自分の具体的な行動やスキルの向上を目標とするほうがよいでしょう。この場合、仮に目標達成に失敗したとしても、次に自分が何をすべきかわかりやすいですから、モチベーションが低下することなく、もう一度、目標達成に向けて努力を継続できるはずです。
・できれば複数の目標を立てる 一つの目標だけだと、その目標の達成ができなかったときにモチベーションが低下してしまう恐れがあります。できれば複数の目標を立てるとよいでしょう。学習だけでなく、スポーツや生活に関する目標でも構いません。その子の得意な分野の目標を立てると自信をつけさせやすいと思います。何か一つの側面において「自分はできるんだ」という自己有能感が持てれば、それが徐々に学習などほかの活動に対するモチベーションへとつながっていくはずです。
・お子さまと話し合ったうえで目標設定を 「お母さんに『○○しなさい』と言われたから」といった他律的な理由で目標に取り組んだお子さまよりも、「自分が○○したかったから」という自律的な動機(理由)を持って目標達成に取り組んだお子さまのほうが意欲は高いことが、研究から明らかになっています。ぜひお子さまと話し合い、お子さまの納得できる目標を立ててほしいですね。目標を達成できたという喜びから、次第に自分から目標を発するようになるはずです。また、目標について親子で話し合う機会はよいコミュニケーションの場にもなりますよ。 |
次回は年齢別の目標の立て方のアドバイスをお伺いします。