2020年6月1日
世界のジェンダー格差の
現状と
目標5の内容
ジェンダーとは、男性と女性の社会的・文化的な役割の違いによって生まれる「性別」のことです。たとえば「男の子は強く」て「男性は外で働く」、「女の子はおしとやか」で「家事は女性の仕事」といった「性別による先入観」が社会的・文化的に当たり前になっていると、さまざまな不平等や理不尽が生まれます。
現在、教育や経済活動などのさまざまな場面において、女性は平等な機会を得られているとはいえない状態です。2014年時点で52か国もの国家が、いまだ憲法で男女平等を保障していません。性的サービスを要求される、未成年のうちに結婚させられる、政治などの意思決定に平等に関われていないなど、世界各地でジェンダー格差が生じています。
2014年に起きた人身売買の被害者は1万7,752人ですが、そのうちの71%が女性です。人身売買の多くは強制売春やポルノ製作などの性的搾取を行うためのもので、被害者の女性のうち約4人に3人が、こうした売買の対象となっています。
また、世界の女性のうち約7億5,000万人が、18歳になる前に結婚しています。児童婚は教育を受けられない原因になり、女性が働いて自立する機会も奪います。また、アフリカや中東の一部で見られる女性器切除術も、女児と女性の健康を損なうものとして問題視されています。
さらに、世界の15歳~49歳の女性のうち5人に1人が夫やボーイフレンドからの身体的・性的暴力の被害を受けていることも、解決していかなければいけない課題の一つです。性的搾取、児童婚などの文化的な慣習、家庭内暴力などの、女性に対するあらゆる暴力をなくしたり、予防したりすることを社会全体で考えていかなければなりません。
日本を含む先進国でもジェンダー格差は存在しており、世界的に政治や経済などの重要な意思決定をする場において、女性の参画率が低いことがわかっています。世界平均でも女性国会議員の比率は23.8%(2018年6月時点)と低くなっています。すべての人が能力を最大限発揮できる社会を作るためには、女性が必要な教育を受け、自ら選択して仕事や政治に参加できるように仕組みを整えていく必要があります。
ジェンダーの平等と女性の能力強化のためには、「女性だから」「男性だから」「性的マイノリティーだから」という理由で不平等が生じないよう、ジェンダーの平等を考えていくことが重要であると言えます。
ジェンダー格差をなくす
ための
世界中での取り組み
現在世界で行われている女性の能力を強化するための代表的な取り組みの一つに、欧州連合(EU)と国連が行っている「スポットライト・イニシアティブ」があります。女性と女児に対するあらゆる暴力をなくすため、女性の能力開発、女性の意思決定への参加を保護する法律や政策の整備などに関する活動を大規模に支援しています。
また、男女の完全な平等を達成するために「女子差別撤廃条約」が、1979年に国連で採択されました。「女子に対する差別」を定義し、締結国に差別撤廃のための適切な措置を求める条約です。日本も1985年に締結しています。
ジェンダーによる不平等をなくすためには、女性が能力を最大限に発揮できる社会の仕組みを作ることも大切です。男女の雇用条件や待遇を平等にする、セクシュアルハラスメントへの対策を行う、管理職における女性の割合を増やすなどの取り組みが、各国の政府や企業の間で広がっています。
さらに、2017年には性的暴力への抗議としてSNSで流行したハッシュタグ「#Me too」を使い、世界の多くの女性が性的被害を公表しました。著名な女優や女性歌手も参加したこの活動は、世界中の人がジェンダーの平等を考えるきっかけとなりました。
ジェンダー格差をなくす
ための
日本での取り組み
日本でもジェンダー格差は存在しています。ジェンダーギャップ指数という、政治・経済・教育・健康の4部門の男女格差を数値化した指標があります。日本のジェンダーギャップ指数は153カ国中121位。実は日本は世界的に見て、ジェンダーによる不平等が大きい国なのです。
特に政治や経済といった面で重要な役職に就く女性の割合は低く、2018年6月時点の女性国会議員の比率は北欧諸国の41.1%に対し、日本は13.7%となっています。この日本の比率は世界193か国中158位であり、先進国の中でも遅れていると言えます。
日本企業においても、管理職に女性が少ないこと、出産を機に離職する女性が多いことといった現状をふまえ、さまざまな取り組みが行われています。
育児中の社員が働きやすいように育児休暇や時短勤務を取り入れたり、誰もが将来にわたって働きやすいように、女性の能力強化や人材の育成に力を入れたりする企業が増えています。女性ならではのアイデアに注目し、職場で実証実験を行っている企業もあります。このように女性が活躍できる環境づくりに取り組んでいる企業に対して投資を勧める動きも広まっています。
ジェンダーの平等は基本的人権の一つです。ジェンダーの平等を実現することで、教育不足による貧しさから脱出し、健康な生活を送れる人が増えるなど、よりよい社会が実現しやすくなります。差別によりこれまで活躍が難しかった女性達の力を自由に発揮できる社会になれば、世界は持続可能な社会にますます近づいていくのではないでしょうか。
参考資料
「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」9のターゲット
[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)
- あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
- 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、全ての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
- 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
- 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
- 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
- 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、並びにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。
- 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、並びに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
- 女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
- ジェンダー平等の促進、並びに全ての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。
このターゲットでは、「ジェンダー平等の実現」に関する取り組みが設定されています。
※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。
※目標5のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。
- 全ての女性・女児に対するあらゆる差別を撤廃する
- 人身売買や性的搾取など、全ての女性・女児に対するあらゆる暴力を排除する
- 常に性と生殖に関する健康を保ち、権利を行使できる状態を確保する
- あらゆる意思決定に際し、女性の参画・リーダーシップの機会を確保する
- 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利を使えるようにする改革に着手する
- 女性の能力強化促進のため、ICTなどの実現技術の活用を強化する
- 未成年者の結婚や早期結婚など、あらゆる有害な慣行を撤廃する
- 無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する
- ジェンダー平等の促進などのため、適正な政策や法規を導入・強化する
[参照元]
※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。
「目標5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」 (国際連合広報センター/2018年12月)
https://www.unic.or.jp/files/Goal_05.pdf「目標5 ジェンダー平等を実現することはなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)
https://www.unic.or.jp/files/05_Rev1.pdf「5.ジェンダー平等を実現しよう」(国際開発センター/2018年)
https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL5.pdf中学生向けの副教材『私たちがつくる持続可能な世界~SDGsをナビにして~』(外務省・日本ユニセフ協会作成)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_navi.pdf