【鎌倉時代】御家人が困窮した理由
元寇以降に御家人が困窮した理由として「貨幣経済の浸透」があげられていますが,なぜ貨幣経済の浸透が御家人を困窮させたのかが分かりません。
進研ゼミからの回答
こんにちは。
いただいた質問にさっそく解答させていただきます。
【質問内容】
元冠以降に御家人が困窮した理由として「貨幣経済の浸透」があげられていますが,なぜ貨幣経済の浸透が御家人を困窮させたのかが分かりません。
【質問への回答】
まず,元冠以降に御家人たちが困窮した理由について押さえましょう。元冠で御家人たちは多くの犠牲を払いましたが,それに見合うだけの十分な恩賞が幕府から得られず,困窮していった,という大きな流れを頭に入れたうえで,御家人たちが困窮していった背景として,「貨幣経済の浸透」という社会状況があったこと,「貨幣経済の浸透」が御家人たちにどのように影響を及ぼしたのかについて確認しておくとよいでしょう。
「貨幣経済の浸透」とは,簡単に言えば,
貨幣の使用が一般的になること
=自給できないものは貨幣を使って買うことが当たり前になる,ということです。
つまり,日常生活をおくる上で貨幣を持つことが必要不可欠になるわけです。
ところが,御家人の生活基盤は,それぞれの所領(土地)からの収益です。
たとえば新補地頭の収益は新補率法で規定された,
・田畑11町につき1町の土地
・田畑1反につき5升の米(加徴米)などですが,
これらはいずれも現物(田畑から収穫する米など,加徴米は文字どおり米)が収益となるものです。
そこで,貨幣を入手するためには現物(米)を売る(換金する)必要があります。
手元の米を売って貨幣を入手するのですから,物価の変動が収入に大きく影響を及ぼすようになります。また,生活に必要なものを貨幣で購入するため,物価の変動が支出にも大きく影響します。
このように「貨幣経済の浸透」によって物価の変動が生活に大きく影響するようになるため,ほぼ自給で生活する場合と比べると,生活が不安定になる要因が多くなるのです。
また御家人の場合,自分の所領をはなれて,鎌倉や,京都大番役で京都に滞在するなど,都市で生活することも多くなりました。こういった場合は都市の消費者として,必要なものを貨幣で購入して生活することになりますが,それに加えてぜいたく品などに接する機会も増えるでしょう。質素な生活を続けていけばあまり問題はないかもしれませんが,消費生活がぜいたくになって生活を困窮させることもありえますね。
このように,貨幣経済が浸透したからといって生活の困窮に直結するわけではないのですが,生活の不安定要因が多くなって,生活の困窮に陥りやすくなるということなのです。
【学習アドバイス】
貨幣の使用が当たり前の現代においては想像しにくいことですが,当時の社会状況を理解し,貨幣経済の浸透が生活にどのような変化をもたらしたのかを整理していきましょう。