単振動の力学的エネルギー保存を表す式でmgh をつけない場合がある理由は?【万有引力】
鉛直ばね振り子の単振動における力学的エネルギー保存の式を立てる際に,解説によって,「重力による位置エネルギー mgh 」をつける場合とつけない場合があります。どうしてですか? また,どのようなときにmgh をつけないのですか?
進研ゼミからの回答
こんにちは。頑張って勉強に取り組んでいますね。
いただいた質問について,さっそく回答させていただきます。
【質問内容】
≪単振動の力学的エネルギー保存を表す式で,mgh をつけない場合があるのはどうしてですか?≫
鉛直ばね振り子の単振動における力学的エネルギー保存の式を立てる際に,解説によって,「重力による位置エネルギー mgh 」をつける場合とつけない場合があります。どうしてですか? また,どのようなときに mgh をつけないのですか?
という質問ですね。
【質問への回答】
鉛直ばね振り子の単振動において力学的エネルギーを考える際は,位置エネルギーの基準の取り方によって,重力による位置エネルギー mgh が式に現れない場合があるのです。ここで,基準の取り方による違いと,なぜ mgh の項が現れないのかについて,詳細に見ていきましょう。
●まず,力学的エネルギーの定義を確認しておきましょう
カ学的エネルギーの定義は,
(力学的エネルギー)=(運動エネルギー)+(位置エネルギー)
でしたね。
また,鉛直ばね振り子では,位置エネルギーは,
(位置エネルギー)=(重力による位置エネルギー)+(ばねの弾性力による位置エネルギー)
の2種類の位置エネルギーの和となります。
●次に,具体的に位置エネルギーを式に表してみましょう
力のつりあいの位置から X 変位した位置(点Q)と,力のつりあいの位置(点O)において,
(重力による位置エネルギー)+(ばねの弾性力による位置エネルギー)
を数式に表してみます。このとき,重力による位置エネルギーの基準をばねの自然長の位置とします。
このことから,おもりの運動はばねの弾性力と重力の合力を復元力とした単振動で,③式はその合力による位置エネルギーとみなすことができるのです。このときすでに合力として重力は考慮されているため,重力による位置エネルギー mgh は式に出てこないというわけなのです。
以上から,鉛直ばね振り子の単振動では,位置エネルギーの基準を力のつりあいの位置にとり,その位置からの変位を用いれば,さらに重力による位置エネルギー mgh をつける必要はないことがわかります。
【学習アドバイス】
単振動における位置エネルギーを考えるときは,位置エネルギーの基準をどこに取っているのかを常に意識しましょう。基準が力のつりあいの位置であれば,重力と弾性力の合力による位置エネルギーを考えていることになり, mgh の項が不要となることを知っておきましょう。