計算力はすべての基本! [中学受験 4年生]

中学受験を考える、多くの保護者のかたが持つ悩みは「お子さまがなかなか思うように動いてくれない」ということではないでしょうか。
特に小学生時代、お子さまは遊びながら学ぶもの。大人に強制されて勉強しても身に付きません。保護者の役割は、お子さまが遊びながら学びの世界を広げていけるように、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。

そこで、4年生~6年生のお子さまと保護者のかたに、毎月特に取り組んでほしいテーマについてお話ししていきます。
4月は「計算力」について取り上げます。



■「計算ができない」お子さまが増えている

中学受験の算数に重要なのは「思考力」と思われ、計算力は一段下に見られがちです。たしかに難関校の入試では、文章問題や図形、パズルなど、ひと筋縄ではいかない問題が出題されますが、それらも「計算力」なしでは解けません。計算は、算数・数学の基本です。計算によって、数量の正しい扱い方や論理的な考え方、数学的なセンスを身に付けることができます。
ところが、実は最近、計算ができないお子さまが増えています。その理由は、学校でも塾でも解説に時間が割かれ、お子さまが実際に手を動かして計算のしかたを身に付ける時間が不足しがちなためと考えられます。

たとえば4年生の算数には、2けたのかけ算・わり算、分数の計算など、つまずきやすいポイントが頻出します。新学期の今こそ、基礎的な計算力をしっかり身に付けるようにしてください。計算力が足りないのに、文章題や図形問題に重点を置いては逆効果になります。
一方、6年生も、基礎的な計算力を今のうちに見直しておきましょう。偏差値50前後の中学であれば、計算さえきちんとできれば安心といってよいほど。これは6年生の保護者のかたにもぜひ意識していただきたいですね。



■計算力は遊びで身に付く!

小学生時代は、「遊び」ですべてを覚える時期です。しかも、お子さまの集中力は5分程度しか続かないといわれており、苦役のように延々とドリルをやらせるのは逆効果。特に4年生くらいだと、「やさしいものから」「ゲーム感覚で」取り組むことが大切です。

●やさしいものから
初学者には、感覚で答えが出るくらいやさしい問題を解いて、どんどん正解を積み重ねていけるカリキュラムが向いています。このような学習法を「リニア(直線)カリキュラム」といいます。正解を積み重ねることで達成感も得られますし、正しい考え方や手順が身に付いていくのです。正解したら、どんどん花まるを付けてあげてください。急に問題を難しくしたり、量を多くしたりしないこと。お子さまが「もっと難しい問題出して!」と言ってくるまで待てれば理想的です。

●ゲーム感覚で
「勉強」ではなく「遊び」にするためには、ゲーム感覚が必要です。たとえば……

 ・スピードを競う(5分で何問解けるか? など)
 ・正答率を競う
 ・ごほうびをあげる(正答率が8割越えたらおやつが1個増える!など)
 ・なぞなぞにする。なぞなぞ形式の算数の本を使ってみるのもよいですね。)

ごほうびや点数をゲットすることが好きな子もいれば、じっくり問題と向き合いたい子もいます。お子さまの性格に合わせて、出題のしかたを工夫してあげてください。
また、取り組み方を自分で選ばせ、「今日はスピードで勝負!」「今日は正答率!」などと変化を付けてあげるとよいですね。



■具体的な「もの」を使うと数の感覚が身に付く

お子さまは抽象的なものより、具体的なものの「感覚」で学ぶことが得意です。感覚で理解したものはしっかりと身に付き、忘れにくくなります。
ですから、たし算・ひき算は「線分図」、かけ算・わり算は「面積図」というふうに、絵や図を使って教え、具体物と「数」という抽象を結び付けてあげることが大切です。

たとえば、1個、2個と数えられるものの計算はわかっても、水のような「量」の感覚が、お子さまにはつかみにくく、単位をごっちゃにしたまま計算してしまったりします。そんな時は、実際に水を入れたペットボトルなどを使って説明してあげましょう。
時計の60進法なども、実際にアナログの時計を使って説明すれば理解しやすくなります。今の時計はデジタル表記がほとんどなので、感覚がつかみにくいんですね。「15時ってこの丸い時計の何時のこと?」などと、なぞなぞを出してあげるのもよいですね。
また、トランプや将棋、マージャンなどのゲームも、先を読んだり、どんな手順を踏めば勝てるかを予測したりすることが必要ですから、計算力を養うのに役立ちます。

お子さまたちは、保護者のかたとのやりとりそのものが好きです。1日のわずかな時間でかまいませんので、ぜひ、お子さまと「計算なぞなぞ」の時間を楽しむ時間をつくってあげてください。保護者自身が面倒、計算は嫌いと思っていたら、その気持ちもお子さまに伝わってしまいます。ですから、まずは保護者自身が楽しむことがいちばん大切かもしれませんね。

『小学4年~6年生 考える力がつく算数脳パズル 鉄腕なぞぺー』『小学4年~6年生 考える力がつく算数脳パズル 鉄腕なぞぺー』
(高濱正伸著、草思社)

<草思社/高濱正伸(著)/1,404円=税込>

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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