自ら学ぶ子になる! 辞書引き学習法【実践編】

辞書を引いて、知っている言葉に付せんを貼る「辞書引き学習法」。中部大学准教授の深谷圭助先生が提唱するこの学習法は現在、多くの小学校でも導入されています。前回は学習法の詳しい手順をご紹介しましたが、今回は、「辞書引き学習法」を家庭でも実践するときのコツを深谷先生に伺いました。

辞書引き学習法で受験につながる語彙(ごい)力を伸ばす!」(動画)



習慣化のコツ

辞書引き学習法を継続させるには、まず辞書を気軽に手にとれる環境にしてあげることが大切です。ブックカバーなどは外しておき、鉛筆と付せんも近くに置いて、いつでも引けるようにしておきましょう。
辞書に貼ってある付せんが増えてきたら「付せんが増えてきたね」「よく知っているね」などとほめてあげてください。「面白い言葉はあった?」と辞書引き学習法を話題に出してあげるのも良いでしょう。

ここで、保護者のかたに注意していただきたいのは、「意味を読みなさいと言わない」ということです。付せんを貼るだけでは効果がないと思われるかもしれませんが、たくさんの言葉に触れていくうちに、子どもが自ら言葉の意味に興味を持つようになっていきます。たとえば「薬指」はどの指のことか、小学1年生なら誰でも知っています。ただ、なぜ薬指と言うのでしょうか。辞書によってはこうした語源まで書かれていることがあります。普段何げなく使っている言葉でも、本当は違った使い方や違った意味があるとか、どういう語源から出発したものなのかとか、関心が広がっていきます。子どもが自分にとって面白い言葉に出合うときまで、保護者のかたは温かく見守ってあげてほしいですね。自分で調べて、面白い言葉に出会ったという喜びが、次の言葉を調べたくなる原動力になるのです。そして、その喜びはほかの教科の勉強においても自然と応用されるはずです。たとえば、虫を観察していて気付いたことを昆虫図鑑で調べるなど、生活のいろいろな場面での気付きや疑問を、自分で解決してみたいと思うようになるのです。


【深谷先生に聞く! 辞書引き学習法 Q&A】

Q. 子どもは幼児ですが、辞書引きをスタートするのは早すぎるでしょうか。
A. 「辞書引き学習法」はひらがなの読み書きができれば始められます。ただ、ひらがながきちんと書けなくても、読めるのであれば幼稚園の年長さんくらいでも可能です。私の息子は、既に辞書引き学習法を始めていた姉に感化され、3歳からスタートしました。最初はひらがなを書けませんでしたが、辞書引き学習法を始め、ひらがなを覚えていきました。

Q. 付せんはどのぐらいのペースで貼ればよいでしょうか。
A. まず、第1段階として3か月で付せん1,000枚を目指しましょう。辞書の中から知っている言葉を見つけるなかで、自分にとって面白い言葉に出会うことが目標です。この言葉との出合いが、「もっと調べてみたい」という原動力になります。第2段階は、6か月で2,000枚です。このぐらいになると、自然といろいろな言葉を調べたいと思うようになってきます。第3段階は、付せん4,000~5,000枚です。このころになると使っている辞書では物足りない、ほかの辞典を使って調べたいと思うようになるはずです。ここまできたら、辞書引き学習法がかなり身に付いている証拠と言えます。もっと語彙(ごい)数が多い辞書や漢字辞典や専門的な辞典を用意してあげましょう。

Q. 息子は中学生ですが、今からスタートするのは遅いでしょうか。
A. 辞書引き学習法はいつからでもスタートできます。ただ、中学生ぐらいになると、かなりの語彙を既に習得しています。保護者から辞書引き学習法をすすめられても、彼らは既に功利的にものを考えていますから「辞書に付せんを貼って何の役に立つの?」と思うはずです。そんなときは、英和辞典でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。英語力を身に付けるためにやってみようかなと思ってくれるかもしれません。やり方は国語辞典のときと一緒です。

Q. 辞書引き学習法をさらに発展させたい場合はどうしたらよいでしょうか。
A. 付せんが2,000枚ぐらいついたら、辞書引き学習法で身に付けたことを活用させる場として、「日記」を書くようおすすめします。調べたい言葉を見つけ、その内容を日記に書いていくのです。小学2年生の娘には約200文字の日記を毎日書かせています。たとえば「てんとうむし」は、漢字で書くと「天道虫」だけど、その語源はなぜなのか、英語では何と言うのかなど辞書を調べながらまとめていくのです。頻繁に書く機会を増やすことで、語彙力や表現力がさらに磨かれるほか、自ら調べる喜びに気付くはずです。
 
<<保護者へのメッセージ>>
この学習法は国語力を伸ばすだけでなく、自ら学びに向かう力を育むことができる学習法です。どの教科の学びにおいても必要な力を身に付けることができます。辞書引き学習法を指導した教え子が、とある国立大学の医学部に進学したのですが、彼の医学書にはたくさんの付せんが貼ってありました。小学校時代に覚えた辞書引き学習法のスタイルを応用して学んでくれていたのです。このようにどの分野の学びにおいても応用できる学習法です。
ただ、中にはこの学習法が合わない子もいるかもしれません。その場合は無理強いせず、いったん休憩してみてください。時期を変えて再び挑戦したら、その子にとって「もっと知りたい」という気持ちに火がつき、その子の中に再び辞書引きブームがくるかもしれません。


『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』
<すばる舎/深谷圭助(著)/1,620円=税込>
『チャレンジ小学国語辞典 第五版』『チャレンジ小学国語辞典 第五版』
<ベネッセコーポレーション/湊 吉正 (著)/2,365円=税込>

プロフィール


深谷圭助

1989年に着任した小学校で1年生から国語辞典を引かせる「辞書引き学習法」を実践。辞書にふせんを貼って意欲を高めるその教育法は、子どもたちの「本当の学力」を形成するとして教育界で注目を集めている。(株)ベネッセコーポレーション辞典企画アドバイザー。

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