力学的エネルギーの保存と運動量保存の違いとは
小球A,Bが衝突後に一体となって運動する問題で,自分は力学的エネルギー保存だと思い,
"1" /"2" mv02= "1" /"2" (M+m ) V 2
という式を立てたのですが,解答を見ると運動量保存の法則が使われていて,間違いでした。
力学的エネルギー保存の法則と,運動量保存の法則は,どのように違って,それぞれはどんなときに使えばよいのかを教えてください。
進研ゼミからの回答
【質問内容】
《力学的エネルギーの保存と、運動量保存の違いがよくわかりません。》
【質問への回答】
この問題の場合,水平な一直線上の衝突ですから,水平方向に外力ははたらいていませんが,衝突前後でA,Bそれぞれの運動量は変化しています。(運動量の変化)=(力積)ですから,AとBは力を及ぼしあっていることがわかります。
AとBが及ぼしあっている力は内力ですから,全体としての運動量は保存されますが,衝突の際に音や熱といった力学的エネルギー以外のエネルギーとして失われるため,力学的エネルギーは保存されません。
また,一般的には物理の公式・法則には,それぞれ成り立つ条件があることに注意しましょう。
問題を解く際には,問題文から条件を読みとって,公式・法則が成り立つかどうかを判断することが必要です。
まず,力学的エネルギー保存の法則について,説明しましょう。
保存力(重力,弾性力など)以外の力,すなわち非保存力がはたらいていないか,はたらいていてもその力のする仕事が0のときには,力学的エネルギー保存の法則が成り立つ。
保存力という言葉が難しいかもしれませんが,力学では,重力,弾性力,万有引力のことになります。
これは言い換えると,
保存力(重力,弾性力など)以外の力,すなわち非保存力がはたらいていて,その力が仕事をするときには,力学的エネルギーは保存されない。
ということになります。
次に,運動量保存の法則ですが,
物体系が内力を及ぼしあうだけで外力を受けていないとき,全体の運動量の和は一定に保たれる。
ということになります。
【学習アドバイス】
ただし,衝突の場合では例外があります。
反発係数e=1の弾性衝突のときは,衝突によって力学的エネルギーは失われず,保存されます。
この問題では,衝突後ー体となるので,e=0の完全非弾性衝突になり,力学的エネルギー保存の法則は成り立ちません。