登場人物の気持ちがわかっていないのではないか、と心配です[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6女子(性格:大ざっぱ・弱気なタイプ)のお母さま


質問

読書は好きで、同学年の子どもに比べるとよく読んでいるほうです。けれども、国語の物語文で「登場人物の気持ちを書きなさい」のような問題があると、「そんなの、わかるわけない」と、なげやりで、まちがえます。反抗して、わざといい加減なことを書いていると思い、叱っていましたが、小6のこの時期でも、まだいい加減なことを書いている時があり、本当にわかっていないのではないか、と心配です。


小泉先生のアドバイス

「わからない」にはいくつかの段階があるが、保護者のフォローが必要な場合も多い。

●「わかっていない」にも段階がある
「わかっていない」といっても、いくつかの段階があるようです。いちばんやっかいなのが、「わかっていないことがわかっていない」という段階。「わかっていない」ことがわからないはずはないと思いがちですが、そうでもありません。たとえば、問題がやさしい時は、本当にわかっていなくても案外解けるものです。

たとえば、低学年や中学年のやさしい算数の問題は、適当に加減乗除すれば、式の意味もわからずに答えが出てくることが少なくありません。この段階のやっかいなところは、自分がわかっていないことがわからないのですから、少なくとも気が付くまではわかろうとしないことです。結果、問題が難しくなる高学年を迎える時期になって急激に成績が悪化し、ようやく自分が理解していなかったことに気が付くことになるのです。本当にわかっているのか疑問であれば、保護者が子どもに質問するなどして確認することが大切です。

●どこがわかっていないかわからない
次の段階は、「どこがわかっていないのかわからない」というもの。「わかっていないことがわかっていない」よりは一歩前進していますが、それでも何がわからないのかわからないので克服するのは苦労します。たとえば、なぜか国語ができないような場合。成績が悪いことは意識していますが、どうすればよいかわかりません。こんな時に必要なことは、“つまずいている箇所”を探り出すことですが、経験値が少ない小学生が独力で行うのはなかなか難しいと思います。やはり塾の先生に相談するとか、保護者のかたがノウハウ本を買って研究する、あるいはこのコラムを読んで答えを見つけるなどのフォローが必要になります。

なお、塾の先生などに相談するにしても、「大ざっぱな質問」では、やはり「大ざっぱな解決法」しか提示されないでしょう。問題点をできるだけ絞り、そのうえで相談されるほうが得られる回答も大きいと思います。たとえば算数であれば、テストの偏差値が伸びないという悩みを相談するだけではなく、「図形の問題が苦手」「基本問題はできるが応用問題になるとできない」「試験で時間が足りない」など、問題点と思われる事柄をできるだけ詳しくチェックしておくとよいでしょう。それらのことは、模擬試験などを継続的に調べておけばわかってきます。そんなことは塾が把握しているのでは?と思われるかもしれませんが、回答の質を高めるためにも質問の準備は大切だと思います。

●わからないところがわかっている
「わからないところがわかっている」というのが、「わからない」の中でもいちばん症状が軽い段階でしょう。お子さまの場合も、これに属するのではないでしょうか。物語文の「気持ちがわからない」ことがわかっているわけですから、心情表現の論理的なとらえ方を学べばよいだけです。方法はいろいろありますが、ご家庭でも簡単な心情表現を例に、「このような場合にはこのような気持ちを表している」ということをいくつか教えればよいと思います。この時、「本文のこの部分が根拠になっている」という具合に、手順を踏んで、論理的に説明してあげてください。あるいは、ご自宅での指導が難しければ、通っている塾の国語の先生に、「間接的心情表現のとらえ方」を教えてくれるようにお願いするのもよいでしょう。教えてもらいたい内容がはっきりしていますから、十分に対応していただけるのではないかと思います。

ただし、1つ心配な点があります。それは、お子さまの性格が「弱気タイプ」であるということです。このタイプは積極的に行動することが苦手で、ちょっと難しい問題とか自分が不得意なことはなるべく避けようとする傾向があります。既に6年生なのに、「いい加減なこと」と保護者のかたが思えるほどのことを書いているのは、心情表現をとらえることに拒否反応を示しているのかもしれません。そんな場合は、やはり、まずはご自宅で心情表現のとらえ方を簡単に教えて、少し自信を持たせてから塾の先生に質問するほうがよいかもしれません。無理やり聞きに行かせても、なかなかうまくいかない可能性があります。心情表現のとらえ方が論理的に理解できれば、本が好きなこともあり、短期間で伸びる可能性があると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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