「ネットいじめ」を防ぐために保護者ができること【第1回】

さまざまな対策が講じられているにもかかわらず、いじめに関するニュースは後をたちません。中でも、携帯やスマートフォンを使った「ネットいじめ」は、増加の一途をたどっていると言われています。ネットいじめの被害を拡大させないために、保護者ができることは何でしょうか。
第1回は、ネットいじめをめぐる現状について、情報教育の専門家であり、幅広い視野でネットいじめの問題に取り組んでいる山形大学准教授の加納寛子先生に伺いました。



<手軽>ゆえに広まる
携帯・スマホを使ったいじめ

「いじめ追跡調査2010-2012」(国立教育政策研究所)によれば、小学4年生から中学3年生までの6年間で、仲間外れ・無視・陰口といったいじめを経験した子どもは、およそ9割にのぼることがわかっています。被害経験・加害経験のまったくない子どもはそれぞれ1割程度。いじめは、誰にでも、どこの学校でも起こりうるというのが現実です。

いじめの種類として増えているのが「ネットいじめ」です。ネットいじめとは、パソコンや携帯電話、スマートフォン(スマホ)などのデジタル機器を使って、残酷な言葉や映像を送信したり、インターネット上に公開したりするなどして相手を攻撃するいじめを指します。特に最近は、小中学生にも急速に普及しつつあるスマホによって、より簡単にネットにアクセスできるようになったため、問題が広がっています。加害者側から見れば<気軽に>、少ない労力で、相手に大きなダメージを与えられますから、ネットは最適のいじめツールと言えるのです。



既読無視から始まる「外し」

たとえば、スマホ向けのアプリケーション「LINE(ライン)」でのいじめが、最近多数報告されるようになりました。仲間外れの大義名分としてよく使われるのが「既読無視」(既読スルー、KS)です。LINEはメッセージを相手が読んだかわかる「既読」表示機能がありますが、既読なのに15分以内(30分以内などさまざまな説あり)に返信しないと「既読無視」と言われ、こちらがメッセージを送ろうとしても着信拒否をされてしまうというのです。塾の授業中など、相手が返信できない時間帯をわざとねらって、友達同士のグループチャット(文字での会話)を盛り上げておき、「既読無視だから絶交ね」といってその子をグループから外すといったケースもあります。このため、既読無視と言われないよう、食事中や入浴中も携帯やスマホを手放せなくなる「即レス症候群」に陥る子どももよく見られます。

相手からのメッセージをブロックする設定は指一本で簡単にできますから、加害者は時間がたつと、その子を「外した」ことすら忘れてしまう場合があります。一方、その子はいつまでも仲間の会話に入れないばかりか、自分が締めだされたグループチャットの場は、今も自分の陰口で盛り上がっているのではないかと、疑心暗鬼に苦しむことになります。



リアルとネットのいじめは
つながっている

このようなケースが増えると、「では携帯やスマホを禁止すればいい」といった議論になりがちです。しかし、被害者を自殺にまで追い詰めるような深刻なネットいじめは、必ずといってよいほど現実でのいじめとつながっています。ネットを禁止しても、いじめは大人の目の届かない水面下に潜ってしまい、ますます陰湿化するでしょう。
また、加害者をネットから遠ざけることで、一時的にいじめが治まったとしても、その子が将来、ネット上に誹謗(ひぼう)中傷を書き散らすような大人になったのでは根本的な解決になりません。

ネットいじめが起きた場合は、ネットとリアル(現実)の両方の状況を見ながら指導を行わなければなりません。その一方で、大人がネットの特性をよく知ったうえで、ネット上での適切な読み取りや書き込みができる力=情報リテラシーやモラルを、根気よく教えていく必要があります。相手の立場に立ってものを考え、ネット上で人を傷つけない、適切な発言ができる力も、悪意の書き込みに出会ったときに冷静な対処ができる力も、リテラシーのうちです。

次回は、知っておきたいネットいじめの特徴やその背景について伺います。


プロフィール

加納寛子

加納寛子

山形大学准教授。専門は情報教育、情報社会論。著書『即レス症候群の子どもたち』(日本標準)、『ケータイ不安』(共著、日本放送出版協会)等。『現代のエスプリ526 ネットいじめ』(ぎょうせい)では、編著者として幅広い分野の専門家とともにネットいじめ問題を考察。

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