文章の要約が苦手です [中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す保護者のかたから寄せられた疑問に、実践的なアドバイスをします。

【質問】
国語の記述の問題が苦手です。なかでも、文章を要約して書くのに苦労しています。どのようにすればよいでしょうか。

相談者:小6女子(神経質・論理的なタイプ)のお母さま

【回答】
文の役割を読んだり書いたりして実感させる

■大事なところに線がひけない

「要約」というのは、説明文や論説文の大事なところを短くまとめたものです。大事なところをそのままつなげて書けばよいのですから、そんなに難しいようには思えません。しかし、苦手な子どもは少なくありません。

まず子どもたちが迷うのは、「大事なところはどこか?」ということです。問題文を読む時でも、先生は「大事なところに線をひきながら読みましょう」と言う場合があると思いますが、様子を見ていると、的確な箇所に線をひいている子どもはそんなに多くないようです。ある子は、ほとんどひかずに済ませてしまいます。別の子はそこら中に線をひいて、文章が読みづらくなるほどです。要約が苦手なお子さんであれば、この2つのタイプのどちらかになると思います。

■文の役割と文章の組み立て方

適切なところに線がひけないのは、どこが大事なのか知らないからです。恐らく、学校や塾で習っていないか、あるいは習っていても理解するのが難しいかのいずれかでしょう。文章のどこが大事か教える時は、文章における文の役割や文章の組み立て方の話になります。

まず、文の役割ですが「中心的な役割」として、(1) 問題・話題を示す文 (2)結論・まとめを示す文があります。また、「話題に関してくわしく説明する役割」として、(1) 具体例を示す文 (2) エピソード(体験など)を示す文 (3) 引用(他の人の話や文章を持ち出すこと)を示す文 (4) 原因・理由を示す文 などがあります。これらの中でも、「問題・話題を示す文」と「結論・まとめを示す文」はとても大切で、この2つをつなぐことで筆者の「イイタイコト」つまり要旨をまとめることができます。

また、文章の組み立て方には、(1) 頭括型(話題・まとめ--話題に関する説明) (2) 尾括型(話題--話題に関する説明--まとめ) (3) 双括型(話題・まとめ--話題に関する説明--まとめ)の3つの型があり、読んでいる文章がどの型なのかを意識することでその文章のより深い理解につながります。

■なかなか実感できない文の役割

以上のような事柄はもちろん塾でも教えていると思いますが、正確に理解している子どもは多くはないでしょう。なぜか? それは、言葉ではわかったつもりになっていても、実際に文章を使って、「どこが話題か?」「どこが具体例か?」を実感させることが少ないからです。あるいは、大事なところをつないで要旨を書かせる練習を多くはしないからだと思います。話だけで納得するのではなく、実際に文章を読みながら、「話題」とはどんなものか、「具体例」とはどんなもので、なぜそれが必要なのかを自分で実感することが大切です。

文の役割を実感させるにはいくつかの方法があると思います。一つは、文章を読ませて、どこが「話題」「具体例」「エピソード」などをチェックさせる方法です。使う文章は500字から800字程度で、短くまとまっているものがよいでしょう。中学入試の問題でも、自然環境や動植物をテーマにしたものは比較的読み易いと思います。
そうした文章を読んで、大切ではないところ、すなわち「話題に関してくわしく説明する役割」をしている「具体例」「エピソード」「引用」「原因・理由」をマーカーで消し込んでいきます。どんどん消し込んでいくと、「問題・話題」と「結論・まとめ」だけが残るはずです。これらをつなげると筆者の「イイタイコト」である要旨になります。こうした作業を実際に何回かやってみることで、本当の意味で文の構造がわかってくると思います。

■自分で論説文を作ってみる

もう一つの方法は、自分で文章を作ってみることです。まずは「問題・話題」と「結論・まとめ」を決めます。それらはお子さんにとって身近なことがよいですから、たとえば「話題=ゲームをしたい」、「結論=1日30分ゲームをする」にしましょう。つまり、受験生であるお子さんが、ゲームをさせてもらえないことに反対する意見文(評論文)を作るということです。

お子さんはゲームをしたいのですが、「ゲームをしたい」「ゲームをしたい」ということを繰り返し言っても効果はありません。これでは幼い子どものようですね。最後は「いいかげんにしなさい」と叱られるのがおちでしょう。それならどうするか? それは「ゲームをしたい」という話題に対して、なぜそれが許されるべきかを、「具体例」「エピソード」「引用」「理由」などを挙げて論理的に説明することで、「1日30分ゲームをする」という結論を保護者のかたに納得させればよいということになります。

一つの例を挙げてみましょう。内容的にはもちろん創作です。

(話 題) ゲームをしたい
(理 由) 確かに自分は受験生だが、ゲームは非常によい気分転換であり、そのあとの勉強がはかどる。
(引 用) ABC大学の教授も「仕事や勉強の合間の気分転換として、ゲームはよい」と新聞に書いていた。
(具体例) 実際、ゲームをしなくなってから、自分は勉強に集中できない。
(エピソード)有名中学に合格した隣のお兄さんも、1日30分程度のゲームをして気分転換をしていたという。
(結 論) だから、1日30分ゲームをしたい。

話題はもちろんゲームではなくて、「サッカーを続けたい」でも、「新しいスニーカーを買ってほしい」でも何でもよいでしょう。要は、何か説得したい事柄があり、それを他の人に納得させるにはどうしたらよいかを考えさせるということです。そしてそれこそがまさに論説文であり、大切なのは「話題」と「結論」であることがわかると思います。なぜなら、「ゲームをやりたい」「1日30分ゲームをする」と言って、保護者のかたがすぐにOKしたら、「理由」「引用」「具体例」「エピソード」などはもう言う必要がないからです。

こうしたことをお子さんが実感し、難しそうに書いてある論説文も実は同じ構造であることがわかれば、どこが大切であるかがわかってくると思います。

(筆者:小泉浩明)

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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