【ヨーロッパ,ロシア連邦と周辺諸国】混合農業と地中海式農業の違いについて
混合農業と地中海式農業の違いがイマイチよく分かりません。
進研ゼミからの回答
こんにちは。いただいた地理の質問について、さっそく回答します。
【質問の確認】
混合農業と地中海式農業の違いがイマイチよく分かりません。
【解説】
『エンカレッジ』に載っているように、ヨーロッパの農牧業は畑作と牧畜との組み合わせが基本になっています。どんな畑作とどんな牧畜をどのように組み合わせるかは、その地域の自然条件や社会条件によって異なります。ヨーロッパの農牧業が発展していく過程をたどりながら、地中海式農業と混合農業の違いを説明していくことにしましょう。
10~11世紀頃までのヨーロッパでは二圃式農業が行われていました。
「圃(ほ)」というのは「圃場」、つまり耕地のことを意味しています。二圃式農業は古代の地中海沿岸ではじまりました。
耕地を2つに分け、休閑地では羊などの家畜を飼って地力を回復させ、もう1つの耕地では(夏は雨が少ないため)冬に小麦を育てていました。
翌年になると、前年の休閑地だった耕地で小麦を育て、前年に小麦を育てた耕地は休閑にするというように、2つの耕地を交替で利用していました。
※ちなみに、「休閑(きゅうかん)」というのは耕地を休ませて地力を回復させることです。
この二圃式農業が北西ヨーロッパに広がると、休閑地での牧畜には牛・豚などの家畜も加わり、降水があって耕作に適する夏に大麦・ライ麦なども育てるようになりました。もちろん2つの耕地を交替で利用することは、地中海沿岸におけるのと同様です。
その後、二圃式農業が発展し,耕地を3つに分けて夏作・冬作・休閑を繰り返す三圃式農業が行われるようになりました。耕地を交替する順序は「休閑 →冬作 →夏作」とするのが一般的で、休閑地では牧畜を行います。
ある耕地で牛・豚・羊などの牧畜をした翌年は、そこに冬作で小麦をつくり、翌々年には夏作で大麦などをつくるといった具合で耕地の利用を一巡させていたのです。
19世紀初めになると、これがさらに発展して、休閑地をなくし、牧畜をしながら、自然条件にあった色々な作物を輪作する輪栽式農業(輪栽式混合農業とも言う)にかわりました。「牧草などの栽培(ここで牧畜もする)→冬作 →根菜類(かぶ・テンサイなど)の栽培 →夏作」というように耕地を交替します。
このような呼び方は存在しないのですが、言ってみれば“四圃式”農業といった様子で、これが今日の混合農業のもとになっています。
今日の地中海式農業は、ほぼ昔の二圃式農業と同じで、乾燥に強い作物(ぶどう・オリーブ・コルクがしなど)の栽培と羊などの飼育、冬の小麦栽培を組み合わせて行います。地中海沿岸地域は夏の降水量が少ないため、二圃式農業から発展しなかったのです。
これに対して、北西ヨーロッパなどでは年間を通して安定的な降水があるため、二圃式農業から三圃式農業などをへて今日の混合農業へと発展しました。特色としては、とうもろこし・牧草などの飼料作物と穀物を輪作し、肉牛・豚などの家畜を飼育する点が挙げられます。
混合農業は地中海式農業に比べ、畑作で栽培する作物が多様であり、穀物に加えて飼料作物などの栽培も増えたことで、冬でも飼料不足にならずに家畜を育てられるのです。
今日、それぞれの農業が実際に行われている地域は、地中海式農業が地中海沿岸の地中海性気候の地域を中心とするのに対し、混合農業はドイツやフランスなどの中部ヨーロッパが中心となっていますよ。
【アドバイス】
輪栽式農業から混合農業が発展したころに、同じく輪栽式農業から分化した農業として、土地がやせて気候が冷涼な北西ヨーロッパでは酪農が盛んになりました。大都市近郊やオランダの砂丘地帯では園芸農業が盛んになりました。これらは、自然条件(気候・土壌など)や社会条件(都市の発達や技術・交通の発展など)に応じて、より適合した農牧業に特化していったのだと理解することができますね。
それでは、これで回答を終わります。
学習していて疑問点や不明点が出てきたら、また質問してくださいね。これからも『エンカレッジ』を活用して、地理の学習をがんばりましょう。