目標1 貧困をなくそう

目標1 貧困をなくそう 『未来』と向き合う夏にしよう SDGs×自由研究

どんな目標?

世界全体では70億人以上の人が暮らしていますが、世界銀行の2015年の調査によると、そのうち7億人以上の人が、1日1.9ドル(200円程度)未満のお金で生活しています。 貧困(貧しくて生活に困っていること)は、人間の可能性をうばいます。貧困状態になると、必要なものを十分に買えないだけでなく、多くの人はその日のことに気をとられ、将来のことを考えるゆとりをなくしてしまいます。 あらゆる場所での、あらゆる形の貧困を終わらせることが、SDGsの目標の最初にあげられています。

貧困をなくすための社会的な発明!
「マイクロファイナンス」について調べよう

貧困をなくそう!という目標を見たり聞いたりして、もしかしたら「貧しくても幸せに生きていくこともできるんじゃないの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。そもそも、なぜ貧困が問題なのでしょうか。
1998年にアマルティア・センさんという経済学者がノーベル経済学賞を受賞し、2006年にはムハマド・ユヌスさんという銀行家(経済学者でもあります)がノーベル平和賞を受賞しました。2人の共通点は、貧困についての研究や社会的活動によってノーベル賞をもらったことです。貧困について、世界で最も深く考え、行動してきた2人と言っても良いでしょう。

貧困とはどういうものかを、センさんは ”a capacity deprivation”(人が本来持っている力を生かす権利をうばうこと)、ユヌスさんは ”Denial of the Opportunity”(チャンスをあたえないこと)と言い表しており、ほぼ同じことを言っているのが分かります。

例外はあるかもしれませんが、ほとんどの人は重い貧困状態ではその日の食事を手に入れるのに精いっぱいで、自分が幸せかどうかを考えるゆとりすらなくなります。毎日がんばって働いても、わずかなお金しかもらえないので、手元にお金がたまることはありません。また、貧困に苦しんでいる親から生まれた子どもは十分な教育を受けられず、その子どもが大人になってもやはり貧困に苦しむことになります。このように、貧困は人間が幸せに生きられる可能性をうばってしまうため、SDGsの17の目標の中でも真っ先に書かれているのです。

やってみよう!

用意するもの

  • インターネットに接続できるパソコン
  • ノート

貧困をなくすための方法「マイクロファイナンス」とは?

先ほど名前が出てきたセンさんは、貧困が起きる仕組みを経済学の立場から解明し、ユヌスさんは、貧困をなくすための具体的な方法を生み出しました。その方法を、マイクロファイナンスと言います。マイクロファイナンスは、貧困状態にある人もお金を借りたり保険に入ったりできるサービスのことで、ユヌスさんが立ち上げたグラミン銀行の活動などによって世界中に広まりました。グラミン銀行とマイクロファイナンスについて、本やインターネットでさらに調べて、ノートにまとめていきましょう。

「グラミン銀行」についてくわしく調べてみよう

本やインターネットで何かを調べる時は、調べるポイント(何を調べたいか)を事前にまとめておくと良いでしょう。
例えば、グラミン銀行について調べる場合のポイントとしては、次のようなものが考えられます。

  • ユヌスさんは、どんな理由でグラミン銀行を始めようと思ったのか?
  • グラミン銀行は、いつ、どこでできたのか?
  • グラミン銀行と、ふつうの銀行のちがいは何か?
  • グラミン銀行の最初の活動はどのようなもので、その結果はどうだったか?
  • グラミン銀行は、なぜ利用する人たちを増やすことができたのか?
  • グラミン銀行の活動によって、どれくらい多くの人が貧困からぬけ出すことができたのか?
  • 現在では、どれくらい多くの人がグラミン銀行を利用しているのか?

このほかにも、自分で調べるポイントを色々考えてみてください。
ノートを用意して、例えば1つのポイントにつき1ページを使って調べた内容をまとめていけば、立派な自由研究になると思います。

注意点として、本やインターネットで調べたことをまとめる時は、本の名前や、インターネット上のウェブサイトの名前なども書いておく必要があります。
これは、自分が調べたことを他の人も後から調べられるようにするための、研究をする人にとっての基本的なマナーです。 参考にした本やインターネットについては、それぞれの調べるポイントごとに書くか、ノートの最後にまとめておくと良いでしょう。

まとめよう!

わたしのアクション(やること)を宣言しよう!

やってみよう!を通して感じたことと、SDGs の目標「1:貧困をなくそう」を踏まえて、自分ができることを宣言しましょう。

例) ・今まで貧困についてしっかり考えたことがなかったので、それがどれだけ大きな問題かということや、グラミン銀行がやっていることについて知れて良かった。グラミン銀行などのマイクロファイナンスでは、お金を集める方法の1つとして寄付を呼びかけていることが多いことも分かった。わたしも、自分が働くようになったらグラミン銀行のようなところに少しでも寄付をして、貧困をなくすための活動に役立ててほしいと思う。

まとめよう

例)

さらに深める!

さらに研究を深めたい場合は、以下のようなステップで研究してから「わたしのアクション宣言」をしてみよう。

身の回りで調べよう!

インターネットや図書館で、子どもの貧困問題について調べよう!

<参考サイト> 日本財団 子どもの貧困対策 https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/ending_child_poverty

内閣府 日本の子供の貧困に関する先行研究の収集・評価 https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/chousa/h28_kaihatsu/3_02_2_9.html

世界について調べよう!

インターネットや図書館で、世界の貧困について調べよう!

<参考サイト> 世界銀行 世界の貧困に関するデータ https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty

独立行政法人国際協力機構(JICA) 知ってる? 世界の貧困対策に役立つ日本の知見 https://www.jica.go.jp/aboutoda/sdgs/knowledge.html#a01

参考になる本

図解でわかる 14歳から考える資本主義

著者 :インフォビジュアル研究所 出版社:太田出版

健康で文化的な最低限度の生活

著者:柏木ハルコ 出版社:小学館

ムハマド・ユヌス自伝

著者:ムハマド・ユヌス/ アラン・ジョリ 出版社:早川書房

参考

マイクロファイナンスとは

マイクロファイナンスとは、銀行がサービスを提供できない貧しい人々に対して小口の融資や貯蓄、保険などの金融サービスを提供することです。貧困者の自立による貧困緩和という社会目標と、金融サービスとしての経済性を両立させるものとなっています。

マイクロファイナンスの仕組み

マイクロファイナンスは、経済学・開発経済学の立場も踏まえて生み出された貧困をなくす方法です。マイクロファイナンスによる融資は、一般的な金融サービスを利用できない貧しい人々のニーズに応えるため、短期・小口・無担保で行われます。無担保である代わりに5人のグループへの「グループ貸付」を行い、連帯責任を負う仕組みを採用するなど、お互いに助け合いながら返済できるように工夫しています。

マイクロファイナンスの目的

マイクロファイナンスは、貧困層への融資といった金融サービスを提供することで、貧しい人々が小規模ビジネスを起動に乗せて自立し、貧困の改善に役立つことを目的としています。発展途上国では、企業による雇用が少なく、自営業やファミリービジネスで生計を立てている人が多いため、それらのビジネスへの融資が貧困からの脱却に効果的です。

貸し手である投資する側は、貧しい人々の経済的自立を支援すると同時に、金利を加えた元本を回収することで利益を得ることもできます。

マイクロファイナンスの主なサービス

マイクロファイナンスが貧しい人々に提供する金融サービスには、少額融資で事業を支援するマイクロクレジット、預貯金にあたるマイクロセービング、災害や病気、経済危機などの不測の事態に備えるマイクロ保険といったものがあります。

マイクロファイナンスに関わる機関

マイクロファイナンスには、次のような機関が関わっています。

  • ・マイクロファイナンス金融機関(MFI):金融サービスに携わる実施機関。銀行やノンバンク、NGOなど様々な機関があります。
  • ・政府系銀行、開発金融機関:MFIに向けた融資を提供したり、自分たち自身でマイクロファイナンスのサービスを提供しています。
  • ・商業銀行:MFI向けに融資や運営サポートを行っています。
  • ・信用調査機関:貸付期間に対し、個人の信用情報を調査・収集しています。
  • ・ドナー:MFIに費用を提供しています。
投資としての側面

マイクロファイナンスは、投資対象としても注目されています。しかし、一般の投資家が直接するのは難しいため、マイクロファイナンス投資ビークル(MIVs)と呼ばれる投資ファンドや投資法人が橋渡しを行っています。

日本のマイクロファイナンス

日本では、2017年にグラミン日本が設立されました。グラミン日本では、貧困や生活困窮に苦しむ人に事業開始や就労の準備の資金を融資して、自立と貧困からの脱却を支援しています。

また、海外のマイクロファイナンス機関への資金を融資するスポンサーとしての取り組みも進んでいます。

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