第一志望を決める [中学受験 4年生]

受験生の保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。受験勉強のスタートとなる「第一志望の決め方」を取り上げます。



■お子さまにとっての目標は身近に、具体的に

4年生の5月中までには、ぜひ、お子さまに目標を持っていただきたいと思います。目標もなしに努力するのは、お子さまにとってはつらいことです。ですから、目標立てが遅いと、学習への取り組みが遅れてしまうのです。

目標は、お子さまにとって身近で、達成した時の具体的なイメージがわき、わくわくするようなものである必要があります。身近にロールモデルがいれば理想的です。たとえば、近所のお姉ちゃんが○○学園に通っていて、制服姿がさっそうとしてかっこいいとか、いとこのお兄ちゃんみたいに○○中学校のサッカー部で活躍したいとか。
そういう具体的なモデルがいない場合には、目標を身近にするための工夫が必要です。今の段階で、志望校を具体的にイメージできないなら、とりあえずはごほうび作戦でもよいかもしれません。たとえば、週2回塾に行ったらおやつが一品増えるとか、課題をちゃんとこなしたら花まるが付いて、花まるを5個ためると、好きなところに連れて行ってもらえるポイント制とか。「もので釣るのはどうか」とお考えになるかたも多いと思いますが、ごほうびという近い目標の先に、志望校の校風や理念、その先の未来といった遠い目標があればよいのです。
保護者のかたにはぜひこの時期、遠い目標について考えていただきたいと思います。



■まずは「遠い目標と予算」を考える

このあと詳述しますが、志望校は必ずお子さまとよく話し合い、お子さまが自分で選べるようにしてください。その前に、保護者のかたはこの時期、まずはさまざまな学校について大づかみに検討し、志望校の候補を複数挙げておく必要があります。
大切なのは大きな視野です。まず、各学校の主義主張、教育方針や校風、卒業生の進路や課外活動の様子はどうか。同時に、「予算」を考えることも大切です。4年生の春なら、受験までまだ3年近くあるので、予算についてある程度大きな決断ができます。ただし、家計に対して学費が高すぎ、生活に支障をきたすような選択は避けたほうが賢明です。

同時に、受験準備の手段とそのための予算も考えておきましょう。塾か通信添削か家庭教師か、といった手段しだいで予算も大きく変わってきます。



■志望校の候補は、最低でも3校以上は選んでおく

10歳くらいから、自分なりの考えを持つようになってきます。たとえば、それまでは保護者の買ってきた服を素直に着ていたお子さまも、徐々に好みがはっきりして「これは嫌」と言うようになってきたりします。買うのは保護者のかただけれども、使うのはお子さまです。志望校についても、学費を出すのは保護者のかただけれども、実際に学ぶのはお子さまです。ですから、両者がよく話し合って、合意に至る必要があるのです。
9歳までのお子さまとの関係が「コントロール」だとすれば、10歳からは「マネジメント」。コーチとランナーのような関係といってもよいでしょう。
大人だって、勝手に目標を設定されて「がんばりなさい」と言われても、やる気は出ないものです。保護者のかたは、あらかじめ志望校の候補を、最低でも3校以上は選んでおいて、ご自身がその学校がよいと思った理由をよく説明したうえで、お子さまの意見を聞き、ご本人に選んでもらうことが大切です。



■志望校決定は、保護者とお子さまの「交渉事!」

志望校の候補を示したら、お子さまがそれについてどう感じ、どういうふうにしたいかを尊重して、よく聞いてあげてください。4年生ではまだ、考えをうまく言葉にできないかもしれませんが、今から軽く大人扱いを始めるのがよいのです。お子さまが自分の考えを言えたら、どんどんほめてあげてください。また、お子さまの意見がご自分と違っていても、頭ごなしに否定せずに「あなたの考えとは違うかもしれないけれど、私はこう思う」と、ご自分の意見をはっきりと伝えるようにしてください。すると、意思を通すにはどうすればいいか、お子さまも自分なりに考えるようになります。志望校決定は、保護者とお子さまが対等の立場で話し合う最初の機会。大切な「交渉事」だと考えてください。

なお、いくらご本人の意志を尊重したいからといって「どこでもいいよ」というのでは、お子さまも途方に暮れてしまいます。志望校の候補はある程度絞り込んでおきましょう。お子さまがランナーで保護者がコーチだとすれば、お子さまが望む方向へ自分らしく走っていけるよう、コーチはあらかじめさまざまな情報を集めておく必要もあります。その意味では、むしろランナーよりコーチのほうが、学ぶべきことは多いかもしれませんね。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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