親の愚痴を子どもに聞かせてもいい?[教えて!親野先生]

教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】
このごろストレスを感じることが多く、常に子どもたちに愚痴を言っています。特に多いのは仕事や夫のことです。これはやっぱり子どもたちのために良くないでしょうか?

相談者・小京都ママ さん (小6女子 小4男子)


【親野先生のアドバイス】
小京都ママさん、拝読しました。

ストレスが溜まったときは、誰かに聞いてもらいたくなりますよね。
その気持ちは本当によくわかります。
愚痴を聞いてもらって荷物を降ろせば心が軽くなりますから。

でも、常に子どもに愚痴を聞かせるのはやめた方がいいです。
というのも、親が降ろした荷物は子どもが背負うことになるからです。

親から常に仕事に対する愚痴を聞かされていると、子どもは次のように思うようになります。

「仕事って大変だな。仕事なんかしたくないな」
「毎日仕事をしなけりゃならない大人って大変だな」
「大人になんてなりたくない。ずっと子どもでいたい。大人になってもいいことなんてないんだから」

また、母親から常に夫(子どもにとっては父親)についての愚痴を聞かされていると、子どもは次のように思うようになります。

「お父さんてダメな人だな。そんな人の言うことなんか聞かなくてもいいな」
「お父さんてダメな人だな。こんな人がお父さんなんて、自分は不幸だな」
「お父さんてダメな人だな。こんな大人にはなりたくない」
「結婚してもいいことはない。苦労するだけだ。結婚なんかしないほうがいいな」

男の子にとって、父親は将来の自分のモデルであり、これから自分をつくっていくうえでの指針でもあります。

その父親が母親によって完全に否定されてしまうと、子どもは自分の将来像を描く手がかりというものを失ってしまいます。

また、女の子にとってのモデルは母親です。
その母親が毎日愚痴ばかり言って、不幸せそうにしていると、女の子は自分も将来幸せになれないと思い込んでしまいます。

そして、結婚についても仕事を持つことについても否定的になってしまいます。
これでは、自分の人生に明るい将来像を描くことは難しくなってしまいます。
このようなわけで、常に子どもに愚痴を聞かせ続けるのはやめましょう。
もちろん愚痴を聞いてくれる相手は必要ですが、子ども以外のところで見つけるようにしてください。

とはいえ、同じ屋根の下で暮らす親子ですから、日々いろいろな話をする中で、愚痴を全く何一つ言わないようにするというのも難しいかも知れませんし、ある意味不自然かも知れません。

実際問題、みんなそんなに完璧な人間ではないですし、愚痴の一つくらい言いたくなるのもわかります。

それに、親が愚痴を言えば、子どもも自分の愚痴を言いやすくなるという側面もあるかも知れません。
これは、心理学でいうところの「自己開示の返報性」というもので、心の中の秘密を打ち明けてもらうと自分も同じ程度の打ち明け話をしたくなるという法則です。

例えば、親が会社でパワハラに遭っているとか、同僚からいじめられたなどという話をすると、子どもも「実は自分も友達にいじめられている」という話がしやすくなります。

つまり、自分も愚痴を言っていいんだという気持ちになれるわけです。

常に明るく前向きでポジティブ、イケイケドンドン、愚痴や暗い話は一切ナシ、という雰囲気だと、子どもも愚痴をこぼしにくくなるという面もあるかも知れません。

また、愚痴の内容によっては「お母さん、お父さんも大変だな。大変な中でがんばってくれている。私もがんばろう」というようにとらえてくれるかも知れません。

ですから、「子どもの前で親は愚痴を全く何一つ言わないようにしよう」というのも極端すぎるのかも知れません。
愚痴の内容にもよりけり、程度にもよりけりで、TPOを考えて、ちょっとくらいなら愚痴もOKというところでしょうか。

※TPOとは、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)の略。

たまには、仕事の愚痴を言ってしまうかも知れません。
でも、それだけでなく、仕事の楽しさ、やりがい、達成の喜び、社会的な意義、なども伝えましょう。

たまには、夫の愚痴を言ってしまうかも知れません。
仕事ばかりで家族サービスがないとか、家事を手伝わないとか、靴下が脱ぎっ放しでしょうがない、など…。

でも、それだけでなく、次のことも伝えてあげましょう。

「お父さんはいつもあなたのことを思っているよ。口では言わないけどね」
「お父さんはあなたのことが大好きなんだよ。だから仕事もがんばっているんだよ」
「お父さんが今やってる仕事って、地球温暖化の解決に役立つんだよ」

ということで、今回は前半で目指すべき理想論を、後半で現実論を書きました。

最後に付け足しです。

ストレスを溜め込んでいると愚痴が多くなりますから、ストレスを上手に発散させることが大切です。

多すぎる仕事は精選する、ストレス解消法を持つ、愚痴を聞いてくれる相手をたくさん見つけるなどです。

ストレスを上手に発散する方法については、本連載の次の記事もご参考にしてください。
↓↓↓↓↓
子どもに対してイラつき、カッとなってしまいます
http://benesse.jp/kyouiku/200708/20070822-1a.html

子どもに対し、イライラして怒鳴ってしまいます【後編】
http://benesse.jp/kyouiku/200809/20080930-3b.html

ものの見方や考え方の癖を変えることで愚痴が減ります。
それについてはリフレーミングや認知行動療法が効果的ですから、「リフレーミング」「認知行動療法」などで検索してみてください。

また、次の記事もご参考にしてください。
↓↓↓↓↓
子どもの言動をすぐ悪いほうにとってしまう
http://benesse.jp/kosodate/201608/20160823-2.html

子どもに対してパパを立てる方法については次の記事をご参考にしてください。
↓↓↓↓↓
単身赴任のパパと子どもの関係
http://benesse.jp/kyouiku/201408/20140826-2.html

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

(筆者:親野智可等)

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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