勉強を習慣化させるために保護者のかたができるサポートは?AI時代に必要な力から考える 勉強を習慣化させるために保護者のかたができるサポートは?AI時代に必要な力から考える

2023.4.24

勉強を習慣化させるために保護者のかたができるサポートは?AI時代に必要な力から考える

これからの社会は、より急激に、複雑で予測不可能な変化をしていくと言われています。そうした世の中を生きていく子どもたちは、想定外の困難にぶつかってもそれを乗り越え、自分が目指す目標に向かい、他者と協力して問題を解決したり、新しい価値を創造したりすることが求められています。それには、「自発的に学び続ける姿勢」が必要です。今回は、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が行った調査から、お子さまが自発的に学ぶ姿勢を身に付けるために、保護者ができるサポートについてご紹介します。

はじめに 変化の時代を生き抜くには、「何を学ぶか」よりも「なぜ学ぶか」と「どう学ぶか」

いま、AIチャットボット「ChatGPT」が注目を集めています。学習したデータをもとに、質問に対して適切な回答を提示するのはもちろん、論文作成や翻訳等も可能で、世界の大学で議論の的になっています。今後、そういったAI技術のさらなる進化によって、過去の膨大な知識・データの処理や応用といった作業の多くは、AIが担うようになるという予測もあります。
また、社会が変化するスピードがさらに速まり、いま身につける知識や技術が将来も役に立つとは限らない時代になるかもしれません。知識や技能を身につけるだけの勉強は、重要ではなくなりつつあるのです。

「なぜ学ぶか」を考え、自分が大切にする価値に気付き学ぶ動機を高めたり、「どう学ぶか」を考え、知識や技能の獲得や課題解決のプロセスを自ら工夫したりすることが非常に重要な時代になっています。つまり、「何を学ぶか」ではなく、「なぜ学ぶか」「どう学ぶか」が大事なのです。そして、自主的に「なぜ学ぶか」と「どう学ぶか」を考える姿勢は、子ども時代から習慣化することで、将来大きな力になります。

保護者のかたの役割 キーワードは「安全基地」「動機づけ」「メタ認知」

では、そのような力を身につけるためにどうすればよいでしょうか。保護者ができることは、大きく3つあります。

1.お子さまの「安全基地」になる

一つ目は、子どもにとって保護者が「安全基地」であることです。特に乳幼児期の子どもは、いろいろなものに興味を持ち、動き回り、触れ、口に入れるなどの探索行動を行います。探索行動ができるのは、保護者との愛着(特別な情緒的な結びつき、信頼関係)が成立していて、いざとなったら保護者が守ってくれるという安心感があるからです。ですから、これからの時代に必要な力を身につけるには、乳幼児期からの保護者のかかわりが非常に大切です。

小学生以降は、自立の心が芽生えて反抗期を迎えると保護者と対立することがあります。しかし、心の中では保護者が好きで、失敗しても自分を守ってくれると信じていれば、新しいことに挑戦することができます。また、悩んだり、困難なことがあったりした時に、保護者が相談にのって応援してくれるという安心感も大切です。

そのことは、東京大学社会科学研究所と株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所が2015年から行っている調査のデータにも表れています。「勉強で悩んだときに保護者が相談にのってくれる」という項目で「あてはまる(相談に乗ってくれる)」と答えた子どもは、「あてはまらない(相談に乗ってくれない)」と答えた子どもに比べて、「難しいことや新しいことにいつも挑戦したい」と思っている割合が高い傾向が見られます。

(図1) チャレンジ意欲が高い子は、勉強の悩み相談に保護者が乗ってくれる傾向

チャレンジ意欲が高い子は、勉強の悩み相談に保護者が乗ってくれる傾向

※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2022」
※回答は、小学4年生から高校3年生までの子ども8,682名

2.「動機づけ」をサポートする

保護者の役割の二つ目は、勉強に前向きになれるような「動機づけ」をすることです。
友達と遊ぶ、ゲームをする、動画を見るなど、子どもの周りには楽しいことがたくさんあり、勉強はつい後回しにしてしまいがちです。ただでさえ後ろ向きになりがちな上に、なぜ勉強するのかわからないまま、暗記やドリルをひたすらこなすような勉強をさせ続ければ、子どもは勉強することを苦痛に感じてしまいます。

そうならないために、幼少期から子どもの知的好奇心を大切にし、本人が「やりたい!」と思うことをサポートする姿勢を持ちましょう。例えば、ダンスが好きな子どもには「どんなところが面白いの?」「活動を通して何を学んだの?」などと、経験から学んだことを言葉にできるように声がけしてみてください。そうした働きかけを続けると、やがて勉強についても「勉強することが自分にとってどんな意味があり、将来どのように役立つのかな」と子ども自身が考えるようになっていきます。

子どもだけではありません。保護者自身も自分の興味関心に応じて学び続けることが大切です。年齢に関係なく学びに向かう親の様子を身近で見聞きすることで、子どもも勉強することの楽しさや大切さ、将来とのつながりを感じることができます。実際、調査データからも、保護者が「勉強の意味や大切さを伝えてくれる」と回答している子どもは、勉強が「好き」と答える割合が高い傾向が見られます。「なぜ学ぶのか」を考えることは、勉強する意欲の原動力となるのです。

(図2) 勉強が好きな子は、保護者が勉強の意義や大切さを伝えてくれる傾向

勉強が好きな子は、保護者が勉強の意義や大切さを伝えてくれる傾向

※出典:同上

3.「メタ認知」ができるようサポートする

保護者の役割の3つめは、子どもの「メタ認知」を育てることです。「メタ認知」とは、自分を客観的にとらえる力のことです。例えば、勉強しても思った通りの結果が出ないときに、何が悪いのかを冷静に考えて、悪い部分を修正していける力が身につくと、学習成果を格段に高めることができます。メタ認知を育てるためには、以下のようなことを通して、自分に合った勉強方法を考えるような経験が必要です。

・目標を立てて、学習計画を作る【プランニング】
・立てた計画が守れているかをチェックする【モニタリング】
・学習がうまくいくように学習方法を工夫する【自己調整】

これらの力を身につけるためには、自分の学習のやり方について自分で決めて実行し、それをふりかえることが大切です。「何を・いつ・どのくらい・何を使って」勉強するか、その結果「うまくいったこと・うまくいかなかったこと」「うまくいかなかったところをどう直すか」といったことを、子ども自身が考え、納得してやってみるように促せると理想的です。子どもが小さいうちは、保護者がヒントを混ぜながら子どもに問いかけてもよいでしょう。

実際、保護者が「勉強の計画の立て方を教えてくれる」と回答している子どもは、勉強が「上手な勉強の仕方がわからない」と答える割合が低いことが、調査データからも明らかになっています。つまり、計画の立て方などを保護者が子どもと一緒に考えられると、勉強の仕方も身につけやすくなると言えます。このサポートは子どもが小さいうちだけでなく、中学生や高校生になってからでも有効です。子ども自身が考えてメタ認知が高められるような働きかけをしていきたいですね。

(図3) 上手な勉強の仕方が分かる子は、保護者が学習計画の立て方を教えてくれる傾向

上手な勉強の仕方が分かる子は、保護者が学習計画の立て方を教えてくれる傾向

※出典:同上

学びと勉強を習慣化するための、保護者の具体的なサポートは?

学びと勉強を習慣化するための、保護者の具体的なサポートは?

ここまでお話してきたことをふまえ、子どもが前向きに勉強に向かう習慣をつけるために、保護者のかたにお願いしたい4つのポイントをまとめました。

① 子どもが自分から進んで勉強することはなかなか難しい、という前提に立つ

勉強しない、できていないからといって一方的に叱ったり、指示をして強制的にやらせたりしてしまうと、その勉強は長続きせず、期待通りの効果も得られない可能性が高いです。ご自身の学童期を思い出していただけたらと思うのですが、自ら進んで机に向かい、勉強に長時間集中できる子どもはほとんどいません。調査データを見ても、「人に言われなくても自分から勉強する」と答える子どもは57.5%で、4割以上の子どもが、自分からは進んで勉強できていないのが実状です。まずは、子どもが勉強しようとしないことはよくあることと捉え、「勉強習慣を早く身に付けるべき」という考えにとらわれすぎないように意識しましょう。

② 最初は小さいことでいいので、自分で考えて決めさせる

子ども自身も、勉強はしないよりする方がいいとは思っているはずです。その思いを引き出し、自ら勉強する姿勢に結びつくきっかけを作ります。例えば、学習計画を自分で考え、決める体験を積み重ねるようにしましょう。まずは小さいことで構いません。何を、どれくらいの時間、どういう順番で行うかを、最初は1日単位で考え、子ども自身が決めるようにします。1日単位でコントロールできるようになったら、計画の単位を1週間、1か月と延ばしていきます。

途中、計画通りに進まないこともあると思います。その際の声かけは「勉強しなさい!」ではなく、「いつ勉強する?」「何を勉強する?」「どれくらいやってみる」などと問いかけるように声をかけると、子どもの自主的な姿勢を尊重しながら勉強を促すことができます。

② 決めたことを「見える化」できるようにする

子どもが考えて決めたことは、文字に書くなどして「見える化」しましょう。大人でも、思いついたアイデアや会議で話し合ったことはノートやデジタル端末に記録する人が多いですが、それと同じです。書いたことが目につけば「そうだ、がんばろう」と思えますし、考えたことを「見える化」する習慣をつけておくと、将来にわたって活用できるプランニング能力を高めたり、あとで振り返りやすくなることから、モニタリングの力を鍛えたりすることにつながります。保護者は、お子さまと一緒にカレンダーに書き込んだり、壁に目標を書いて貼ったりして、子ども自身が「見える化」する際のサポートをしていただきたいと思います。

③ 定期的に振り返るくせをつける

1日の終わりに、今日の自分は何ができて、何ができなかったのかを子ども自身が振り返れるようにしましょう。1週間や1か月など日にちをまたぐ目標を立てた場合は、ときどきでよいので「できているか」一緒に振り返ってみてください。たとえうまくいっていなくても子どもを責めずに、何が原因なのかを考えるように促します。過ぎたことを責めるよりも、次に同じことをしないようにどうすればよいのかを考え実行させることが大事です。
子どもが小さいうちは、自分だけで振り返ることが難しいこともあります。必要に応じて保護者の意見を伝えることも、子どものメタ認知の向上に役立ちます。また、少しでもできたことがあったり、結果が悪くても努力していたりした時は、大げさなくらいにほめましょう。子どもに対する保護者の前向きな評価は、勉強への動機づけにつながり、やる気アップにつながります。

自分で考えて行動する力は一生もの

子ども自身が「なぜ勉強するのか」などと学びについて考えながら行動する経験は、一生ものの力につながります。最初にお話ししたように、これからの時代はいかに新しい価値をつくれるかがとても大事です。そのためには、言われたことをこなすだけではなく、自分なりに考え、失敗を恐れず新しいことに挑戦してそこから学んだり、試行錯誤しながら物事を組み立てていったりする経験を子ども時代にどれだけ積んでいるかがカギを握るからです。

保護者のかたにはぜひ、子どもがやりたいことや大切にしているものなどを尊重しながら、自分で考えて行動するように関わっていただきたいと思います。その積み重ねが、本格的なAI時代が到来しても、子どもが将来にわたって自分らしく生きるために使える力の育成につながっていきます。

取材・執筆:神田有希子
※掲載されている内容は2023年4月時点の情報です。

監修者

監修スペシャリスト

きむら はるお


ベネッセ教育総合研究所 主席研究員

上智大学大学院(教育学修士)、東京大学社会科学研究所客員准教授(2014~17年)・客員教授(2021~22年)、追手門学院大学客員研究員(2018~21年)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~22年)。
これまで、文部科学省、経済産業省、総務省などからの委託研究に携わるとともに、文部科学省審議会委員、独立行政法人国立青少年教育振興機構事業選定委員、内閣府調査企画委員会委員、埼玉県草加市教育委員会専門部会委員などを務める。

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