【発生のしくみ・植物の発生】形成体と誘導がわかりません。
形成体と誘導のしくみがわかりません。詳しく教えてください。
進研ゼミからの回答
こんにちは。さっそく質問に回答しますね。
【質問内容】
【問題】
動物の発生が進行していくなかで,胚のある領域が,接する胚域の細胞の分化の方向性を決定する現象を(① )という。例えば,両生類の初期胚において,赤道付近に中胚葉となる領域が形成されるが,これは,その植物極側に存在する(② )となる領域の,赤道付近の細胞群へのはたらきかけによる。この現象は(③ )と呼ばれる。外胚葉から神経管が( ① )される現象はシュペーマンらによって発見され,この( ① )作用をもつ領域は(④ )と名づけられた。彼らは,体色の異なる2種類のイモリの初期原腸胚の間で,一方の胚の(⑤ )を,他方の胚の腹側の外胚葉に接触させるように移植する実験を行い,本来の胚(一次胚)とは異なる二次胚を得た。
問 文章中の空欄①~⑤に適当な語句を記せ。
【解答】
問 ① 誘導 ② 内胚葉 ③ 中胚葉誘導 ④ 形成体(オーガナイザー) ⑤ 原口背唇(原口背唇部)
この問題に出てくる。「形成体」と「誘導のしくみ」がわからない,という質問ですね。
【質問への回答】
「形成体」と「誘導」は発生の分野では,重要な生物用語です。
まずはこの用語に関する有名な実験をみていきましょう。
ドイツのシュペーマンは色の異なる2種類のイモリの初期原腸胚を使って,一方のイモリ胚(胚 A)原口背唇を切り取り,それを他方の色の異なるイモリ胚(胚 B)の将来腹側になる胞胚腔内に移植して発生させる実験を行いました。色の異なるイモリ胚を使ったのは,細胞の色でその細胞がどちらの胚に由来するかを知るためです。実験の結果,本来の胚とは別に,腹側に移植片を中心にニ次胚が形成されました。その二次胚において移植片自身(胚 A 由来)は二次胚の脊索や体節の一部になり,そのほかの組織は移植先の細胞(胚 B 由来)からできていました。
この実験結果からは次のようなことがわかります。
二次胚形成の実験
・原ロ背唇は移植によっても自身の予定運命を変えない。
・原ロ背唇は周りの未分化の細胞にはたらきかけ,予定運命を変えさせて分化させる。
この原ロ背唇のような,「自身の予定運命は変えないが,周りの細胞にはたらきかけて,
その分化を促すはたらきをもつ部域」を「形成体(オーガナイザー)」といいます。
また,「周りの細胞にはたらきかけて,その分化を促すはたらき」を「誘導」といいます。
この誘導の過程においては発生段階に応じて,誘導を引き起こす形成体と,
誘導を受ける細胞群が決まっています。
例えばカエルの初期原腸胚において原ロ背唇(形成体)の誘導を受けて,
神経管に分化する外胚葉,イモリの眼の形成過程において眼胞・眼杯(形成体)の誘導を受けて,
水晶体になる表皮,また水晶体(形成体)の誘導を受けて,角膜になる表皮などです。
有性生殖をする生物体のスタートは1個の受精卵です。受精卵が卵割をして細胞数をふやし,
発生を続けることでさまざまな組織,器官が形成され,やがて1つの生物体が完成します。
元は1つだった細胞が分裂してさまざまな組織,器官に分化していくのは,遺伝子の発現だけではなく,
この原ロ背唇のような形成体による誘導のはたらきが大きいのです。
イモリの眼を考えてみても,誘導が起こることでさまざまな組織ができあがり,
それらの組織が形態や機能を分担することで,1つの器官である眼が形成されるのです。
誘導のおかげで生物体の組織や器官は複雑なネットワークを築きながら,すばらしい調和のとれた生物体を完成させているのです。
【学習アドバイス】
授業を聞いたときはわかったのに,問題になるとわからないということはよくありますよね。
具体的な問題で疑問に思ったときが理解を深めるチャンスです!
これからも進研ゼミで勉強を頑張ってくださいね。