将来に対する子どもの考え方[中学受験]

2012年の難関・上位ランクを狙う中学受験生の傾向として、女子は理系に強い学校を選ぶことがわかってきた。これは中学受験だけではなく大学受験でも顕著に表れている。女性が社会に出て自立していくためには、理系大学で得られる資格や学歴が必要であることを裏付けている。大手塾の先生によれば、理系の中でも「医・歯・薬」のような医療系をめざしている中学受験生が多いそうで、将来を考えて受験に取り組んでいるようだ。

2年ほど前に、中学受験生は将来をどのように考えているか調査した。受験生にはアンケートを行うことが難しかったため、中学に入学したばかりの中学1年生の保護者にアンケートを行い、お子さんが将来をどのように考えているかを質問した。下の3つの表は、アンケートの設問「お子さんは、将来どのような生き方をしたいと思っていますか?」の回答をまとめたものだ。ここでは、子どもが、どのような将来を希望しているかについて、男子と女子での差異や共通点は何かを分析してみたい。

下に掲げた表で、「平均点」は「1.とてもそう思う」~「4.まったくそう思わない」を「1点」~「4点」として、回答者の平均を計算した。2.0点以下は肯定的(青)、2.6点以上を否定的(桃)、それ以外は「中間的」(緑)として色分けした。


将来に対する子どもの考え方




男女で共通する肯定的な生き方は「(7)社会の中で自分が果たすべき役割を見つけたい」と、「(8)自分の夢を実現するためにがんばりたい」で、女子は肯定的だが男子は「中間的」な生き方は「(5)責任は重くても、やりがいのある仕事がしたい」であった。また、男女で共通する否定的な生き方は「(4)多少退屈でも平穏な生涯を送りたい」で、男子は否定的だが女子は「中間的」な生き方は「(3)他人に負けないようがんばり続けたい」であった。

生き方を分類すると、(1)(3)(6)は現実的な人生(紫)、(2)(4)は平穏な人生(黄)、(5)(7)(8)は理想の人生(橙)のように3つに分けられる。女子の場合は、理想の人生を肯定的に、平穏な人生を否定的(つまり、(2)は「中間的」だが、やや否定的)に、現実的な人生を「中間的」とする傾向がある。しかし、男子の場合は、女子と同じような傾向も見られるが、異なっているところもある。
たとえば、平穏な人生では(4)は否定的で傾向どおりだが、(2)は「中間的」となっている。現実的な人生では(1)(6)は「中間的」で傾向どおりだが、(3)は否定的だ。女子のほうが人生に対し、明確な傾向があるように思える。

医・歯・薬のような医療系をめざすのは、人のために尽くすという理想の人生とも考えることもできるが、確実に将来の仕事を確保するという現実的な人生とも考えられる。アンケートの結果では、女子は現実的な人生に「中間的」であったが、現実的な人生を選択する女子が増えてきたのではないか。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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