子どもをかわいいと思えない……【後編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

小学6年生の女の子との二人暮しです。生活がいっぱいいっぱいで子どもがとてもかわいいと思えず乳児院に預けたこともあります。生活との両天秤で気持ちをだましだまし11年。心底憎いわけではないし、きっと、かわいいと思っているはずなのですが、だらだらとした生活態度等をとがめると「どーせ私なんか」「私なんかいらない子どもなんだ」と言う反応にうんざりして毎日けんかです。手を上げる回数も増えてきました。怒っても何も得られないとわかっていますがエスカレートしている自分が恐ろしいです。最近では「いなければいい!」「早く大きくなって出てってほしい!」と思うことも多くなりました。出口が見つかりません。(ダックス子沢山 さん)

 

【親野先生のアドバイス】

前回に引き続き、ダックス子沢山さんへのアドバイスです。

「手を上げる回数も増えてきた」とのことですが、これは絶対にやめてください。
子どもの気持ちはどんどんすさんでいきます。
子どもの心はどんどん遠くへ離れていきます。
自分は愛されていないのではないか、自分はいらない存在ではないのか、そういう思いがふくらんでいきます。

これは本当によくありません。
何一ついい結果は得られません。
子どもにとっても、親にとっても、本当に取り返しのつかない結果を招くことになります。
いくらイライラしてきても、手を上げるのは絶対にいけません。

これを予防するには、次のような方法があります。
・自分の心の動きを意識する
・積極的にストレス解消を試みる。自分なりのストレス解消法をもつ
・一人でわめき散らす
・深呼吸をする
・イライラ半分、冗談半分に怒りを小出しにする

これらについては、第82回の「子どもに対してイラつき、カッとなってしまいます」に詳しく書きましたので、ぜひ参考にしてください。


親自身の気分転換も、子どもの気分転換も大事です。
また、親子で一緒に気分転換するのもいいかもしれません。
遊園地、旅行、スポーツ、映画などもいいと思います。

以上のように、親としての一大決心をして、二度と同じことを繰り返さないようにしてください。
大きな方向転換が必要です。
でも、ここが大事ですが、方向転換してもすぐにいい変化は出てきません。
変化が出てくるには、必ず時間がかかります。
そして、それはどれくらいの時間かわかりません。
意外と早く変化が出るかもしれませんし、かなりの時間がかかるかもしれません。

この変化のない時間に耐えられなくて元の道に戻ってしまうと、また悪循環が始まってしまいます。
この変化のない時間を耐え続けて、正しい道を進み続けることが大事です。
そうすれば、必ずいい方向に行きます。

「きっと、かわいいと思っているはずなのですが」
そうです、そのとおりです。
それは絶対に間違いありません。
それでなければ、これほど悩み苦しむはずがありません。

かわいいという気持ちが十分ありながら、それが空回りしているだけです。
親子で楽しい生活を送りたいのに、さまざまな事情でそれができないでいるだけです。
仕事も大変、お金も大変、気持ちも大変、親子関係も大変、そんな状況のなかで、自分が本当に子どもをかわいいと思っているのか疑問に思えてきているだけです。

でも、大丈夫です。
子どものことをかわいいと思っているのは、間違いありません。
ただ、大変な状況のなかでその気持ちをうまく表せないでいるだけです。

あまり自分を責めすぎないでください。
大変な状況のなかで、あなたは精いっぱいがんばってきたのです。
こういう状況では、誰だってそうそううまくはいかないのです。

反省すべきことは反省しつつも、同時に自分を許すことも大事です。
自分を許し、子どもも許してやってください。
それでないと、自分を責め続けることになり、そして、それは結局子どもを責めることにもつながっていってしまいます。

あなたは精いっぱいやってきたのです。
私にはそれがわかります。
文面を見ればそれがわかります。
それはまったくしかたなかったのです。
いったい誰があなたを責められるでしょう?

ですから、反省すべきは反省し、同時に自分を許してやってください。
そして、そのうえで、一大決心をして方向転換をしてください。
強い決意で悪循環を断ち切るのです。
もう二度と同じ道を歩まないという強い決意です。
これは絶対に必要です。


子どもの寝顔を見てみてください。
子どもが生まれたときや、幼かったときのことを思い出してみてください。
そのころの写真を出して、見てみてください。
自分の手帳にはさんでおくのもいいでしょう。
どこかに飾っておくのもいいでしょう。
二人で写っている写真も出してみましょう。

そうすれば、自分が子どもをかわいいと思っている気持ちに疑いの余地がないことがわかります。
そして、その気持ちを再確認して、自分の胸いっぱいに広げましょう。
あなたは、子どもを愛しています。
子どもが宿ったときから、今の今まで、どんなにこの子のことを思ってきたでしょう。

そして、今、あなたはほんの少し空回りしているだけです。
愛する気持ちが空回りしているだけです。

親にはありがちなことです。
多かれ少なかれ、どの親にも起こることです。
ただ、あなたの場合は、大変な条件がたくさんありました。
母一人子一人、この世知辛い世の中で、ここまでくるのにどんなに大変だったことか。

でも、大丈夫です。
一大決心をして方向転換すれば、大丈夫です。
絶対良いほうに行きます。
なぜなら、あなたは、自分たちの状況に気付き、それを変えたいと思っているからです。

この気付きと意志こそがすべての始まりです。
この気付きと意志こそが、新しい生活と新しい親子関係への第一歩です。

絶対大丈夫です。
私が書いた物をときどき読み返してください。
子どもの寝顔と写真で自分の気持ちを確かめてください。
あなたは絶対大丈夫です。

正しい道を進めば、必ず良い状態になります。
親子で楽しく笑い合える幸せな毎日……。
親子で仲良くおしゃべりしたり、助け合ったりできる幸せな毎日……。
そういう毎日が必ずやってきます。
私も応援しています。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
ダックス子沢山さん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。


最後に「少子化対策」や「子育て支援」などという言葉が、マスコミをにぎわせています。
でも、現実には対策も支援もかなりお粗末な状態と言わざるを得ません。
経済的な支援も精神的な支援も、まったく不十分なのです。
ダックス子沢山さんのような親子が、世の中にどれだけいるかわかりません。

親野智可等




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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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