【免疫】花粉に対する抗体とインフルエンザウイルス(などの病原体)に対する抗体は違うのですか?
花粉などの抗体がマスト細胞につくのに対して、インフルエンザウイルスなどの抗体が、マスト細胞につかないのはなぜですか?
進研ゼミからの回答
こんにちは。春先のニュースでも花粉の大量飛散などを耳にしますね。
花粉症とインフルエンザウイルスの感染での抗体の違いを見ていきましょう。
【質問の確認】
この問題で取り上げられているアレルギーのしくみで出てくる抗体と,体液性免疫で出てくる抗体の違いがよくわからない。
というご質問ですね。
【解説】
<花粉症の場合>
抗体を構成する免疫グロブリンにはIgG,IgA,IgM,IgD,IgEという5種類が存在します。
下の花粉症のしくみの説明の②で,マスト細胞の表面に付着している抗体は
IgEという種類の免疫グロブリンです。
マスト細胞はIgEのH鎖の一部分と結合する反応基をもつので,両者は結合することができますが,IgG,IgMなど,ほかの種類の抗体は結合することができません。
インフルエンザウイルスなどのウイルス感染防御にかかわる抗体は,IgGとIgMです。
したがって,質問への回答は,
花粉とインフルエンザウイルスでは関与する「抗体の構造が異なるから」 です。
そもそも花粉や食べ物などは,病原菌やウイルスのように体内に入って増殖し生命を脅かすものではないので,そんなに必死に排除する必要はないですよね。
しかし,花粉症やアレルギー体質のヒトの場合,IgEが過剰に産生されるためマスト細胞から放出されるヒスタミンによってくしゃみ,鼻水,湿疹などの症状が引き起こされてしまいます。
正常時の血清中のIgE濃度は非常に低く,そのはたらきについてはいまだに不明です。
ただ,寄生虫感染症の場合,IgEが多量に産生されるので,このような場合に重要な抗体であると考えられています。
<インフルエンザウイルスが感染した場合>
細菌と違ってウイルスは宿主細胞の中に入らないと増殖できません。
インフルエンザウイルスも,喉などの粘膜から体内に侵入し,近くの細胞の中に入り込んで増殖します。
したがって,インフルエンザウイルスを排除するには感染した細胞ごと排除しなければなりません。
B細胞によってIgGなどの抗体も産生されますが,ここではたらくのは主に「細胞性免疫」であることも知っておきましょう。
【アドバイス】
異物の侵入に対する防御機構にはさまざまなシステムがはたらくことがわかったと思います。
異物がからだのどこから侵入してくるのかによって,防御システムがはたらく場所が異なりますし,侵入してくる異物の種類によっても防御システムを使い分けているということを頭に置いておきましょう。
これからも『進研ゼミ高校講座』で理解を深めていってくださいね。