夢を引き寄せる4つのチカラ
期間 2005/11/9〜2005/11/15 有効回答数532人
【前編】では、子どもに人気の職業、そしてお母さんがかつて憧れた職業をそれぞれランキング形式で紹介しました。今回の【後編】では、「教育発見隊」アンケート結果やフリーアンサー形式でのご意見を交えつつ、憧れの職業を現実のものにしようとする子どもの姿勢や、努力と学力の関係を見ることで、将来の夢を夢で終わらせないためのヒントを考えてみたいと思います。
はじめに、そもそも今どきの子どもはどのくらいの割合で将来の夢を持っているのでしょうか? 「教育発見隊」アンケートで、「今、お子さまには将来の夢があると思いますか?」と聞いたところ、結果は【図1】のように、約3人に2人が「ある(ありそうだ)」と答え、5人に1人が「ない(なさそうだ)」と答えています。
【図1 今、お子さまには将来の夢があると思いますか?】

ここで気になるのは、「将来の夢を持っていない(なさそうだ)」と答えた方の割合が、上の学年になるにつれて徐々に増えている点です。小学校低学年以下では約2割に留まっていたのが、中学生以上になると3割近くまで上昇しています。これは、学年が上がるにつれて社会との関わりが増えて実現がむずかしいことを知ったり、職業を決める、選ぶということが「進路」「受験」などのより現実的なものとして迫ってくることが背景にあるのでしょう。たしかに、社会の、現実の大変さを知ることは大切なことですが、そこから目をそむけず、なりたい自分をしっかりと描いたり、その夢を実現するための手順をきちんとイメージすることが大切になってきます。
では、すでに将来の夢を持っている子どもは、どのようなことがきっかけとなったかを示したのが【図2】です。
【図2 将来の夢を持つようになったきっかけは?】
半分近くの方々が「何となく自然に」と回答されました。とはいえ、何の理由もなく特定の職業に興味を示すことはないでしょうから、ボディブローのように(?)じわじわと影響を及ぼす出来事(習い事やよく見るテレビ番組や体験など)を通じて、「自分は(も)ああなりたい」と思うようになったものと考えられます。
実現可能性は? でも、最大限のサポートを目指すお母さん
こうした子どもの希望に対して、お母さんの多くは「夢は叶わないかもしれないし、今後変わるかもしれないが、今の夢に対して賛成だし、応援する」とも考えているようです【図3-1、2】。そしてそのためには、「学力をつけさせて進学させ、夢実現のための選択肢をひろげる」ことが大切と考えている方がもっとも多く見られました。特に中学生以上の保護者のうち75%あまりが「学力」「進学」の大切さを感じているようです。
<将来の夢をもつ子どもに対する保護者の思い>
【図3-1 子どもが今持っている将来の夢に賛成ですか?】

【図3-2 その夢は叶うと思いますか?】

また、学年が低い子どもを持つ方ほど大切だと考えられている傾向が強いのは「夢につながる経験を積ませる」で、「励ましや掛け声など精神的サポート」を大切だと考える割合は、他の項目と比べると学年を問わず全体的に低い傾向が見られました【図3-3】。
しかし、子どもたちの動かない心を動かすのは、家庭での「ほめる・励ます」の繰り返しや、仕事や社会との関わりの大切さを体感させることではないでしょうか。体験させたことが、小さな自信や手ごたえ、興味へと移っていくには、身近にいる保護者の皆さんがほめたり励ましたりして反応を導き出す——これらも、やはり同等に大切なものなのです。
【図3-3 子どもの将来、夢の実現のために、保護者として考えていること】
お寄せいただいたフリーアンサーの一部を紹介します。カッコ内は子どもの学年です(以降同じ)。
- サッカー選手の夢は本当に叶うかどうかわかりません。でも、今一番好きなことはサッカーです。目標を持ってやることはよいことだと思うのでがんばってほしいです。いろいろなことを経験して本当に自分のやりたいこと、勉強したいことを見つけてもらいたいです。(小1)
- 協力してあげられることは、なんでもしてあげたい。(小3)
- まだ小学1年生なので、何よりも生きていく基本が大切。どの職業についても困らないように、基本の学力をまず身につけてほしい。現時点では、何かになりたいと言っても、まだそれに近づく手段もわからないので、途中で変更されるのも大いに結構。(小1)
そこでもう一歩進んで、子どもが抱いている夢にどう近づこうとしているのかを見てみましょう。「教育発見隊」アンケートの結果は【図4】のとおりとなりました。小学校中学年ごろまでは「準備をしていない」割合が半数を超えています。これが中学生以上になると逆転し、「準備をしている」が「準備をしていない」を上回っています。
【図4 お子さまはその夢を叶えるために何か具体的な準備をしていますか?】

具体的な例としては、「教室・運動クラブに通う」などのいわゆる習い事や、「勉強」と回答する方が多く目につきました。また、それら以外にも次のような自由回答が寄せられました。矢印の左側が就きたい職業で右側が準備していること、カッコ内は子どもの学年です。
- 寿司店→お金の計算ができるように算数をがんばっている。おこづかいを貯めている(そのお金でお店を建てるそうです)。(小1)
- エアロビクスのインストラクター→エアロビクスを始めて、まだ2年しか経っていないけど、一生懸命努力している。いろいろな発表会にも極力参加して、この夏からは選手養成クラスに入るために技能検定にも挑戦中です。(小5)
- 保育士の先生→保育園に実習に行ったり、話を聞きに行ったり・・・高校卒業後もそちらのほうに進学するつもりのようだ。(高校生)
夢を引き寄せる4つの力
ところで、夢を引き寄せる力=キャリア形成の力には、小学校段階から次の4つの能力が一般に必要だと言われています。
(1)「将来を設計する力」
親や身近な人の働く姿や様子から、自分の将来についての関心を向けることができる。また、その周りのさまざまな仕事や役割に気づくことができる。
(2)「情報を活用する力」
学校で学ぶことが、自分たちの生活と関係があることに気づいたり、情報の入手の仕方がわかる。
(3)「意思決定できる力」
いろいろな仕事のなかから、自分が興味をもついくつかを選び取ったり、その理由を友だちや周囲の人に話すことができる。
(4)「人間関係を形成する力」
自分のよさや周囲の家族、友だちのよさに気づくことができ、協力・共同して物事に取り組むことができる。
国立教育政策研究所 「児童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について」参照
こうして考えていくと、情報収集する力や職業を理解する力は、元をただせば家庭や学校で多くのコミュニケーションが成立していることや、日ごろの興味関心の高さが自分の夢を具現化することと大いにつながっていると考えられそうです。
ところで、子どもが抱く将来の職業に対する考えと、学力の間には何か関係があるのでしょうか?
——たしかに、ベネッセがこれまで行なった調査の結果(第1回子ども生活実態基本調査報告書)などから、学校の成績がよい生徒ほど、希望する職業に就くための工夫や努力をする傾向が見られます。
しかし、単にテストの成績がよかったり、希望の大学に受かればそれで夢が叶うわけではありません。大切なことは、「学習の結果としての成果」を示す「教科学力」に加えて、学校や塾での成績だけに目を奪われることなく、物事を学んでいく過程のなかで、自分自身で気づく力や見通す力、表現する力—広い意味での「学び続ける力」や「生きる力」—をしっかりと身につけることだと思います。
そしてこの力が、「結果としての教科学力」を高めることにつながるのです。
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