なりたい職業に見る「学習意欲と親のかかわり」


なりたい職業をもっている子、いない子。小学生であっても、進路に対する意識をはぐくむことは、学習動機→学習意欲にもつながるようです。


今回は、職業に対する意識と学習との関係について考えてみたいと思います。

みなさんは、小学生のとき、どんな職業に就きたいと考えていらっしゃいましたか。おそらく、そのとき思っていた将来とは違う道に進んだ方も多いと思います。小学生のときの職業に対する意識というものは、だいたいにおいて、とても変化しやすいものです。はたしてこの時期の子どもの職業に対する意識はどのような意味をもっているのでしょうか。まずは、データ(*)で職業に対する意識と学習との間の関係から見てみましょう。

* ここでは、2001年にベネッセ教育総研が実施した「第3回学習基本調査」のデータを取り上げます。詳しくは、チャイルド・リサーチ・ネット掲載の報告書をご覧ください。

「なりたい職業」をもっている子どもは学習に積極的

図1:「なりたい職業」の有無と学習内容への関心・意欲(小学5年生)
図2:「なりたい職業」の有無と家庭学習の取り組み方(小学5年生)

図1は学習内容に対する関心、図2は学習の取り組み方について、「なりたい職業」をもっている子どもともっていない子どもで比較したものです。

どの項目についても「なりたい職業」をもっている子どものほうが割合が高くなっています。とくに「なりたい職業」のあるなしで差が大きいのは、「英語を使って外国の人と話したり、手紙を書いたりしてみたい」(63.6%/44.2%)「授業で習ったことを自分でもっとくわしく調べる」(59.8%/39.2%)などの項目です。

このように「なりたい職業」がある子どもほど、学習に対して関心をもったり、学習に対して積極的に取り組んでいることがわかります。


こうした傾向が見られるのは、学習に積極的に取り組んでいると、いろいろなことに興味関心をもつ機会がふえて結果として職業にも関心をもつようになる面と、逆に、自分の将来に目標をもつことで学習に対して積極的になるといった面があるのだと思います。

さらに、データは省略しますが「なりたい職業」をもっている子どものほうが、学力が高いという傾向も確認できています。小学生であっても「なりたい職業」をもつことは、学習動機を明確にし、学習への関心や意欲を高めるプラスの効果があるようです。

親とよく話している子どもほど、「なりたい職業」をもっている
さて、もう1つデータを紹介したいと思います。図3は保護者とのかかわり方と、「なりたい職業」の有無の相関を見たものです。保護者と「よく話をする」「勉強をみてもらっている」子どもは、「なりたい職業」をもっている割合も高くなっています。

図3:保護者とのかかわりと「なりたい職業」をもっている子の割合(小学5年生)

保護者の子どもとのかかわり方が、進路に対する意識の形成に影響を与えていることがわかります。子どもと一緒に試行錯誤して考えたりするコミュニケーションのなかで、子どもに学習の意味や方法などだけでなく、職業や進路についての情報も伝えているのではないでしょうか。


私が小さいころは、子どもが家の手伝いをすることがあたり前でした。個人のお店や農家も多くて、子どもが親の職業を直接見たり経験する機会が多くありました。ある意味で家庭や地域社会が職業教育の一部を担っていた面があったと思います。しかし、今は環境も異なり、家庭や地域社会にそういう機能を期待するのは難しくなっています。

子どもと一緒に夢をさがす
最初に触れましたように、小学生のころは「なりたい職業」はよく変わります。したがって、「なりたい職業」が何かよりも、それがどの職業であっても、ある職業に憧れたり興味をもつことで、関心の範囲が家族や友達のことから社会まで広がり、視点の中心が「今のこと」から「自分の将来」に向けられることが重要な点だと思います。その後、いろいろな人との交流や体験を通して、自分の良さがどこにあるのか、自分は何に向いているのかがわかるようになり、希望する職業も変化し現実的になっていくのです。

小学生はそのスタート地点に立っていますので、「その職業に就いてどんなことをしたいのか」子どもの夢を一緒に楽しく聞いてあげることが大事だと思います。社会で働いている先輩としてナビゲート役となってあげてください。春休みや夏休みには博物館や動物園などが子ども向けの教室を開いています。可能であれば、子どもの興味関心を広げることができそうな場へ一緒に出かけることをお勧めします。興味関心のあることに触れるだけでなく、そこで働いている人の様子を見ておくことも、いずれ職業(社会で働くこと)を考えるうえで良い財産になります。

ぜひ、お子さまと一緒に将来の夢を見つけてみてください。それは先ほどのデータで見ましたように、お子さまの学習にとっても必ずプラスに作用すると思います。


※ベネッセ教育総研とベネッセ未来教育センターは05年4月に統合し、新名称「ベネッセ教育研究開発センター」に変わりました。

プロフィール

Benesse教育総研 山田剛

「進研ゼミ小学講座」は1980年に開講して以来、「チャレンジ」の愛称とともに全国の小学生のやる気をひきだす自宅学習教材として親しまれてきました。現在、小学生の約5人にひとりが会員という、最も利用されている自宅学習教材です。

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