【タンパク質合成と遺伝子発現】ゲノムってそもそもなんですか?
解説をなんども読んだのですが、ゲノムとはなんなのか、つかめません。
進研ゼミからの回答
こんにちは。 さっそく質問に回答しますね。
【質問の確認】
【問題】
遺伝情報と遺伝子の発現について,次の文章中の空欄に適当な語句を記せ。
ヒトのからだは,1個の受精卵が( ① )を繰り返してできた多数の細胞が,多種多様に( ② )して形づくられている。それぞれの細胞でははたらいている遺伝子が違っているが,細胞がもっている遺伝情報は基本的に同じである。ヒトの体細胞の核には,父親由来の染色体( ③ )本と母親由来の染色体( ④ )本,合わせて( ⑤ )本の染色体がある。遺伝情報は,染色体のDNAに含まれており,ヒトでは( ⑥ )本で1組の染色体のDNAが含む遺伝情報を( ⑦ )と呼ぶ。つまり,ヒトの体細胞は( ⑦ )を( ⑧ )組もっていることになる。
【解答】
①細胞分裂(体細胞分裂) ②分化 ③23 ④23 ⑤46 ⑥23 ⑦ゲノム ⑧2
【解説】
真核生物の体細胞は,通常,相同染色体を2本ずつもっている。ヒトの場合,父親と母親それぞれから生殖細胞を介して23本の染色体を受けとるので合計46本の染色体が核内に存在する。この生殖細胞がもつ1組(ヒトでは23本)の染色体のDNAに含まれるすべての遺伝情報がゲノムである。つまり,ヒトは父親由来のゲノムと母親由来のゲノムの2組のゲノムをもつことになる。
体細胞分裂では,細胞がもつゲノムは変化しないので,1個の受精卵からつくられる一人のヒトの体細胞は,基本的に同一のゲノムをもつ。一方,多細胞生物のからだは多種多様な細胞で構成されているが,細胞は,同じゲノムをもっていても,どの遺伝子がはたらくかを変えることで,多種多様に分化するのである。
この問題で解説されているゲノムの定義がよくわからない。
というご質問ですね。
【解説】
DNAは二重らせん構造をもつ細長い分子です。
大腸菌などの原核生物では細胞質基質中に通常1個の環状のDNA分子が細く折りたたまれて局在しています。原核生物ではこの状態のDNAを染色体と呼びます。
また,ヒトなどの真核生物ではDNA分子は通常ヒストンと呼ばれるタンパク質に巻きつき,繊維状の構造体で核内に分散しています。分裂期になると,さらに何重にも折りたたまれて凝縮され,太い染色体になります。このように細胞内でDNAを安定に保持するために生じた構造が染色体であり,細胞内に存在する染色体の数とDNA分子の数は等しくなります。
DNAが遺伝子の本体であることは,現在では誰もが知っている事実です。最近では「ゲノム」という言葉を新聞やニュースなどでもよく見かけますが,ゲノムの意味を聞かれたら,たいていの人は答えにくいと思ってしまうことでしょう。
「ゲノム」とは,生物種にとって必要な遺伝子の1セットのことをいいます。
有性生殖においては各生物種の配偶子に含まれる染色体に存在する全DNA(遺伝情報)の1セットがゲノムです。
下の図でゲノムをイメージしてみましょう。
【アドバイス】
染色体,DNA,遺伝子,ゲノムなどの用語は,生物では頻繁に使う言葉であるために,用語の意味はなんとなくわかっているような気持ちになりますが,実際に説明しようとすると正確に理解できていないことに気がつきますね。
この機会に用語の意味を説明できるようになっておきましょう。
今後も『進研ゼミ高校講座』を使って,得点を伸ばしていってくださいね。