私立と公立、どう違う?(学校の特徴、学費)[中学受験]

私立と公立の中高一貫校の違いを考えたとき、まず頭に浮かぶのは、保護者が志望校選定で最も重視する「教育の中身」だ。

私立校の「教育の中身」を挙げると、教育方針としては、特に進学校では、コース制・先取り教育などの、難関大学受験に対応できるような豊富なノウハウがある。
また、校風としては、生徒の面倒見の良さを前面に打ち出した私立が多く、公立との差別化を図っている。女子校や共学校では、校内の施設・行事・制服などで私立ならではの華やかさを特徴としている学校も多く、バラエティに富んでいる。

公立中高一貫校は、中高一貫校としての歴史は浅いが、高倍率の適性検査を乗り越えて入学した生徒の集団である。設立趣旨としては、最初のころは「ゆとり教育」を目指していたが、次第に私立校並みの受験教育を行う「目的外使用」が公然化し、現在では、大学合格実績にも力点を置き始めている。大学合格実績でも、昨年の東京都立白鴎高校が東大合格者を5名出したことで、受験指導の質の高さが話題となった。
校風は、学校にもよるが面倒見というよりは自主性重視で、私立のような華やかさはない。新しい学習指導要領は、子どもたちが社会で活躍できるように「生きる力」を育み、学力や人間性とともに思考力・判断力・表現力などの能力の育成を重視している。公立中高一貫校では、中学校入試の時点から「生きる力」を重視して、入試にも組み込んでいる特徴がある。

都立の中高一貫校では、2010(平成22)年4月から都立高等学校及び中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料については原則不徴収となり、ますます学費においては公立中高一貫校が魅力的となった。<表>を見ると、公立/私立の学習費総額と学校教育費の私立/公立倍率は、それぞれ中学校で2.8倍と7.5倍、高等学校では2.3倍と2.9倍になっており、学費では公立校がどれだけ魅力的であるかがわかる。公立の授業料・入学料が無料となっていることが大きな差となっているが、それだけではなく、それ以外の費用も公立校のほうが安い。

授業料・入学料以外の費用でも私立のほうが公立よりも高いが、私立校が何にお金をかけているかが問題だ。これは、私立校内でも言えることで、同じ私立校でも学費の高い学校の保護者は、お金をかけることが、我が子の教育にとって重要なことであれば、学費が高いことも納得できるという話をよく耳にする。同様のことが、公立校と私立校にも言えるだろう。もし私立校の学費が高いことは納得しがたくても、我が子を成長させるための教育にかかる費用ならば、喜んで払うのが親心だ。もしも、公立校は学費が安いだけで私立が行うハイレベルな教育を行っていなければ、安いことだけで保護者は納得できないだろう。公立校で行われていないことも私立では行っていることも多い。私立ならではの華やかさは公立校にはないだろう。私立と公立の中高一貫校は、教育の中身と学費で大きな違いがある。




【学習費総額・学校教育費・授業料の支出平均額】


単位:千円 

区 分 中学校 高等学校(全日制)
公立 私立 公立 私立
(1)学習費総額 460 1,279 393 923
(2)学校教育費 132 990 238 685
(3)授業料 0 418 0 225

出典:文部科学省「平成22年度子どもの学習費調査」(2012<平成24>年2月10日公表)

※「支出平均額」とは、各経費の支出の平均額である。
(1)学習費総額:学校教育費、学校給食費、学校外活動費を含む
(2)学校教育費:授業料、入学金、学用品費、通学関係費などを含む
(3)授業料:2010(平成22)年4月から都立高等学校および中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料は、原則不徴収


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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