【平面内の運動と剛体にはたらく力】力のモーメントって何ですか?
モーメントの問題の解説で「ある点のまわりの力のモーメントのつりあいは…」といった表現のあとにつりあいの式が出てくるのですが,その式の意味がわかりません。
進研ゼミからの回答
【質問内容】
《力のモーメントって何ですか?》
モーメントの問題の解説で「ある点のまわりの力のモーメントのつりあいは…」といった表現のあとにつりあいの式が出てくるのですが、その式の意味がわかりません。
【質問への回答】
力には,物体を平行移動させたり,変形させるはたらきがあるのは直感的に理解できるでしょう。それに加え,物体をある点を中心に回転させる性質もあります。例えばドアを開けるとき,ドアノブをまっすぐ正面に押してもドアは回転して開きます。また,下図のように物体を引っ張ると,物体は地面との接地点を中心に回転します。
このように物体を回転させようとする力のはたらきを,力のモーメントといいます。
ここで重要なのは「回転させようとする」はたらきなので,実際には回転していなくても,力のモーメントははたらいているということです。しかも「回転しない」ということは,「力のモーメントがつりあっている」ことを表します。そうです,よく問題の解説で出てくる表現です。
また。力のモーメントの大きさは,回転軸から力の作用線までの距離と力の大きさの積で表されます。
では,問題をみてみましょう。
力のモーメントの問題も,まずカを図示するところからはじめます。
・棒の中心に下向きの重力(大きさW)
・点Pで右向きに壁から受ける垂直抗力(大きさN)
・点Aで上向きに水平面から受ける垂直抗力(大きさR)
をまず図に描き込みましょう。次に,静止摩擦力(大きさf)がどの向きにはたらくかを考えてみましょう。
では,それらを式にしてみましょう。
「棒にはたらく力の和が0」を式にする
・鉛直方向:R-W=0
・水平方向:N-f=0
これらは通常の力のつりあいの式です。
「点Aのまわりの力のモーメントの和が0」を式にする
どの点のまわりの力のモーメントも0なのですが,ここでは,大きさがfとRの力は点Aからの距離が0なので,回転させる作用,すなわちモーメントを生じさせませんから,点Aのまわりの力のモーメントを考えましょう。
点Aのまわりにはたらく力のモーメントは,大きさNの壁からの垂直抗力と大きさWの重力によって生じます。
力のモーメントの大きさ:
次に,棒が回転しようとする向きを考えましょう。
・壁からの垂直抗力による回転の向き:少し極端なイメージですが,もし壁がなくなったら棒は点Aを中心として反時計まわり(左向き)に回転します。つまり,壁から受ける垂直抗力によって,棒は回転を妨げられて静止するので,垂直抗力は時計まわり(右向き)にはたらきます。
・重力による回転の向き:棒の中心を重力と同じ向きに引っ張るイメージをしてみてください。棒は壁を下に,水平面を右にすべっていきます。棒が反時計まわり(左向き)に回転しようとしていることがわかります。
【学習のアドバイス】
大きさのある物体が静止するためには,力がつりあっている(平行移動しない)だけでなく,力のモーメントがつりあっている(回転しない)という条件が必要です。
力のモーメントを考えるときは,物体がどちら向きに回転しようとしているかをイメージする必要があります。
少し極端な状態をイメージしてみると,物体がどちら向きに回転しようとしているかが見えてきます。
力のモーメントのつりあいの式を立てるときは
・まず,どの点のまわりの力のモーメントを考えるのかを決め,
・力のモーメントの大きさ:(力の大きさ)×(その点から力の作用線までの距離) を求め,
・回転させようとする向きによって,力のモーメントの正負を決め,
・(力のモーメントの和)=0という式を立てる,
ということになります。