【物質の構成粒子】価電子の説明がよくわかりません。
1行目に「価電子が同じ数の原子どうしは化学的性質がよく似ている。」
とありますが,なぜそうなるのですか?また,具体的にはどのような例がありますか?
4行目に「内側の電子殻にある電子に比べて原子核からの引力が弱いために,やや不安定でエネルギーが高い。」
とありますが,なぜ内側の電子核にある電子に比べて原子核からの引力が弱いのですか?また,不安定だとなぜエネルギーが高いのですか?
進研ゼミからの回答
こんにちは。いただいた質問に回答します。
【質問の確認】
・価電子が同じ数の原子どうしは化学的性質がよく似ている。
・内側の電子殻にある電子に比べて原子核からの引力が弱いために,やや不安定でエネルギーが高い。
について,なぜそうなるのかという理由についてのご質問ですね。
また,「価電子が同じ数の原子どうしは化学的性質がよく似ている。」の例についても一緒にみていきましょう。
【解説】
≪価電子が同じ数の原子どうしは化学的性質がよく似ている理由と例≫
価電子は,他の原子と結合するときに,重要なはたらきをします。
このため,価電子の数が同じ原子どうしは,イオンになったり,結合したりするときの化学的な性質がよく似ています。
例えば,周期表の
◆1族の元素の原子はどれも価電子の数が1個ですが,このうちLi,Na,K,Rb,Cs はどれも金属元素で,1価の陽イオンになりやすく,酸化されやすく,水と反応しやすいなど,よく似た性質をもっています(これらの元素をアルカリ金属元素といいます)。
◆17族の元素 F,Cl,Br,I の原子は価電子の数が7個で,1価の陰イオンになりやすく,金属元素と化合物をつくりやすく,単体は強い酸化作用をもっています(17族の元素をハロゲン元素といいます)。
◆18族の元素He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rnの原子は価電子の数が0個で,単体は空気中に気体としてわずかに存在し,他の原子と結合しにくく,化合物をつくりにくいというよく似た性質をもっています(18族の元素を希ガス元素といいます)。
価電子の数が等しい元素の性質がすべてよく似ているというわけではありませんが,アルカリ金属やハロゲンなどのように,価電子の数が同じで,化学的な性質がよく似ている元素があることを押さえておくといいでしょう。
≪内側の電子殻にある電子に比べて原子核からの引力が弱い理由≫
原子核は正の電荷をもつ陽子と電荷をもたない中性子からできているので,原子核全体は正の電荷をもっています。
これに対して,電子は負の電荷をもつ粒子です。
正の電荷をもつ粒子と負の電荷をもつ粒子の間には引力がはたらきます。
この引力は,粒子の距離が近いほど強く,距離が遠いと弱くなります。
例えば・・・
プラスチックの下敷きで髪の毛をこすり,下敷きを持ち上げると,髪の毛が下敷きにくっついてきて逆立ちます。これは,プラスチックと髪の毛がそれぞれ正の電荷と負の電荷を帯びたために,引力がはたらいてくっつく現象です。
下敷きを髪の毛から遠ざけると引力は弱まるので,下敷きと髪の毛は離れます。
同じように,負の電荷をもつ電子には正の電荷をもつ原子核からの引力がはたらいています。
外側の電子殻にある電子の方が内側の電子殻にある電子よりも原子核からの距離が遠いので,原子核 からの引力は弱くなります。
≪引力が弱いとやや不安定でエネルギーが高い理由≫
原子核からの引力が弱いと,原子核から離れやすく,不安定になります。
また,最外殻にある電子が最もエネルギーが高いことがわかっていますが,エネルギーが高いので,他の原子との結合に関係するなどのはたらきをするため不安定となります。
逆に,内側の電子殻にある電子は,価電子に比べてエネルギーが低いので,結合に関係せず,安定して内側に存在していることをイメージしておくといいでしょう。
【アドバイス】
化学的な性質がよく似た元素については,周期表で覚えておくといいでしょう。
また,価電子の数の変化とそれぞれの性質が同じように変化していることを確認しておきましょう。