【発現調節とバイオテクノロジー】抑制性と促進性の転写調節の違いがわかりません。
この問題で問われている原核生物の抑制性の転写調節と促進性の転写調節の違いがわかりません
進研ゼミからの回答
こんにちは。さっそく質問に回答しますね。
【質問内容】
【問題】
次の文章を読み,各問いに答えよ。
原核生物では,機能的に関連する遺伝子群が隣接して存在していることが多い。このような遺伝子群は,同じ調節タンパク質によってまとまって転写調節を受けている。図1はラクトース分解酵素の転写調節を示したものである。c からは e と呼ばれる調節タンパタ質が合成される。ラクトースがないとき,e は b と呼ばれる調節領域に結合しているため d が a に結合できず,酵素の遺伝子の転写を抑制する。また,図2はアラビノース分解酵素の転写調節を示したものである。 c からは f と呼ばれる調節タンパク質が合成される。fは転写を促進するはたらきをもつが,アラビノースがないときはaから離れた位置にある調節領域に結合するため,酵素の遺伝子の転写が抑制される。
問1 図中のa~fの名称をそれぞれ答えよ。
問2 下線部のような遺伝子群を何というか答えよ。
問3 図1において,酸素の合成が促進されるしくみを60字程度で説明せよ。
問4 図2において,酸素の合成が促進されるしくみを60字程度で説明せよ。
【解答】
問1 a プロモーター b オペレーター c 調節遺伝子 d RNAポリメラーゼ (RNA 合成酸素)
e リプレッサー (抑制因子) f 活性化因子
問2 オペロン
問3 ラクトースの代謝産物がリプレッサーに結合することで,リプレッサーがオペレーターから離れ,酵素の合成が促進される。(56字)
問4 アラビノースが活性化因子に結合することで,活性化因子がプロモーターに隣接する調節領域に結合し,酵素の合成が促進される。(59字)
この問題に出てくる抑制性と促進性の転写調節の違いがわからない,という質問ですね。
【質問への回答】
原核生物では,DNAの転写領域にまとめて転写調節を受ける一連の遺伝子群が存在することが知られていて,これをオペロンと呼びます。遺伝子の発現を調節しているのは調節タンパク質であり,そのアミノ酸配列をコードしている遺伝子を調節遺伝子といいます。
それでは,まず基本的な転写調節のしくみを確認しておきましょう。
図のように,転写を開始するためには,RNAポリメラーゼがDNAのプロモーターに結合する必要があります。
調節タンパク質はDNAの調節領域に結合することで転写調節にはたらきます。
調節タンパク質によってRNAポリメラーゼがプロモーターに結合できるようになる場合は促進性,
結合できなくなる場合は抑制性の調節をしていることになります。
では次に,実際にラクトースオペロンとアラビノースオペロンの例で,
抑制性と促進性の転写調節の違いをみていくことにしましょう。
以上より,転写調節が抑制性であるか,促進性であるかについては,調節タンパク質に注目すればよいことがわかりますね。
調節タンパク質がリプレッサーとしてはたらいている場合は抑制性(負)の調節,活性化因子としてはたらいている場合は促進性(正)の調節といえます。
なお,アラビノースオペロンの活性化因子は,アラビノースと結合していないときはプロモーターから離れた
位置にあるほかの調節領域に結合しており,この状態のときは転写が促進されず,リプレッサーとしてはたらく役割ももっています。
転写調節では,状況によって促進と抑制がスイッチのON/OFFのように切り替わるしくみがはたらいていることを理解しておきましょう。
【学習アドバイス】
「抑制」と「促進」のような対比がある場合は,その違いに注目してセットで学習することで理解が深まります。
これからも進研ゼミで勉強を頑張ってくださいね。