立正大学 心理学部 対人・社会心理学科 (1) 恋愛、友情、家族、化粧、ファッション……身近なテーマに潜む心理と行動の関係を探る[大学研究室訪問]

日本が転換期を迎えた今、大学もまた大きく変わりつつあります。そんな時代に、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。答えを求めて、さまざまな大学の研究室を訪問します。今回は、恋愛やコミュニケーションなど、日常生活に密着した「対人・社会心理学」を研究している、立正大学の川名好裕教授の研究室です。



■調査アンケートなどをもとに、人間の心理の傾向や法則を見つけ出す

恋愛、浮気、嫉妬、別れ、ストレス、友情、家族、化粧、ファッション、広告と消費者行動、孤独感とペット……。これらはみな、私の研究室の過去の学生たちの卒論研究のテーマです。皆さんにとっても興味深い、身近なテーマが並んでいるでしょう? このように、人々が社会で暮らす中でどのような心理を抱き、どのような行動をとるかを明らかにするのが、私の専門の対人・社会心理学です。

心理学とは人の心のはたらきを研究する学問ですが、研究する対象や手法はさまざまです。たとえば臨床心理学は、精神疾患や引きこもりなど、心の病気にかかった人を対象に、一人ひとりに話を聞いて、治療の方法を考え、実際に治していく学問です。これに対して、対人・社会心理学は、一般には単に社会心理学と呼ばれ、健康な一般の人たちを対象に、一人ひとりに話を聞くのではなく、たくさんの人を対象にした調査アンケートなどを通じて、社会に生きる人間の心理の傾向や法則を見つけ出します。



■血液型性格診断は、どうして人々の心をとらえる?

では、私の研究室の具体的な研究内容を紹介しましょう。まずは血液型性格診断です。A型はきちょうめん、B型は自己中心的、O型は社交的、AB型は天才型といった診断には、どのくらい信ぴょう性があり、なぜ多くの人が興味をもつのでしょうか? 私たちの研究室では、それを調べるため、数百人を対象にしたアンケートを実施しました。性格に関するさまざまな項目を用意して、当てはまるかを聞き、最後に血液型を聞いたのです。

その結果、まず、血液型性格診断自体の信ぴょう性は薄いことが明らかになりました。血液型性格診断にあてはまらない自己中心的なA型も、きちょうめんなB型も少なくなかったのです。ところが、回答結果を詳細に分析し、回答者の性格タイプ別分類を試みたところ、血液型とは関係なく、きちょうめん、自己中心的、社交的、天才型という、血液型性格診断に類似した4タイプに分かれたのです。ただし、各タイプは、それぞれの血液型には当てはまりません。そこから、4つのタイプをイメージして対人関係に臨むことが対人コミュニケーションに役立ち、だからこそ、たとえ実際の血液型に当てはまらなくとも、血液型性格診断が人々の心をとらえるのだろうと考えられます。



■1円硬貨の直径は、何センチだと思いますか?

あなたは、1円硬貨の直径は何センチだと思いますか? 5円、10円、50円、100円、500円のそれぞれについて、思い浮かんだ大きさをメモしてから、実際の大きさと比べてみてください。いかがでしたか? あなたが思った大きさとどのように違いましたか? 私たちはこうした実験を何百人も対象として行い、その結果を分析しました。すると、硬貨の価値が大きいほど、大きさを大きく見積もる傾向があることがわかりました。つまり、1円硬貨は実際より小さく、500円硬貨は実際より大きいと思っている人が多いのです。

さらに結果を詳細に分析すると、年齢によってもこの傾向に違いが見られることがわかりました。実際の大きさよりも大きく思うか小さく思うかの境界線が、成人の場合は100円硬貨あたりなのに対して、小学生の場合は10円硬貨あたりまで下がっているのです。これは、同じ10円硬貨でも、小学生のほうが価値が大きいと感じていることが関係していると考えられます。このように、身近な疑問を実際に調査することで、思いもしなかった人間の心理や行動の理由を明らかにできるのです。

 例として「女性から見た男性の魅力」とはどのようなものか、心理調査のグラフで見てみましょう。


女性から見た男性の魅力

美的魅力:外見、ルックスの美しさやかっこよさなどの外見的魅力
健康的魅力:若くて健康であることを示す外見的魅力
対人的魅力:明るさや人情味など、対人関係で望まれる内面的魅力
社会的魅力:真面目さや有能性の魅力など、社会に貢献する内面的魅力

川名先生の研究テーマの一つである「魅力」に関する心理の調査結果グラフ。女性は男性のどこに魅力を感じるのかを、友達、恋愛相手、性的交渉相手、結婚相手それぞれの場合について回答してもらったところ、女性は男性に対して、恋愛相手と結婚相手とでは違った魅力を求めていることがわかった。このように、アンケートを行い、結果を分析することで、心理の傾向や法則を見つけ出すことができる。



学生に聞きました!

夏野 優美さん(2010年入学、埼玉県出身)

母と訪れたオープンキャンパスで、心理学の魅力を知った

心理学部を志したきっかけは、高校生の時にオープンキャンパスに訪れたことです。それまで心理学に特に興味はなかったのですが、具体的にどんなことを学ぶのかを知り、おもしろそうだと思いました。母も一緒にオープンキャンパスを訪れ、一緒に体験をし、同じようにおもしろさを感じていたので、賛成してくれました。

心理学部の中でも川名先生のゼミに入ろうと思ったのは、1年生の時に先生の講義を受けたからです。電車の中で席を空けて座るのはなぜか? とか、何となく感じてはいるけれど見過ごしていたことについて、きちんと調べて理由を明らかにしていくのがおもしろいと思いました。最近では、たとえば電車の中でも、他の人の行動を見て、「どうしてかな?」と考えるなど、見慣れたことが違って見えてくるようになりましたね。

加藤 舞さん(2010年入学、東京都出身)

高校までの受験勉強より、大学の勉強のほうがずっと楽しい!

恋愛心理について興味があったので、このゼミに入りました。特におもしろいと感じたのは、男女の感じる魅力の違いですね。女性は、恋愛の対象としては外見を重視するけれど、結婚の対象としては金銭面を重視し、男性は、恋愛の対象としても結婚の対象としても外見を重視するとか、よく言われていることでもデータになってはっきりと現れると、説得力があると思いました。

3年生の今は、毎回、過去のいろいろな研究テーマについて学んでいるのですが、恋愛に限らず身近なテーマばかりだから、「それ、知ってる!」と思ったり、「そういうことなんだ!」と感心したり、興味を持って入っていけるんですよ。高校までの受験勉強よりも、今のほうがずっと勉強が楽しいです。


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