単身赴任のパパと子どもの関係[教えて!親野先生]
仕事の都合と家庭の事情で、旦那、つまり子どもたちのパパが単身赴任することになりました。初めてのことなのでいろいろ不安で、特に子どもへの影響が気になります。これから、パパと子どもたちの人間関係をうまく保っていくにはどうすればいいでしょうか? (PFすみずみ さん:小学1年生と年中の女子)
親野先生からのアドバイス
PFすみずみさん、拝読しました。
初めての単身赴任ということで、親子ともども不安な気持ちになりますね。このような場合、大切なのは常にパパと心のつながりを保ち、子どもがその愛情を実感できるようにしてあげることです。
ですから、たとえ短時間でもいいので毎日コミュニケーションを取るといいですね。
そのために、ITを活用するといいでしょう。イチオシはSkype(スカイプ)です。これを使えばテレビ電話やチャットが簡単にできます。しかも、無料です。声だけの電話より、やはりパパの顔が見られたほうがいいでしょう。
その日の出来事、うれしかったこと、イヤだったことなど、なんでも、相手の顔を見ながらおしゃべりできるのでコミュニケーションが取りやすいです。お互いの愛情も伝わります。
このほかにも、wellnote(ウェルノート)などの家族限定で使えるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)もいいかもしれません。
衣替えをした、てるてる坊主を作った、プールに行ったなど、日常のあれこれを書き込んだり、写真をアップしたりできます。それを見て返事を書くこともできます。
もちろん、ネットなのでセキュリティーの設定やパスワードを使い回さないなど、安全面の配慮は必要です。
このほかにも、メールもいいですし、たまには紙の手紙やはがきもいいですね。
ここで、私が先生になって初めて教えた、ある女の子のことを思い出したので紹介します。
その子のパパは遠洋航路の船員さんで、子どもと離れていることが多い人でした。
家庭訪問でその家に行ったら、玄関にパパの写真がいっぱい貼ってありました。親子3人で写った写真(一人っ子なので)、ご夫婦のツーショット、パパと女の子のツーショット、七五三のお宮参り、3人で食事をしているところ、遊園地で遊んでいるところなどなど、本当にたくさんありました。
それらの写真を見ただけで、その子がいかに大事にされ愛されているかが伝わってきました。その子は、玄関を通る度にそれらの写真を目にして、パパとママの愛情を感じているはずです。
保護者の愛情を伝えるうえで写真の効果は大きいと思いますので、ぜひ、やってみてほしいと思います。
パパがいないときにも、会話の中にパパを登場させるのもいい方法です。
たとえば、夕ご飯を食べながら、「パパも夕ご飯食べたかな?」とか「パパは今日何を食べるのかな?」と話題にします。
子どもが帰宅して、「今日、縄跳びで一番になった」と言ったら、一緒に喜んであげて、次に「パパにも教えてあげたら喜ぶよ」と言ってあげましょう。ちょっと困ったことがあったら「パパならどうするかね?」「パパなら何て言うかな?」と言ってみましょう。
ただし、「そんなことしているとパパに言うよ」とか「言うこと聞かないとパパに叱ってもらうよ」などの登場の仕方では悲しいですね。
夏休みや休日など時間が取れるときは、母子でパパの単身赴任先の家に遊びに行ってみるといいですね。
できたら、パパが働いている職場も見せてあげましょう。そのとき、パパの家や仕事場に家族や子どもたちの写真を置いておくといいですね。パパも自分たちのことを気にかけているんだ、ということが伝わります。
パパが家に帰ってきたときは、子どもがパパの愛情を実感できるようにしてあげてください。たまに帰ってきたと思ったら、細かいことで否定的に叱ってばかりというのが一番まずいパターンです。
「ちゃんと片付けなきゃダメだろ」「自分から勉強しなきゃダメだろ」「ママの言うこと聞かなきゃダメだろ」「なんだこのきたない字は?」「パパがいないからっていい加減なことしてちゃダメだよ」「パパが安心して仕事できるようにお前もがんばらなきゃ」「お姉ちゃんなんだから、わがまま言わずにママを助けなきゃダメだろ」
これでは愛情を実感するのは難しいです。それどころか、「パパといるとつまらない」とか「パパは私のことが嫌いなのかも」などと感じてしまいます。
ですから、否定的に叱ったり小言を言ったりするのは一切無しにして、その反対に子どもをたくさんほめましょう。そうすれば、子どもはパパの愛情を実感できるようになります。
また、子どもの話をたっぷり聞いてあげることも大事です。
子どもはパパと楽しくおしゃべりしたいと思っていますから。
子どもの話を聞くときに大事なのは共感的に聞くことです。うれしいことは一緒に喜び、悔しいことは一緒に悔しがり、頭にくることは一緒に怒るようにしましょう。
「うん、うん」とうなずいたり、語尾を復唱したり、気持ちを代弁してあげたり、言い換えてあげたりなどの聞き方も効果的です。
「パパは自分の気持ちをわかってくれる。許してくれる。味方になってくれる」と感じられるようにしてあげましょう。
これはとても大切な点ですから、いつも意識していてください。なぜなら、子どもにとって信頼できる大人とは、自分のことをわかって許してくれる人のことだからです。
また、スキンシップも大事です。ハグして抱きしめてあげる、じゃれ合う、一緒に遊ぶ、共同作業するなども大切にしましょう。
パパとママもお互いの話を共感的に聞き合うようにするといいでしょう。なぜなら、お互いに大変だからです。
パパがいないことで、ママの負担が増える部分はたくさんあります。PTAの役員、親戚付き合い、地域との付き合いや各種当番なども、全部ママがやることになります。
パパのほうもけっこう大変で、仕事と生活の環境が一変するだけでもストレスです。加えて炊事・掃除・洗濯などの家事もやらなければなりません。
夫婦というものは、お互い「自分のほうが大変」と思ってしまいがちです。でも、自分に見えない部分で相手には苦労があるのです。ですから、とがめ合い責め合うのではなく、お互いの話(愚痴)に共感し合い許し合うようにしましょう。
あとで振り返ってみて、「あのときむしろ家族の絆が強まった」と思えるようになるといいですね。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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