8 働きがいも経済成長も 8 働きがいも経済成長も

目標8

働きがいも経済成長も

包摂的かつ持続可能な経済成長及び
すべての人々の完全かつ生産的な雇
用と
働きがいのある人間らしい雇用
(ディーセント・ワーク)を促進する

2020年6月1日

世界の経済・雇用の現状と
目標8の内容

世界全体の失業者数は今も増え続けており、2017年には世界の人口のうち5.6%が失業しています。今後も人口増加に伴って、さらに雇用を増やす必要があると言われています。また、働いていても賃金が不当に低かったり、賃金が支払われなかったりして貧しい状況に置かれている人々がいます。自営業者や家族従事者など、社会保障が十分に行き届いておらず、不安定な就労状態に置かれている「脆弱な就業者」もまだまだ多い状況です。

世界の15歳~24歳の若者の失業者数は、2017年には約7000万人で、失業者全体の35%を占めました。また、世界的に男性に比べ女性のほうが就労率が低く、男女間で賃金に格差が見られます。このように雇用に関して、年齢や男女の格差が残っていることも、解決のために努力しなければならない課題の一つです。

そして世界には、意に反して働かされる人や、幼いうちから働いていて教育の機会を奪われている子どももたくさんいます。こうした強制労働や児童労働をなくす取り組みも求められています。

目標にある「ディーセント・ワーク」とは「働きがいのある人間らしい雇用」のことで、不当に長時間働かされることなく、公正な額の収入を得ることができ、ハラスメントなどを受けることなく安心して働くことができ、社会保障などがしっかりと揃っている仕事のことを指します。男女間の雇用における平等も含むこの「ディーセント・ワーク」の実現は、雇用にまつわるさまざまな問題を解決するためにも重要視されています。

失業状態が続いたり、働いていても貧しさが解消されなかったり、弱い立場で無理やり働かされたりする人が多いと、貧困や飢餓の問題が解決されないだけでなく、社会全体の持続的な発展に悪影響が出てきます。途上国でも先進国でも、貧しさに苦しむ人を減らし、持続可能な経済成長を達成するために、若者や女性など社会的に弱い立場に置かれている人々に配慮しながら、労働環境や社会保障の整備を進めて、働きがいのある雇用を作り出していく必要があります。

経済と雇用を成長させる
ための
世界中での取り組み

開発途上地域で十分な雇用を確保するためには、まず道路や上下水道、発電所、通信網などのインフラ整備を行い、経済的な発展を後押しする必要があります。このため、各国政府や企業・団体が、資金援助や技術提供を行っています。また、こうした地域では経済成長が優先されて、劣悪な労働条件で働かされる人や幼いうちから働かされる子どもが多いです。よって、適正な労働条件を守るために制度を整備する必要があります。

途上国に対して、自社の技術やノウハウを海外のプラント設備の技術者に伝える研修を実施したり、海外に直接エンジニアリング会社を設立して現地での雇用を増やしたり、児童労働の多い葉たばこの耕作コミュニティーに直接投資したり、といった取り組みを行う企業も増えています。

発展途上国の生産者の経済的自立をうながすため、コーヒー豆などのフェアトレード商品を販売している企業もあります。慈善団体への寄付だけでなく、こうした商品を購入することも、個人でできる取り組みの一環と言えるでしょう。

経済と雇用を成長させる
ための
日本での取り組み

日本では今後、少子高齢化の影響で働き手世代が減少していきます。そんな中で、経済成長を目指していかなくてはなりません。しかし、多くの人の人間らしい暮らしを犠牲にする代わりに、経済成長を得るような社会は持続可能とはいえません。経済成長と「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい雇用)」を両立させていくために、国や企業がさまざまな働きかけを行っています。

長時間労働が原因で心身の健康を損なう人が多いことや、仕事と子育て・介護などの両立が難しいことなど、日本でも雇用にはさまざまな課題が残されています。また、若年層を中心に非正規雇用の割合が高まっており、その不安定な雇用形態や賃金の低さなどが問題視されています。さらに、男女の労働市場参加率は2017年時点で21%ポイントもの差があり、雇用における男女格差がいまだ残っているのです。

そうした課題に対し、日本の企業もさまざまな取り組みを行っています。具体的には、従業員の目標設定と実際の成果を元に公正な評価を心がけたり、子育て・介護との両立などができるようリモートワークや自由度の高い勤務時間を導入したり、女性管理職を積極的に登用したり、年間の総労働時間の目標を設定したりという取り組みが行われています。

ディーセント・ワークを積極的に取り入れることは、貧困や男女平等など、SDGsの他の目標を解決する鍵にもなるのです。雇用の内容を充実させることで生産性を上げ、経済成長につなげることができれば、社会全体を豊かにしつつ持続可能な開発の実現に近づけると言えるでしょう。

参考資料

「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」12のターゲット

[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)

  • 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。
  • 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
  • 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
  • 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。
  • 2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。
  • 2020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。
  • 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。
  • 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
  • 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。
  • 国内の金融機関の能力を強化し、全ての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。
  • 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。
  • 2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。

このターゲットでは、「経済と雇用」にまつわる目標と取り組みが詳しく設定されています。

※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。

※目標8のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。

  • 各国の状況に応じて、一人当たりの経済成長率を持続させる
  • 働き方の多様化や技術革新などを通じて高いレベルの経済生産性を目指す
  • 開発重視型の政策を促進し、中小零細企業の設立や成長を奨励する
  • 2030年までに、経済成長と環境悪化の分断を図る
  • 完全かつ生産的な雇用、働きがいのある人間らしい仕事などを実現する
  • 2020年までに、就労、就学、職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を減らす
  • 強制労働を根絶し、2025年までにあらゆる形態の児童労働を撲滅する
  • 全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する
  • 銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する
  • 若年雇用のための世界的戦略や世界協定を実施する
  • 持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する
  • 開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する

[参照元]

※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。

「目標8 すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する」(国際連合広報センター/2018年12月)

https://www.unic.or.jp/files/Goal_08.pdf

「目標8 ディーセント・ワークと経済成長を両立させることはなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)

https://www.unic.or.jp/files/08_Rev1.pdf

「8.働きがいも経済成長も」(国際開発センター/2018年)

https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL8.pdf