立正大学 心理学部 対人・社会心理学科 (2) 人間の心理や行動を知る手法を身につければ仕事や生活に生かされる[大学研究室訪問]

日本が転換期を迎えた今、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。連載3回目に訪れたのは、恋愛やコミュニケーションなど、日常生活に密着した「対人・社会心理学」を研究している、立正大学の川名好裕教授の研究室。前回に引き続き、後編の今回は、心理学や仕事や生活にどのように活かされるかなどについてうかがいました。



■調査結果の分析のため、統計処理の専門ソフトのマスターは必須

心理学部の学生たちは、1~2年生のうちは心理学の基礎を勉強し、3年生からは自分の興味のある先生のゼミに入って、より専門的な勉強をしていくことになります。私のゼミでは、3年生の前半は、アンケートや観察、実験など、社会心理学の研究法を学び、3年生の後半は、過去に行われた重要な研究例や、最近の研究を学んでいきます。そして、4年生になると、各自が自分が興味を持つ卒業論文のテーマを見つけ、取り組んでいくのです。私の研究室には、過去の先輩たちの卒論がすべて閲覧できるようになっていますから、そうした中からテーマを見つけ、さらに深めていくこともできます。


研究室に並んだ過去の卒業生の卒論ファイル。 先生にとっても学生たちにとっても貴重な財産だ

研究で大切なのは、数値に置き換えることです。たとえば、「好き」という気持ちをアンケートで聞く場合、「とても好き」から「とても嫌い」まで7段階に分けて聞いていきます。数値にして分析することで、心理の傾向や法則がはっきりと浮かび上がってくるのです。分析には統計処理の専門的なソフトを使用するため、コンピュータの知識や技能が欠かせません。心理学は文系の学問ですが、こうした数学的な素養も求められることは、頭に入れておいたほうがよいでしょう。

■マーケティングや商品企画にも、大きな力になる

社会心理学の研究方法を本格的に学べば、社会調査士の資格をとることができます。大学院に進んでさらに上級の資格をとり、研究者への道を進む人もいますが、大部分の卒業生は一般の企業に就職します。しかし、研究室で学んだことが社会に出て役立たないわけではありません。人間の心理や行動について考察することは、マーケティングや商品企画など、仕事のさまざまな場面で求められます。社会心理学の正しい調査方法を学び、統計処理の技術を身に付けておくことは、そんな時に大きな力となるでしょう。

また、血液型性格診断の例からもわかるように、社会心理学を学ぶと、世の中で常識とされることの間違いや、その裏に隠れた意外な真実がわかります。そうしたことを知った経験は、仕事に限らず実生活でも活かされるのです。たとえば「虫歯を防ぐには歯を磨くのがいちばん」「ダイエットには運動が効果的」というのは、本当でしょうか? そうした常識をうのみにせず、実験をして確かめたりすることは、仕事に限らずさまざまな点で、皆さんの生活を豊かにしてくれるでしょう。



■高校までの授業では教わらないが、心理学は社会で役立つ身近な学問

私が心理学に興味を持ったのは、小学6年生の時、NHKテレビの『生活の知恵』という番組がきっかけでした。『頭の体操』シリーズの著者として知られる多胡輝(たご・あきら)先生が番組の中で行った心理学実験に興味を持ち、心理学という学問の存在に気付いたのです。その後、医者になろうと思った時期もありましたが、大学生の時に再び心理学の世界にひかれ、心理学者の道へと進みました。

日本の教育課程では心理学は高校の科目にはありませんが、多くの人から興味をもたれている科目です。特に社会心理学は、社会で生きていくうえで役に立つ、誰にとっても身近な学問です。大学で心理学を専攻するかは別として、高校生のうちから一般的な入門書を読んでおくことは、生活のさまざまな場面で生かされ、人生を豊かにしてくれると思います。


OBに聞きました!

榎本静花さん(2010年卒業、聖徳大学大学院臨床心理学研究科在学中)

興味を持っていた以外のテーマにも触れ、いろいろな視点から考えることの重要性を学んだ

私は川名ゼミで、大学生の親子関係について研究していました。人の心や行動のいろんな側面・要素について、当たり前と思っていたことでも、実はちゃんとした理由があることを知りました。男女の恋愛観の違いとか、おもしろかったですね。自分が興味を持っていた以外のテーマの研究にもふれ、いろんな視点から考えることの重要性を学ぶことができたと思います。現在、大学院で家族関係や親子関係について研究しているので、川名ゼミで学んだことを忘れずに研究に取り組んでいきたいです。

高校時代、親には、受験や進路選択にあたっていろいろと心配されましたが、最終的には、「自分の思うようにやってみればいい」と肯定してくれました。親として思うことはいろいろあったと思いますが、意思を尊重してくれたことに感謝しています。また、やはり高校時代、中国に1週間ほど研修に行く機会がありました。些細(ささい)なことでも文化が違い、言葉が通じないという体験ができたことで、視野が広がりました。それが、人の心理や行動をさまざまな角度から考えることにもつながっていると思います。今、高校生の皆さんも、機会があれば海外に出てみるのもいいかもしれません。

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