【遺伝子の発現】一遺伝子一酵素説の問題の解き方がわかりません。
一遺伝子一酵素説の問題で,突然変異株のどの遺伝子に変異が起こっているか,どうやって考えて解いたらよいのかわかりません。
進研ゼミからの回答
こんにちは。さっそく質問に回答しますね。
【質問内容】
【問題】
次の文章を読み,各問いに答えよ。
アカパンカビの野生株は糖と無機塩類,ビタミンを加えただけの(ア)培地で生育できる。
(イ)とテータムは,この培地にアルギニンを与えないと生育できない突然変異株を3種類(変異株1~3)見つけ,これらを用いた実験の結果から,「1つの遺伝子は特定の1つの(ウ)の合成を支配する」という一遺伝子ー (ウ)説を提唱した。
(ア)培地に各アミノ酸を添加して各変異株を培養したときに得られた結果を次に示した。
なお,アルギニンの合成過程は次の図のようになっており,アミノ酸1.2はシトルリン,オルニチンのいずれかである。また,各変異株では遺伝子ACのいずれか1つに変異が起こっている。
(結果)
変異株1:アルギニンを与えると生育するが,シトルリンやオルニチンを与えても生育しない。
変異株2:アルギニンかシトルリンを与えれば生育するが,オルニチンを与えても生育しない。
変異株3:アルギニン,シトルリン,オルニチンのいずれかを与えれば生育する。
問1 文章中の空欄に当てはまる適当な語句を答えよ。
ア( 最小 ) イ( ビードル ) ウ( 酵素 )
問2 図中のアミノ酸1,2は,それぞれシトルリン,オルニチンのどちらか答えよ。
アミノ酸1( オルニチン ) アミノ酸2( シトルリン )
問3 変異株1~3では,それぞれどの遺伝子が変異しているか,記号で答えよ。
変異株( C ) 変異株2( B ) 変異株3( A )
-遺伝子-酵素説の問題で,突然変異株のどの遺伝子に変異が起こっているかを,どのように考えて解いたらよいかがわからない,というご質問ですね。
【質問への回答】
-遺伝子-酵素説は,アカパンカビの突然変異株の実験結果から,ビードルとテータムが提唱した
「1つの遺伝子は特定の1つの酵素の合成を支配している」という説です。
アカパンカビの野生株は,最少培地で自ら生育に必要なアミノ酸(オルニチン・シトルリン・アルギニン)を前駆物質から合成することで生育できます。
これに対して,突然変異株は,最少培地に特定のアミノ酸を加えないと生育することができないことから,いずれかのアミノ酸を合成する酵素が機能していないと考えられます。
この突然変異株は次の3つのグループに分けることができます。
Ⅰ型…最少培地にオルニチンか,シトルリンか,アルギニンを加えれば生育できる。
Ⅱ型…最少培地にシトルリンか,アルギニンを加えれば生育できるが,オルニチンを加えても生育できない。
Ⅲ型…最少培地にアルギニンを加えれば生育できるが,オルニチンやシトルリンを加えても生育できない。
この結果をまとめると、次の表のようになります。
この結果からアカパンカビの野生株と突然変異株Ⅰ~Ⅲ型のアミノ酸合成反応の過程は次のようになります。
Ⅰ型は,前駆物質をオルニチンに変える酵素アをもたない変異株であり,
これは,酵素アの合成にはたらく遺伝子Aに変異が起こっていることによります。
同様に,Ⅱ型はオルニチンをシトルリンに変える酵素イをもたない変異株で,
酵素イの合成にはたらく遺伝子Bに変異が起こっていることによります。
また,Ⅲ型はシトルリンをアルギニンに変える酵素ウをもたない変異株で,
酵素ウの合成にはたらく遺伝子Cに変異が起こっていることによります。
以上の内容を参考に,この問題の問1と問2を考えましょう。
問3の変異株1は,アルギニンを与えると生育することから,
遺伝子A,遺伝子B,遺伝子Cのどれかに変異が起こっていることがわかります。
ただし,シトルリンやオルニチンを加えても生育しないことから,
シトルリンをアルギニンに変える酵素が合成されていないと分析できます。
したがって,変異したのは遺伝子Cです。
変異株2や変異株3についても同じように分析しましょう。
なお,このような問題では,アミノ酸合成の過程を分析する必要がありますが,上記の表を見てもわかるように,
加えたときに生育する株が多い物質(表ではアルギニン)ほど,合成過程の後の方の物質ということになることを理解しておきましょう。
【学習アドバイス】
実際の問題においても,問題文や実験結果からアミノ酸合成の過程を分析し,どの過程で遺伝子に異常が起こり,酵素が合成されなかったのかを正しく分析できるようになっておきましょう。簡単な図を描いて考えるのもよい方法です。
これからも進研ゼミで勉強を頑張ってください!