2020年6月1日
世界のエネルギーの状況と
目標7の内容
私たちの快適な暮らしは、安定して電力が使えることによって成り立っています。しかし、世界で約10億人弱の人々が、いまだに電力を使えません。
電気が使えない地域では、女性や女の子が1日何時間もかかる水汲みに行かなければならなかったり、診療所で子ども用のワクチンを長く保管しておくことができなかったりというように、「教育を受ける機会を失う」、「健康が守られない」状況が生まれています。また、電灯や機械が使えないと、優れた事業運営も難しいです。
さらに、屋内の空気汚染を引き起こす木炭や石炭、動物の排泄物といった燃料を、やむを得ず暖房や調理に使っている人は世界で約30億人にのぼります。その結果、屋内の空気汚染により、2012年には約430万人が亡くなっているのです。開発途上国や農村部、離島など電力が使えない地域に、手頃な値段で利用できる安全なエネルギーを届けるためのシステムをつくる取り組みが急がれています。
一方で、化石燃料の使用が環境に悪影響を及ぼしていることも、世界的な問題とされています。この数十年間、電力を作るために石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料が使われてきました。しかし、石油や石炭を消費することで、地球温暖化の原因となる温室効果ガスが大量に発生してしまいます。
2030年までに世界のエネルギー需要はピークを迎えると予想されています。化石燃料は有限であり、供給が需要に追いつかなくなることや、地域によって価格が高騰していることも問題になっています。
世界中のすべての人が安定してエネルギーを使い続けていくためには、化石燃料以外の太陽光、水力、風力、地熱といった再生可能なエネルギー資源の利用の割合を増やしていくことが必要です。合わせて、個人の生活から経済活動まですべての場面で、エネルギーを無駄遣いしないように「省エネ」にも取り組んでいかなければいけません。
エネルギーをすべての人が公平に使えるようになることで、医療、教育、農業、通信、インフラなどあらゆる面で発展を進めることができます。安全でクリーンなエネルギーを広めることは、持続可能な開発を支える土台の一つです。
安全なエネルギー利用を
広めるための
世界中での取り組み
電力を使えない、あるいは電力が不足している開発途上国において、すべての人がエネルギーを使えるようにするためには、国際的な協力が大切です。そこで、多くの先進国や企業が、エネルギーを供給する設備を整えるための資金の支援、技術の提供などに取り組んでいるのです。アフリカの電化に活用するための債権の発行など、金融面での支援も広がりを見せています。短期的には、インフラが整っていない地域でも使える独立型の電源システムを貸し出すといった支援も行われています。
世界全体では、各国の政府レベルで、太陽光・水力・風力などの再生可能エネルギーの利用を増やしたり、省エネルギーの取り組みを促進したりする政策が整備されつつあるのです。
そのため、企業の間でも、エネルギーに関するさまざまな取り組みが広まっています。
再生可能エネルギーに関する取り組みには、温室効果ガスを排出せず資源が枯渇しにくい、新しいエネルギー資源の開発が目立ちます。再生可能な生物由来の有機成分を原料とするバイオ燃料、ソーラーパネルなどの太陽光発電、水から水素を分離してエネルギーに変える仕組みなどが、その代表的な例です。
省エネルギーに関しても、従来より少ない消費電力で使うことができる家電などの「省エネ」製品を販売する企業が多くなりました。さらにオフィスや工場での節電・省エネに取り組んだり、商品を運搬する場面でも省エネルギーに配慮したりといった取り組みも行われています。
エネルギー利用を広める
ための
日本での取り組み
日本のエネルギー事情は深刻です。四方を海に囲まれ、地下資源も乏しい日本では80%以上を海外のエネルギー資源に依存しています。化石燃料への依存度を下げるために推進してきた原子力発電も、東日本大震災をきっかけに国民的な議論の対象となっています。
そんな中、自国での安定したエネルギー供給を確立するため、各企業が風力、水力、地熱といった再生可能エネルギーによる発電施設や、効率よく電力を供給するためのシステムづくりのための研究開発と運用に取り組んでいます。
多くの企業が、風力、水力、地熱といった再生可能エネルギーによる発電施設や、効率よく電力を供給するためのシステムづくりのための研究開発と運用に取り組んでいます。
また、ビール粕などの食品廃棄物を発酵させることでバイオガスを発生させ、廃油から作った燃料と掛け合わせて発電した電力を自社で利用したり、店舗の屋根に太陽光パネルを取りつけることで自家発電で電力をまかなったり、LED照明やLED看板を導入することで省エネルギー化したり、といった取り組みを行っている企業もあります。
再生可能エネルギーに取り組んでいる企業のサービスを利用したり、「省エネ」家電を選んだり、電気自動車を使ったりすることも、私たちができる身近な取り組みの一つです。また、自宅でどれくらいの電気やガスを使っているのかを調べたり、使っていない家電をこまめに切ったりすることも、エネルギーの問題について考えるよい機会になるでしょう。
エネルギーは人々の快適な暮らしを支え、経済活動や社会活動を支える大事なインフラです。すべての人々が生活水準をよりよくし、持続可能な開発を続けていくためには、エネルギーが利用できる環境の確保や再生可能エネルギーの普及、省エネルギーの促進に、さらなる努力が求められています。
参考資料
「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」5つのターゲット
[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)
- 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
- 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
- 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
- 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
- 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。
このターゲットでは、「エネルギー」にまつわる目標と取り組みが詳しく設定されています。
※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。
※目標7のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。
- 2030年までに、安価で信頼できる現代的エネルギーをすべての地域で使えるようにする
- 世界中で再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる
- 世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる
- エネルギー関連のインフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する
- 開発途上国のインフラ拡大と技術向上を行う
[参照元]
※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。
「目標7 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」 (国際連合広報センター/2018年12月)
https://www.unic.or.jp/files/Goal_07.pdf「目標7 手ごろな価格のクリーン・エネルギーの普及はなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)
https://www.unic.or.jp/files/07_Rev1.pdf「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」(国際開発センター/2018年)
https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL7.pdf