2020年6月1日
世界の生産と消費の
現状と
目標12の内容
世界ではエネルギーや食料をはじめ、日々たくさんのモノが生産され、消費されています。しかし、生産に必要な地球の資源には限りがあります。一方で、世界の人口は増え続けていて、2050年までには約30%増え96億人になると予測されています。このまま人口が増え続ければ、今のペースで生産や消費を行う生活を続けるには、地球が3つ必要になると言われているほどです。
生産と消費の問題で特に大きく取り上げられるのは、食品廃棄の問題です。毎年生産される量の1/3にあたる約13億トンが、食べられる前に捨てられています。食べられる食品が捨てられてしまうことは「フードロス」として問題になっています。これは、生産と流通の過程で無駄が多かったり、作りすぎて余ったりしてしまうといった生産者側の問題であり、買いすぎて食べきれなかったりする消費者側の問題でもあります。
生産や消費に必要な、地球の資源についても対処が必要です。
飲料水として使うことのできる淡水は世界の水資源の3%もないのに対し、私たち人間は川や湖が再生・浄化するよりも速いスピードで水を汚しています。農業や工場で使う水から生活排水まで、水を汚さないように工夫をしていく必要があります。
また、電力をはじめとするエネルギーについては、「省エネルギー」の考え方が一般的になっています。石油などの化石燃料に代わる持続可能なエネルギー資源から、少ない電力で使うことができる家電まで、さまざまな技術が開発され使われるようになっていますが、それでも今後、世界のエネルギー消費量は増え続けると見られています。省エネルギーについての取り組みは、二酸化炭素の排出量を減らし地球温暖化をくい止めることにも役立つため、これからも積極的に進めていくことが求められています。
世界中のすべての人が快適な暮らしをこれからも続けていくためには、衣食住をはじめとする生活に必要なモノから、その生産に必要なモノ、地球の資源まで、無駄遣いをしていないか、もう一度、見直す必要があります。「つくること」(生産)や「使うこと」(消費)に責任を持ち、より少ない資源でより多く、よりよいモノを得られる方法に変えていくことが求められているのです。
持続可能な生産と消費を実現する
ための世界中での取り組み
持続可能な生産と消費を実現するために、生産者から消費者まで、広く努力が進められています。
世界の企業の間でも、生産と流通の過程で出る廃棄物を減らすことや、資源の利用効率を上げて省エネを進めること、リサイクル・リユースを広めることなどに取り組んでいるのが一般的になっています。
製造の過程で出る廃棄物を減らすための取り組みには、ペットボトルから家電といった使用済の製品を回収して素材や部品をリサイクルしたり、食品を加工するときに出る野菜の破片を肥料や飼料に利用したりする取り組みが挙げられます。
また、地球温暖化防止や省エネルギーに配慮する取り組みには、工場や輸送に使う自動車などの二酸化炭素の排出削減目標を決めたり、植物由来の生分解性プラスチックなど環境への負荷を抑えた新素材を開発したりと、さまざまな切り口の取り組みがあります。
さらに、環境への負荷を削減しながら企業のパフォーマンスを上げる、消費者にも協力してもらえるよう必要な情報やコンテンツを発信するなどの取り組みもあり、有望な取り組みをしている企業に投資する動きも広まっています。
持続可能な生産と消費を実現する
ための日本での取り組み
日本のごみのリサイクル率はこの数年下がっており、2018年度は19.9%でした。ヨーロッパを中心にリサイクル推進国が50%以上のリサイクル率を達成する中、これは決して高い水準ではありません。また、食べられる状態のまま食品が廃棄されてしまう「フードロス」の量は年間約612万トンを超え、早急な対策が求められています。
「フードロス」を解決するために多くの企業がさまざまな取り組みを行っています。店舗で廃棄となった食品を肥料にして自社の農場に使い、そこで育てた野菜などをまた販売する「エコファーム」の運営や、やむなく返品された商品を子ども食堂へ提供するなど、さまざまな取り組みが行われています。必要以上の食品が生産されて余ることを防ぐため、AIを活用して、食品の製造・流通・小売のすべての過程で情報を共有し、需要と供給のバランスの最適化を目指している企業もあります。
消費者の立場での取り組みとして有名になったのは、3R(リデュース、リユース、リサイクル)です。買い物に行くときにマイバッグを利用したり、容器包装プラスチックやペットボトルなどごみの分別と回収に協力したりすることも、生産と消費の課題を解決する第一歩です。また、家庭でもできるだけ食べ残す食品を減らすこと、さらに、フードロスの削減や省エネルギーなどに取り組んでいる企業の製品を選んで使うことなども、個人でできる取り組みの一つです。
持続可能な生産と消費のサイクルを作り出すことは、持続可能な社会を作っていくための土台になります。限りある資源を浪費しないよう、「より少ないものでより多く、よりよく」を、身近なところから始めてみる必要があるのではないでしょうか。
参考資料
「持続可能な生産消費形態を確保する」11のターゲット
[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)
- 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる。
- 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
- 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
- 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
- 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
- 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
- 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
- 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
- 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
- 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
- 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。
このターゲットでは、「生産と消費」にまつわる目標と求められる取り組みが詳しく設定されています。
※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。
※目標12のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。
- 全ての国々が持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施する
- 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用ができるようにする
- 2030年までに小売業や個人の消費レベルにおける食料の廃棄を半減させ、食品ロスを減少させる
- 製品が製造されてから消費されるまでの間の、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する
- 2030年までに廃棄物の削減や再利用などにより、廃棄物の発生を大幅に削減する
- 大企業を中心に、持続可能な取り組みを導入し、定期報告に盛り込むよう奨励する
- 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する
- 人々が持続可能な開発などに関する情報と意識を持てるようにする
- 開発途上国が持続可能な消費・生産形態を促進できるよう科学的・技術的な支援をする
- 観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測る手法を開発・導入する
- 化石燃料に対する非効率な税制や補助金を合理化することで、環境に対する悪影響を最小化する
[参照元]
※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。
「目標12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する」 (国際連合広報センター/2018年12月)
https://www.unic.or.jp/files/Goal_12.pdf「目標12 責任ある消費と生産はなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)
https://www.unic.or.jp/files/12_Rev1.pdf「12.つくる責任つかう責任」(国際開発センター/2018年)
https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL12.pdf