地方公務員とはどんな仕事?なるには?職種6つと仕事内容や試験内容を紹介

地方公務員の仕事はじつに多岐にわたります。身近な存在である市役所職員や公立の学校の先生など、どれもなくてはならない職業でしょう。地域に貢献できるため、やりがいも大きく就職先としても根強い人気です。そこで、地方公務員の仕事内容や6つの職種、なるための方法から、どんな人が向いているのかについてわかりやすく解説します。

地方公務員とは?

地方公務員とは、「地方公共団体」という組織に所属し、都道府県・市町村などの地方自治体で働く公務員のことです。英語ではLocal civil servantといいます。

公務員には国家公務員と地方公務員の2種類がありますが、日本の公務員の約8割以上は地方公務員といわれています。地方公務員にはさまざまな区分があり、市役所や区役所、県庁などに勤務する職員、公立学校職員や警察官、消防官なども地方公務員にあたります。

地方公務員の仕事内容とは

安全に暮らすための治安や消防、水道、清掃、ごみ処理、交通、教育や文化事業、医療など多岐にわたります。

具体的には、県庁や都庁、政令指定都市の職員、市役所や区役所、町役場、村役場の職員、警察官や消防官、公立の学校職員、図書館、病院や福祉施設職員、上下水道、清掃・ごみ処理などの「地域の生活を支える仕事」といえるでしょう。

なお、知事・市町村長、地方議員も地方公務員ですが、これらの役職は地方公務員法により「特別職」に分類され、その他の公務員は「一般職」となります。

国家公務員との違いとは?

公務員には「国家公務員」と「地方公務員」の2種類があります。地方公務員が先述のとおり、県庁や市役所、警察署など地方自治体で働くのに対し、国家公務員は国の行政機関や独立行政法人で働きます。
具体的には、経済産業省や文部科学省といった省庁、国会、裁判所などの国家機関、税務署などで勤務します。

地方公務員になるためには

地方公務員になるには、「地方公務員試験」に合格し「採用候補者名簿」に名前が記載されたうえで採用されなければなりません。試験は、一次試験が筆記、二次試験が面接となっています。各地方自治体が独自に試験を行うため、試験内容・受験資格は地域によって違うので注意が必要です。

特別な資格が必要?

地方公務員試験を受験する際、行政職・技術職であれば、基本的に受験年齢に該当していること以外に必要な資格はありません。
ただし、職種によっては資格が必要な「資格免許職」があります。具体的には「看護師」「助産師」「理学療法士」「保育士」「栄養士」「教員」などが該当します。これらは、採用試験を受験するのに資格免許取得(見込み)が条件となり、決められた期日までに資格取得できなかった場合は、採用されません。

地方公務員試験に合格することが必要

地方公務員になるには「地方公務員試験」に合格することが必要です。試験には分類があり、上級(大卒程度)、中級(短大卒程度)、初級(高卒程度)と学歴や、類型Ⅰ・類型Ⅱ・類型Ⅲと職種で分けられています。

また、警察官・消防官、公務員としての看護師・薬剤師は個別に試験が行われます。

地方公務員試験は資格試験ではなく就職試験と同等で年齢制限があり、定年を超える方は受験できません。そのため、希望する自治体の年齢制限を確認しておくことが重要です。

地方公務員試験の内容

地方公務員試験は、一次試験と二次試験とにわけられます。下記に一般的な試験内容の例をご紹介します。具体的な試験内容は、自治体や職種により異なるケースがあるので個別に確認しましょう。

・一次試験
筆記試験となり、おもに、教養科目と専門科目の問題が出題されます。教養科目では「文章読解」や「数的処理」に加え「人文科学」「自然科学」「社会科学」「時事問題」と幅広い分野が出題されるので、5教科7科目をまんべんなく勉強する必要があります。
専門科目は、行政や法律、経済などの科目から出題されます。

・二次試験
二次試験では面接が中心です。個別面接の場合もあれば、集団面接やグループディスカッションのケースもあります。志望動機なども尋ねられますので、しっかり準備しておきましょう。

大卒の人が地方公務員になる方法

大卒で地方公務員を志す際の目指し方、目指せる職種についてご紹介します。

一般的な目指し方

大卒で地方公務員になるには、「大卒程度」の区分の地方公務員試験を受験するのが一般的です。希望に応じて、地方公務員試験(上級)や市役所試験、警察官採用試験、消防官採用試験、教員採用試験などを受験します。

目指せる職種

大卒で目指せる地方公務員の職種には、次のようなものが挙げられます。

・地方公務員試験(上級)を受験した都道府県職員、政令指定都市職員
・市役所(大卒程度)を受験した市町村職員
・大卒程度の区分の警察官採用試験を受験した警察官
・大卒程度の上級(Ⅰ類)消防官試験を受験した消防官
・教職員など

高卒の人が公務員になる方法

高卒で地方公務員を目指す際の目指し方、目指せる職種についてご紹介します。

一般的な目指し方

高卒で地方公務員になるには、「高卒程度」の区分の地方公務員試験を受験するのが一般的です。具体的には地方公務員試験(初級)や、市役所試験(初級)、高卒程度の区分の警察官採用試験や消防官採用試験を受験します。

目指せる職種

高卒で目指せる地方公務員の職種には、次のようなものが挙げられます。

・地方公務員試験(初級)を受験した都道府県職員、政令指定都市職員
・市役所(高卒程度)を受験した市町村職員
・高卒程度の区分の警察官採用試験を受験した警察官
・高卒程度のⅢ類消防官試験を受験した消防官など

地方公務員にはどんな人が向いてる?

地方公務員は、地域とそこに暮らす人々との距離が近い仕事を任されます。そのため地域への愛情があり、人と接するのが好きな人に向いているでしょう。
その他には、次の3つの特性を備えていることが求められます。

地域をよくしたいという思いが強い人

地方公務員は、地域に密着した仕事を行います。そのため、地域の暮らしをよくしたい、地域に住む人に幸せや安心を届けたい、より魅力的な地域にしていきたいと、地域への貢献意欲が強いことが求められます。行政サービスを行うには、課題や難しい調整もつきものです。そんな時も、地域をよくしたいという貢献意識が強ければ、適切に対処していくことができるはずです。

住民の意見を平等に聞く誠実さ

地域住民の暮らしを守る公務員には、公平で高い倫理観が求められます。行政サービスを行うには、あらゆる立場の人の意見や視点を理解し、地域社会全体にとって最適・最善な取り組みを行うことが必要不可欠です。そのため、分け隔てなくあらゆる住民の意見を聞き、理解しようとする誠実さが求められます。

課題解決能力

時代の変化に伴い、地方行政にもこれまでに例を見ないさまざまな課題が山積しています。そのため、新しい考え方、斬新な考え方で課題解決を行える人へのニーズが高まっています。過去を踏襲するのでなく、新しいチャレンジで改革を進めていける高い課題解決能力を磨けるとよいでしょう。

地方公務員の主なメリット4つ

地方公務員は、地域に貢献できるやりがいはもちろん、働く環境としてもメリットが大きいといわれています。具体的に4つご紹介します。

収入が安定しやすい

民間企業に比べて、地方公務員は業績や経済に左右されにくいため、収入が安定しやすい職業だといわれています。国や自治体から税金によって給料が支払われるためです。

年齢や経験で給料が上がり、各種手当も充実しています。総務省「令和3年地方公務員給与実態調査結果等の概要」によると、全国の平均給与月額は約36万円(一般行政職の場合)となっています。(※1)
給与に関しては年功序列の傾向が強い印象ですが、勤務実績・成果に応じ、それを給与に反映させられるよう改善が行われつつあります。

※1 令和3年地方公務員給与実態調査結果等の概要(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000784529.pdf

福利厚生がしっかりしている

地方公務員は基本給のほかに付く手当てである「福利厚生」が充実しています。扶養手当や育児休暇、児童手当のほか、地域手当、通勤手当、住宅手当、超過勤務手当、期末・勤勉手当、宿日直手当、特殊勤務手当、退職手当、単身赴任手当、広域移動手当などがあります。

また、年次有給休暇や介護休暇、病気休暇、特別休暇など休暇制度も充実し、必要な制度を活用すれば、安定した生活につなげやすくなります。

仕事にやりがいを持てる

地方公務員は各自治体において、そこに住む人々が安心して快適に暮らせる環境をつくるために働いています。制度の整備、各種補助金の交付など、地方公務員の立場となって地域住民のために貢献していきたい人にとってやりがいを持てるでしょう。

地域に密着した仕事も多く、地域をよくしていくための役割を担っています。住民からの意見を取り入れて地域を活性化し、社会の役に立つことにもつながっているのです。

長く勤めやすい

地方公務員は年齢を重ねても、継続しやすい仕事環境が整備されていることが多いため、長く勤めやすいメリットもあります。年功序列で給料が徐々に上がり働くほどに安定していく傾向もあるためです。
また、地方公務員は異動の範囲も同じ自治体内で行われるので、引っ越しが少ないという利点もあります。

地方公務員の代表的な職種6つ

地方公務員の代表的な職種には、専門職・行政職・公安職・福祉職・心理職・技術職などが挙げられます。それぞれの受験資格や必要なスキルには違いがあるため、事前に把握しておくことが大切でしょう。ここでは、業務の特徴や内容についてわかりやすく解説します。

専門職

看護師や薬剤師、獣医師、保健師、栄養士、司書など「特定の免許や国家資格を持った人」を意味するのが地方公務員の専門職です。

また、市や県が運営する公立学校教員や公立保育園の保育士、公立の幼稚園教諭なども専門職にあたります。

「資格免許職」とも呼ばれており、自治体によって採用職種が違い、採用人数はあまり多くありません。

行政職

役所など地方自治体の組織や、各市町村の小中学校などで働く地方公務員を行政職(一般行政職)と呼びます。役所では戸籍や健康、福祉、ごみ問題、まちづくりなど地域住民の生活を支える各種サービスを提供します。

また、学校関係の場合は「学校事務」として各市町村の小中学校などに勤務し、会計や備品管理などの事務を担当することもあります。警察署内では「警察事務」として職員の福利厚生、給与計算、広報などを担当するでしょう。

公安職

警察官や消防官などの、国民の平和のために働き治安維持にかかわる職種を「公安職」といい、その多くは国家公務員です。

しかし、公安や警視庁以外で働く地方の警察官(巡査から警視まで)、消防官は、地方公務員の公安職にあたります。警察官の警視正以上は都道府県勤務であっても国家公務員です。

警察官は都道府県単位、消防官は市町村単位(東京都は都全体で1単位)で採用されます。

福祉職

社会福祉施設や児童相談所などで指導員や相談員として、指導・相談・調査を行う人や、健康福祉局、子供局、区役所などで障がい者や高齢者、児童が対象の社会福祉系専門業務を福祉職といいます。

「社会福祉主事任用資格」が必須の自治体が多く、福祉職および社会福祉区分の公務員試験を行う自治体は都道府県や政令指定都市、特別区が中心です。

福祉系の社会人経験者の採用も増え、中途採用で働く人などもいます。

心理職

都道府県や政令指定都市の自治体に所属し、児童心理士・心理判定員として、心理面接・心理相談・心理学的援助や児童相談所のケースワーカー業務などに就くのが地方公務員の心理職です。

県立病院やこども家庭支援センターでの心理判定等の専門的業務への従事もあります。人の気持ちに寄り添う必要がある仕事で、昨今の社会情勢などにおいても需要が高まっている職種といえるでしょう。

技術職

理系公務員とも呼ばれるのが技術職(技術区分)です。土木・建築・機械・電気・電子・化学・農学などの区分が設けられていますが、「土木・建築・機械・電気」の4区分での採用数が多い傾向にあります。

大学で専攻した知識を生かしやすく、それぞれの分野の技術的な観点から、行政の政策立案や運営をサポートするスタッフとして幅広い場面で活躍できます。

まとめ & 実践 TIPS

「地域に貢献したい」という人にとって、最適な進路選択先の1つである地方公務員。その業務内容や目指し方、試験内容ややりがいを調べる中で、自分が地域のためにしたいことはどんなことだろうと考えを深めていけるといいですね。

参考:
地方公務員 | 大学・学部・資格情報 | Benesse マナビジョン
https://manabi.benesse.ne.jp/shokugaku/job/list/013/

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