2022年度埼玉県私立中学入試速報

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1月10日に埼玉県で私立中学入試がスタートしました。それぞれの学校の志願者数の推移などの動向について、森上教育研究所がお伝えします。

受験生の千葉から埼玉へのシフトが一層強まり、受験生増加へ

背景にコロナウイルス感染拡大への不安

2022年度の埼玉の受験者動向において特筆すべき点は、全体的な受験生の増加です。埼玉の学校の受験生が増えることは事前に予想されていましたが、蓋を開けてみれば予想を上回る相当な増加となりました。その背景にはコロナウイルスの感染拡大があります。

埼玉の学校は1月10日から入試が始まりますから、東京、神奈川の入試が始まる2月1日まで1か月近くの期間があります。第1志望校を受ける直前に併願校を受験してコロナに感染してしまうのは避けたいという考えから、1月下旬に行われる千葉の学校ではなく、埼玉の学校を選ぶ傾向が強まったと考えられます。

公立中高一貫校の開校も受験者層の掘り起こしにつながる

埼玉の受験者の増加の要因としてもう一つ言えるのは、公立中高一貫校の相次ぐ開校です。2019年にさいたま市立大宮国際、2021年に川口市立高等学校附属と埼玉で公立中高一貫校の開校が続いたことが下支えとなって、埼玉の中学受験者層の掘り起こしがなされたと考えられます。これに首都圏からの受験生が加わったことで、全体的な受験者増につながったのでしょう。

ただ、受験者が増えたとはいっても、元々埼玉の学校は一部を除いて倍率が2倍を越えるところは少ないのに加えて、受験者が増えた分合格者も多く出すスタイルを取っています。したがって、受験者数の増加がすぐに高倍率につながるとは考えにくいので、その点は、安心して受験ができる入試状況であることも受験生増につながったと思われます。

利便性の高い地域・そうでない地域とも満遍なく受験生増

難関校も志願者数増、中堅校も地域を問わず増加傾向

個別に見ていくと、昨年度は難関校については受験者を減らす傾向にありましたが、2022年度は難関校も増加が基調となっています。開智は一部で若干の減少となった以外は志願者数は全体に増加しています。栄東も同様に最も受験者数の多い東大難関大A日程で男子の志願者は前年比1.12倍、女子は1.25倍に増加しています。

学校名 試験名 入試日 男女 募集定員 22年度
受験者数
21年度
受験者数
受験者数
前年比
開智 先端1 1/10 110(帰国含) 797 800 1.00
開智 先端1 1/10 男女合算 563 596 0.94
開智 先端2 1/15 40(帰国含) 324 219 1.48
開智 先端2 1/15 男女合算 214 154 1.39
栄東 A日程 1/10・11 140 4,390 3,859 1.14
栄東 A日程 1/10・11 男女合算 2,479 1,943 1.28
栄東 B日程 1/16 40 925 1,031 0.90
栄東 B日程 1/16 男女合算 582 578 1.01

※開智、栄東のデータを掲載

中堅進学校の大宮開成も年々受験者数を増やしていますが、2022年度はすべての入試日程で大きく受験者を増やし、男子の志願者は前年比1.37倍~1.53倍、女子は1.21倍~1.30倍の伸びとなっています。首都圏からのアクセスの良さが受験生を引き付けていると思われます。

学校名 試験名 入試日 男女 募集定員 22年度
受験者数
21年度
受験者数
受験者数
前年比
大宮開成 第1回 1/10 約80 1,174 840 1.40
大宮開成 第1回 1/10 男女合算 927 766 1.21
大宮開成 第2回 1/14 約20 510 341 1.50
大宮開成 第2回 1/14 男女合算 354 264 1.34

※大宮開成のデータを掲載

また、昨年度はアクセスが良く利便性の高い地域の中堅校が受験者数を大きく伸ばしましたが、2022年度はどの地域も満遍なく増えているのが大きな特徴です。獨協埼玉、浦和実業、城西川越といった首都圏から交通の便の良い学校だけでなく昌平や大妻嵐山、開智未来といったやや首都圏から距離のある地域の学校でも受験生は増加傾向にあります。

学校名 試験名 入試日 男女 募集定員 22年度
受験者数
21年度
受験者数
受験者数
前年比
獨協埼玉 第1回 1/11 50 768 642 1.20
獨協埼玉 第1回 1/11 50 583 531 1.10
獨協埼玉 第2回 1/12 20 207 146 1.42
獨協埼玉 第2回 1/12 20 133 95 1.40
獨協埼玉 第3回 1/17 10 123 64 1.92
獨協埼玉 第3回 1/17 10 77 58 1.33
浦和実業学園 第1回適性検査型 1/11 10 163 154 1.06
浦和実業学園 第1回適性検査型 1/11 男女合算 208 189 1.10
城西川越 総合一貫第1回 1/10 約60 225 195 1.15
城西川越 特別選抜第1回 1/10 約25 145 105 1.38
城西川越 特別選抜第2回 1/11 特選一回含 135 125 1.08
城西川越 総合一貫第2回 1/11 総合一貫一回含 85 79 1.08
城西川越 総合一貫第3回 1/15 総合一貫一回含 38 35 1.09
大妻嵐山 まなび力 1/10 30(まなび力エキスパート含) 48 73 0.66
大妻嵐山 第1回一般 1/10 30 374 232 1.61
大妻嵐山 奨学生 1/11 20 82 74 1.11
大妻嵐山 第2回一般 1/11 1回一般含 97 243 0.40
開智未来 探究2 1/12 約20 45 48 0.94
開智未来 探究2 1/12 男女合算 34 39 0.87

※獨協埼玉、浦和実業、城西川越、大妻嵐山、開智未来のデータを掲載

青山学院浦和ルーテルなど一部の学校は減少へ

2022年度に大きく減少に転じたのは、昨年人気が過熱気味になっていた青山学院浦和ルーテルです。昨年は実質倍率が男子は5倍、女子は3倍から4倍という大変な人気となりましたが、その反動で男女とも5割以上志願者を減らしています。

学校名 試験名 入試日 男女 募集定員 22年度
受験者数※
21年度
受験者数
受験者数
前年比
青山学院大学系属浦和ルーテル学院 第1回 1/10 15 89 165 0.54
青山学院大学系属浦和ルーテル学院 第1回 1/10 男女合算 153 279 0.55
青山学院大学系属浦和ルーテル学院 第2回 1/12 10 43 99 0.43
青山学院大学系属浦和ルーテル学院 第2回 1/12 男女合算 87 167 0.52

※データ未公表のため昨年度データ・志願者数からの推定値

※青山学院浦和ルーテルのデータを掲載

男子校の城北埼玉も今年度は受験者を減らし、志願者は前年比0.78倍から0.96倍になっています。これは同じ沿線にある城西川越に受験生が流れたことが考えられ、一方が人気が出れば一方がやや落ち込むという形になっていると考えられます。

学校名 試験名 入試日 男女 募集定員 22年度
受験者数
21年度
受験者数
受験者数
前年比
城北埼玉 特待 1/10 10 413 538 0.77
城北埼玉 第1回 1/12 100 619 680 0.91
城北埼玉 第2回 1/15 40 235 290 0.81
城北埼玉 第3回 1/18 10 123 140 0.88

※城北埼玉のデータを掲載

まとめ & 実践 TIPS

2022年度の埼玉入試では、全体的に受験生が増加しました。背景にはコロナウイルスの感染拡大による千葉から埼玉への受験シフトと、公立中高一貫校の相次ぐ開校による地元の受験者層の掘り起こしがあると考えられます。難関校・中堅校、利便性の高い地域・そうでない地域の別なく受験生が増えましたが、昨年人気が過熱気味になっていた青山学院浦和ルーテルについては反動で大きく受験者を減らしました。

※記事内では一例として、一部の中学校や一部の入試方式の情報を紹介しています(2022年2月11日時点)。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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