教育改革制度に望むもの

教育発見隊のアンケートでは、第7回、8回と連続して、現在中央教育審議会(中教審)でなされている義務教育に関するさまざまな議論について、みなさんのご意見を具体的にお聞きしています。
前回は「国の義務教育費の負担」「授業」「学習指導」「先生に期待すること」等を中心に聞いてきましたが、今回は「学校教育制度」「義務教育の学校評価」「あなたが校長ならどうする?」といった視点でご回答いただきました。

学校を自由に選択したい
学校選択制度・学校評価制度・教員免許更新制度を求める声
教育とは「共に育む」機会
もしも校長になったなら

 
学校を自由に選択したい

学校教育制度に関連し、「学校を自由に選択できる(学校選択制)」や、「不登校の子どもたちのためのフリースクールなどを義務教育として認める」ことへの「賛成」「まあ賛成」の意見は、いずれも7割を超えるものでした。
ここで、「学校選択制」について少し考えてみましょう。

「学校選択制」とは、区市町村内の全ての保護者が、希望により自分の子どもの就学する学校を自由に選べる制度です。国レベルでは、「規制緩和の推進に関する意見(1996年12月/行政改革委員会)」「教育改革国民会議報告〜教育を変える17の提言〜(2000年12月)」「規制改革の推進に関する第一次答申(2001年12月/総合規制改革会議)」などにより、学校の選択機会の拡大を提言してきました。旧文部省が行政改革委員会の提言を受ける形で、1997年に通学区域の弾力化を打ち出したことにより、学校選択制が一気に浸透する契機になりました。

2000年に東京都品川区が教育改革「プラン21」を策定しました。品川区教育委員会が学校選択制の導入を発表するまでは、過疎地の小規模校維持、通学路の安全問題や交通の便、いじめ被害者や不登校生の受け入れなど限定的な学校選択制にとどまっていました。
しかし、品川区は、2000年から区立小学校の40校を4ブロックに分け、自由に選択できるようにしました。翌2001年には、区立中学校全18校を自由に選択できるようにしました。品川区の施策は、これまでの学校選択制と比べ大々的であること、東京都という大都市での実施ということから、マスコミなどで多くとりあげられました。
※品川の教育改革「プラン21」

その後、2001年には東京都日野市、2003年には埼玉県宮代町と川口市が導入するなど、現在小学校段階で学校選択制を導入しているのは227自治体(8.8%)、中学校段階で学校選択制を導入しているのは161自治体(11.1%)にのぼります。
※文部科学省:2004年11月1日現在の全国の自治体(市町村、学校組合)調査より

 
学校選択制度・学校評価制度・教員免許更新制度を求める声

今回の「教育発見隊」のみなさんの回答から、子どもたちに受けさせたい教育を実践してくれる学校を選びたい、または評価の高い先生が多く在籍する学校に通わせたい、安心できる学校を選びたい、学校間でもっと特色を競ってほしいといった希望や願い、そして期待を感じました。

アンケートの中で「学校の先生や指導に対するご意見」をフリーに書いていただいた内容を紹介します。

  • 熱心な先生とそうでない先生との差がありすぎる。感情的で子どもの心を傷つけることばを平気で話す先生がいるなど、安心して子どもを任せられない。

  • 担任の先生の良し悪しで子どもの成長が決まるのが心配。ある先生は、授業では子どもたちの顔を見ないで、ただ教科書を見て授業をすすめていた。クラスに何か問題が発生しても知らん振りが多かったその先生は、別の小学校の教頭先生になられたことを聞き、あきれた。

  • 公立小学校でも授業の内容に差がありすぎる。総合的な学習の時間でも遊んでいる学校と、中学受験対策をしている学校があるのはどうかと思う。私には4人の子どもがいるが、本当に尊敬できた先生は3人だけ・・・・・。

学校ごとでの教育内容の違い、担任の先生による授業内容や学級運営の方針の違いに、戸惑っている様子が伺えます。もう少し、フリーアンサーから学校の先生へのご意見を見てみましょう。


  • 学校の先生の当たり外れは、毎年保護者の間で話題になります。事実子どもに対する反応が違います。教師としての資質を重視して採用してほしい。

  • 放課後に丸つけをしたくないので、宿題は出さないと平気で発言する教師がいる。びっくりした。

  • 1クラス30名いる子どもたちに、同じ接し方で信頼関係を結ぶには無理があるように思います。同じ言葉を伝えても子どもたちはそれぞれ受け取り方も反応も違う。目に付きやすい子どもの反応だけを見て物事を判断するようなサラリーマン先生はいりません。教員免許の取得をする時には、発達心理学や教育心理学を学んだはず。自分の心を子どもたちの心に重ね合わせる、思いやる気持ちを思い出してほしい。

  • 信じられないことだが、子ども相手にえこひいきをしたり、気に入らない子どもに意地悪をする先生がいる。これは何とかしてほしい。

  • 小学生の子どもがいます。先生が厳しいことはいいのですが、感情的に怒るだけで生徒の言葉を聞こうとしない先生が多く、子どもからは何が良くて何が悪いのか分からなくなる、と聞きます。先生の言うことをよく聞く子の言うことが正しく、それ以外の子は悪いと決めつける傾向が強まっていると感じます。そうでない先生もいらっしゃいますが、子どもと懸命に関わる先生が、他の先生から煙たがれ、露骨に先生間で外されていることを子どもたちは感じています。

こうした皆さんのご意見から、信頼度の低い学校や、力量の乏しい先生がいることに対する強い不満が伺えます。また、この不満を解消するためには、先生や学校の教育活動を客観的に評価することや、教員免許の更新制導入も必要である、との意見も透けて見えてきます。



「民間企業出身の校長導入」や「優れた教育実践を行った教員優遇制度導入」「教員免許の更新制度導入」「保護者・地域住民が学校、教員を評価」することには、「賛成」「まあ賛成」が6割から9割を占めています。逆に、「反対」「まあ反対」はごくごく少数にとどまっています。いわば、「教育正常化のために少々の改革も必要だ」とする声が少なからずあるということです。

評価と情報公開(説明責任)が、今、学校に求められています。評価には自己評価と外部評価とがありますが、一般的には外部評価のほうが客観的でかつ説得力があると考えられているようです。つまり、自校の教師ではなく、保護者や地域住民などによる評価です。評価の対象は、学校と個々の教員です。とはいっても、評価そのものが最終目標ではなく、より良い学校をつくるための改善活動を行うことが大切です。学校の場合では具体的な教育活動になるでしょうし、教員の場合は具体的な指導になるでしょう。約6割の皆さんが教員免許の更新制度導入へ賛成していることからも、特に教員に対する客観的な評価導入への期待が高いことが伺えます。



 
教育とは「共に育む」機会

「育み」の舞台のひとつである学校は、教師と保護者が共同して「つくって」いくものであるはずです。「教育」はまさに「共育」であるといわれます。
であれば、保護者も必要な知識を身につけ、真剣に教育を考え、発言することが求められます。最近、一部の地域や学校で導入され始めている「学校選択制度」や「学校評価」、「民間出身の校長」などの教育施策はどの地域や学校においてもベストプランなのでしょうか。
ここでは、「学校選択制」を例にそのメリットとデメリットを考えてみたいと思います。

(1) 学校選択制のメリット

  • 学校間で、競争意識が生まれ、教育実践に対する工夫や先生間での足並みが揃い、学校のめざす「教育目標」「特色ある教育活動」などが保護者にとってわかりやすくなってくる
  • 地域から選ばれなかった学校は、教育実践の工夫や学校のPR活動に努め、ひいては授業の充実、活性化した学校へと変わっていく
  • 教員個々の活動の成果が、学校の教育活動成果につながってくるため、個々の先生が緊張感をもち、より高いレベルでの教育活動が期待できる
  • 頑張っている先生や学校がきちんと評価される


(2)学校選択制のデメリット

  • 学校間格差が拡大するおそれがある
  • 特色ある実践を見出し積極的な学校選択をするというより、あの学校には通わせたくないという消極的な理由で選択してしまう
  • 学校の「個性化」の裏で、評価に晒されることで学校では成し遂げられることを選択し、「均質化」した無難な教育活動になりがちになる
  • 数字などで示しやすい「教育成果」向上にシフトしがちになる
    (例えば、私立中学合格者数、公立中高一貫校合格者数などを競う)

多くの人たちが望む「サービスの向上」のための「競争」をスタートさせることで、成果も十分に期待できる一方で、教育が歪んだ方向に向かわないとも限りません。数字で見えやすい一部の「成果」を前面に出すために、他の子どもを切り捨てていくという、最悪のシナリオを想定することも必要です。さらに、自宅から遠い学校へ通う際には、これまで以上に子どもの安全の確保を意識しなければならないでしょう。しかし、学校選択制を導入しても、ひとつの学校にしか通えない子どもたちが全国には少なからずいますし、そのような地域では学校選択制を導入することによる効果はほとんど期待できないでしょう。

 
もしも校長になったなら

この【詳報版】レポートでは、「学校選択制」「教員免許の更新制度導入」などの賛成度が高かった施策について考えてきました。
さらに、「先生の指導」に関しても、様々な感想やご意見を寄せていただきました。ありがとうございます。

学校や先生に対する問題意識や、教育に対する危機感は多くの保護者の方々がもたれています。
加えて、現状の学校制度への改革を望む声も多く寄せていただきました。
「これからの教育がよくなるために、あなたが校長なら何を手掛けますか」との質問にも、多くの回答をいただいています。これは、いわば教育発見隊のみなさんの教育ビジョンを伺うもの。
以下、ご参照ください。


「これからの教育がよくなるために、あなたが校長なら何を手掛けますか」

  • 複数担任制を取り入れたい 30人以上の学級には必ず補助教員を配置する学校にする。

  • 教員の適性試験を定期的に実施する。

  • 保護者に限らず、地域の方も参加できる授業参観、子どもと保護者も先生を評価できるシステムを作り、学校給食、学校農園、調理実習、総合学習では地域の方に先生になってもらう。

  • 道徳の授業を復活させ、総合的な学習の時間を減らす。

  • 学校教員の民間企業体験の制度を導入したい。お金に関する知識、正しい性に関する教育も導入したい。また優秀な先生の処遇を変えていく。

  • 地域の方々に授業に関わってもらう(時間講師など)。例えば土曜日の寺子屋や総合的な学習の時間。普段の授業でも、母親や地域の人が授業をサポートしていく体制を作る。

  • 低学年から、算数・国語(英語)は、習熟度別授業にします。分かる子にとっては授業がつまらない。分からない子には、もっと親切に丁寧な学習ができる。

  • 親を集めて教室を開く。特にいまの30歳代の若い親を教育したい。勝手気ままで、協調性に欠ける点が顕著。

  • 学校の知恵ともいえる図書館の改革。蔵書を増やし、先生方も教材研究のできるアカデミックセンターの設置など、子どもたちがホッとできる読書スペースも設けたい。

・・・・など、なるほど・・・と唸るもの、ユニークなご提案もありました。既に一部の施策は実行されているものもあるようです。

今回、2度にわたりご回答を寄せていただきましたが、学校とともに教育の機会を設け、子どもたちの未来を育んでいかなければならない、との意見もいただきました。

  • 学校が一般企業と同様に学校評価や、授業評価など目の前の効果を期待されるようになると、真の教育は成されないと思う。教育の結果はその生徒が大人になり、親になり、そのときにやっと出てくることがある。学校が生徒を「お客様」と捉え、単なる学力を身に付けるサービス提供機関になるなら、それは塾と何ら変わりはなく、学校として存在する理由はない。それを、今の保護者とともに考えたい。

教育のあるべき姿を共有することから始め、保護者は学校での教育活動に関する要望を伝え、先生は家庭や地域での教育に関する要望を伝える、というような教育全体に関する前向きな意見交換が必要でしょう。「学校」とはどうあるべきなのか、を考え続けることが原点です。ただ単に、自分の子どもにだけフィットした教育を学校教育に求めるというのは、少し身勝手なように思います。いま、お子さまのいるご家庭では、学校とともに「育み」の機会をどのようにすべきか、家庭できることは何か、などをじっくり考えることも重要ではないでしょうか。

もしかすると、「教育改革」はいつの時代にも必要なのかもしれません。しかし改革は、安易な意識であっては決して前には進みません。
改革や新しい制度が教育の質を保証してくれるのではなく、家庭・地域・そして学校が一体にならないと成功し得ないと思われます。じっくりと、しっかりと家庭・地域・そして学校の「育み」のあり方を考えていかねばならないと思われます。
みなさんは、どうお考えでしょうか。

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