中学受験に英語は必要?2 議論する力をどう育てるか[中学受験]

英語教育をめぐる近年の変化は著しく、中学入試においても、「英語入試」や「グローバル入試」を新設する学校が増えています。
前回に続き、英語教育に詳しい右田邦雄先生に、今後ますます必要となってくるコミュニケーション力と、それを身につけるため、小学生時代にできることについてうかがいます。

母国語の会話で磨けるコミュニケーション力

英語、日本語を問わず、コミュニケーションの場では、相手が理解しやすい具体例を挙げて自分の考えを伝える「具体化」と、相手の話の要点をまとめる「一般化」の力が必要となります。
このような力を身につけるには、日常会話の中で、相手にわかりやすいように話す習慣が大切です。「どうして帰りが遅くなったの?」「電車」「電車がどうしたの?」「止まった」……日頃こんな単語だけのような会話をしていたら、コミュニケーション力は育ちません。母国語での日常会話がこうなのに、英語で具体化や一般化ができるはずがありません。

実は親子のような緊密な関係であればあるほどコミュニケーションは簡素化し、簡単な会話で済んでしまう面があります。特に大人が先回りをして、子どもの意図を先へ先へと汲んでしまうと、子どもはしゃべる必要もなくなってしまいます。
英語以前に、お子さまのコミュニケーション力を育てるには、大人が先回りしすぎず、子どもにたくさん話させ、互いにおしゃべりを楽しむ習慣が大切です。

「模擬国連」で痛感した交渉力の必要性

また、今後さらに求められるスキルは、英語による交渉力ではないかと思います。それを痛感したのは、2015年、シンガポールで行われた「模擬国連」でした。
模擬国連とは、実際の国連さながらに、各国の学生たちが国の代表として国際問題について話し合い、最終的にある意見を採択するというイベントです。本校からも、英語の得意な高校生の希望者が参加しました。

驚いたのは、インドや中国といったアジアの高校生たちは、実際の国際社会よろしく、初めて会う各国の高校生たちと事前交渉(ロビー活動)を行って、どんどん賛同者を得ていることでした。
つまり、本会議が始まる前に、既に大勢は決しているのです。日本の生徒たちは、事前に覚えてきたことを壇上で一生懸命発表しましたが、ほとんど誰も聞いていませんでした。
日本の生徒は英語力があっても、そんなタフな交渉をした経験がありません。ぽつんと隅に追いやられてしまう生徒を見ていて、ただ自分の意見を「発表する」だけでなく、相手と意見を戦わせる経験が必要だと痛感しました。これも、母国語で議論できなければ英語での議論など望むべくもありません。

小学生も、中学年以上になると論理性も育ち、相手の立場に立って物事を考えられるようになってきます。テーマは「次の連休はどこへ遊びに行くか」といった身近なことで構いませんので、めいめいの考えやその根拠を述べ合い結論に至る議論の流れを、ご家族で楽しんでみてはいかがでしょうか。
相手が納得するような話し方をし、互いの立場を考えながら合意に至るにはやはり、先ほどの「具体化」と「一般化」のスキルは不可欠です。

プロフィール

右田邦雄

都立高校教諭から東京学芸大学附属中・高校を経て、現在宝仙学園理数インター教頭。専門は英語教育学(東京学芸大学)、TESOL(キャンベラ大学)。

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