2020年6月1日
世界のパートナーシップの
現状と
目標17の内容
SDGsの17の目標をすべて達成するためには、各国の政府や地方自治体、企業、学界や研究機関、地域の人々、一人ひとりの市民まで、あらゆる人々の協力が必要です。
現在の社会では、人、モノ、情報が国境を越えて活発に移動し共有されています。このようなグローバル化が進んでいる中、貧困と飢餓、人々の健康と教育、エネルギーと地球温暖化の問題、産業と雇用、生産と消費、環境保護、人権といったSDGsの目標も、世界中が協力しなければ達成することはできません。
たとえば、開発途上国について、SDGsを2030年までに達成するためには、年間2兆5,000億ドルの資金が足りないと言われています。そのため、政府開発援助(ODA)による先進国の政府からの援助だけではく、民間企業の長期的な投資も活発に行われています。開発途上国ではインフラの整備が急がれていますが、特に援助が必要とされている分野は、水道や電気などの基礎的インフラ、クリーンなエネルギー、インターネット設備、情報通信技術(ICT)などです。
また、資金だけでなく、イノベーション(技術革新)を共有するなど先進国の技術を提供する支援や、人材育成などを通して開発途上国の能力を引き上げる取り組みも求められています。このため、現地の企業と提携して事業を始めたり、先進国の企業が現地に会社をつくったりする動きも広まっています。さらに、経済的基盤が弱い開発途上国が貿易を活発に行えるようにするために、関税を低くするなどの優遇措置もとられています。
この目標で特に重要とされているのが「マルチステークホルダー・パートナーシップ」です。「ステークホルダー」とは「利害関係がある人」という意味で、「パートナーシップ」とは「互いに協力して働くこと」という意味があります。
持続可能な社会の実現のために、公的組織と民間組織が協力する、あるいは企業と地方自治体が協力するといった取り組みが広がっていますが、今までよりもさらに多様なパートナーシップをつくって、資金、技術、知識などを共有し、目標の達成に積極的に取り組んでいくことが求められているのです。
パートナーシップを実現する
ための世界中での取り組み
パートナーシップについて、地球温暖化に関する世界の取り組みの例を見てみましょう。政府が二酸化炭素排出量に規制を定め、省エネルギーを推進する仕組みを作ります。そして、企業や大学などの研究機関が協力して、省エネルギーを可能にする技術や環境を保護する技術を開発します。こうして開発された技術を使って、開発途上国に技術支援を行うことができます。こうした連携が世界で一般的になっているのです。
また、世界の企業の間では、持続可能な開発に関する取り組みに投資する動きも広まっています。たとえば、環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)に配慮した取り組みを行っている企業に投資する「ESG投資」がその代表的な例です。こうした動きは「持続可能性の向上に取り組んでいるか」、「社会に貢献しているか」といった財務情報以外の視点から、企業を評価することにつながっているため、持続可能性を確保しながら経済的な成長を目指すというSDGsのコンセプトを浸透させることにも役立っています。
さらに、グローバルなパートナーシップを実現し目標を達成するためには、資金援助だけでなく、持続可能なエネルギーなどの技術開発において、アドバイザーを派遣したり、研修生の受け入れを行ったりする能力開発支援などにも力を入れて、各目標の取り組みを一層強化していく必要があります。
パートナーシップを実現する
ための日本での取り組み
SDGsが採択された2015年を境に、日本企業の間では企業の社会的責任が広く問われるようになり、社会貢献活動や、自社の事業とSDGsの課題解決を関連付けた取り組みが増えています。
SDGsの目標や理念は多くの人に知られるようになりましたが、まだまだ充分ではありません。持続可能性やSDGsに関する知識を深めるための社員研修を行う企業も増えています。また自社のSDGsに関する事業を活かして、子ども向けに環境などのワークショップを行う企業もあります。私たち一人ひとりがSDGsを知り、関心を持つことも、持続可能な社会を実現するために大切なことと言えるでしょう。
また、マルチステークホルダー・パートナーシップを実践する取り組みも広がっています。その一つが、経済状況によって食事に不安のある子どもを対象に、企業から提供された食品を届ける文京区の「こども宅食プロジェクト」です。食品を届けることで、孤立しがちな家庭とその子どもを支援につなげるセーフティーネットの機能もあることが特徴です。このプロジェクトは、文京区とNPO法人、運送業者などがパートナーシップを結んで運営されています。
多様なパートナーシップを結ぶことで、新しいアイデアが生まれ、社会に貢献し、企業にとっては利益にもなるという、よい例だと言えます。それぞれの知識や技術、資金を持ち寄り、手を取り合って課題に向き合うことで、持続可能な開発を実現に近づけることができるのです。
参考資料
「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」19のターゲット
[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)
資金/Finance
- 課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。
- 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。
- 複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する。
- 必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした協調的な政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する。
- 後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する。
技術/Technology
- 科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める。
- 開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する。
- 2017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。
能力構築/Capacity-building
- 全ての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。
貿易/Trade
- ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の受諾を含むWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する。
- 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる。
- 後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が透明で簡略的かつ市場アクセスの円滑化に寄与するものとなるようにすることを含む世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、全ての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する。
体制面/Systemic issues
政策・制度的整合性/Policy and institutional coherence
- 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する。
- 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する。
- 貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する。
マルチステークホルダー・パートナーシップ/Multi-stakeholder partnerships
- 全ての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。
- さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
データ、モニタリング、説明責任/Data, monitoring and accountability
- 2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。
- 2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する。
このターゲットでは、「資金」「技術」「能力構築」「貿易」などの7つの項目に分けて、「パートナーシップで目標を達成しよう」にまつわる目標と求められる取り組みが詳しく示されています。
※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。
※目標17のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。
- 【資金】
- 課税及び徴税能力の向上のため、国内資源の動員を強化する
- 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に目標にする
- 複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する
- 開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、債務リスクを軽減する
- 後発開発途上国のための投資促進枠組みを実施する
- 【技術】
- 全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、知識共有を進める
- 開発途上国に対し、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する
- 後発開発途上国のICTをはじめとする技術の利用を強化する
- 【能力構築】
- 開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する支援を強化する
- 【貿易】
- 普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する
- 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、世界の輸出に占めるシェアを倍増させる
- 市場アクセスの円滑化に寄与するよう、永続的な無税・無枠の市場アクセスを実施する
- 【体制面】【政策・制度的整合性】
- 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する
- 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する
- 政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する
- 【マルチステークホルダー・パートナーシップ】
- マルチステークホルダー・パートナーシップで補完しつつ、グローバル・パートナーシップを強化する
- 効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する
- 【データ、モニタリング、説明責任】
- 2020年までに、開発途上国などに対する能力構築支援を強化する
- 2030年までに、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する
[参照元]
※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。
「目標17 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する」 (国際連合広報センター/2018年12月)
https://www.unic.or.jp/files/Goal_17.pdf「目標17 パートナーシップで目標を達成することはなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)
https://www.unic.or.jp/files/17_Rev1.pdf「17.パートナーシップで目標を達成しよう」(国際開発センター/2018年)
https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL17.pdf中学生向けの副教材『私たちがつくる持続可能な世界~SDGsをナビにして~』(外務省・日本ユニセフ協会作成)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_navi.pdf